「Oracle Open World San Francisco 2012」レポート
Salesforceけん制も?Oracle CloudがSaaS拡充・IaaS参入へ
2012年10月09日 06時00分更新
9月30日から10月4日(米国時間)、米カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニ・コンベンションセンターで「Oracle Open World San Francisco 2012」が開催された。
全世界144カ国から約5万人が事前登録し100万人がオンラインで視聴したほか、フォーチュン500社のすべての企業が参加した。また期間中には、2523のセッションに3570人のスピーカーが登場し、展示会場には458社が出展するなど、同イベントとしては過去最大の規模となった。
会期中に発表された製品リリースは約30本に達し、例年通り、数多くの新製品やサービスなどが公開された。
会期初日には、米オラクルのラリー・エリソンCEOが基調講演に登場。2013年に出荷予定の「Oracle DATABASE 12c」や、「Oracle Cloud」におけるサービス内容の強化など、注目される製品およびサービスを発表してみせた。
基調講演では、全世界1万社、2500万人以上のユーザーが利用しているOracle Cloudは、「Social」、「Mobile」、「Complete」の3つをキーワードに新たなサービスが発表。エリソンCEOは、「Oracle Cloudは、ExaDataおよびExalogicに基づく共通のインフラストラクチャーサービスの上に、プラットフォームサービス、アプリケーションサービス、そしてソーシャルサービスを提供する」と、これまでのSaaS、PaaSに加え、新たにIaaSの領域にまでサービスの範囲を拡張したことを強調した。
IaaSに関しては、具体的なサービス内容、料金、提供時期は明らかにされなかったが、PaaSではDatabase ServiceやJava Service、Developer Serviceをはじめとする数々のサービスメニューを用意すると発表。幅広いプログラム言語の活用や、Oracle Enterprise Managerによる管理環境の提供といったメリットを示した。
またSaaSに関しては、「オラクルのSaaSで提供されるアプリケーションの数は、ほかのベンダーよりもはるかに多く、それらをスイート製品として提供できる。また、このサービスの根底にあるのは、Oracle DATABASEやJava、Fusion Middlewareのほか、ExadataやExalogic、Exalyticsによって構成されたインフラ。信頼性が高く、長い経験があり、高性能な環境が構築されている」(エリソンCEO)などと語り、「SaaSを利用する場合には、どんなインフラが活用されているかを知ることが重要である」などとした。
同じ会場でイベントを行なったSalesforceへのけん制も
2週間前には、同じ場所で米セールスフォース・ドットコムが、プライベートイベント「Dreamforce 2012」を開催していたが、「セールスフォース・ドットコムがサービスを開始したのは90年代。それに対してオラクルは、最新の技術によるSaaSの新たな選択肢を提供できる」とエリソンCEOは発言。
また、「私は、アプリケーションレイヤーでのマルチテナンシーを批判してきた。セキュリティやクエリ、レポーティングで問題が発生するからだ。セールスフォース・ドットコムやネットスイートは、データベースやミドルウェアを自分達で持たないため、すべての問題解決をアプリケーションレイヤーで行なう必要がある。それに対して、オラクルはインフラストラクチャーレイヤーで問題を解決できる」などと、他社を牽制した。
エリソンCEOがこう語る背景には、新発表されたOracle DATABASE 12cの存在がある。
4年ぶりのメジャーバージョンアップとなるOracle DATABASE 12cについて同氏は、「クラウド時代に向けたマルチテナント型のデータベースであり、コンテナデータベースという概念を提案している。コンテナが個別に、Pluggable Databaseを収納し、1つのデータベースを複数のユーザーが活用できるようになる」と説明。「セキュアなマルチテナント型のデータベースを提供することになる」のだという。
もっとも、セースルフォース・ドットコムは、グローバルの大手企業の活用事例を相次いで発表していた。だが、オラクルではあまり大手企業の活用事例が紹介されていなかった点は対照的だった。オラクルはクラウド戦略を打ち出しているが、大手企業においては、Exadataをはじめとするオンプレミスでの導入が促進されており、SaaSへの移行が進みにくいという背景もありそうだ。
また、今回は新たに「Oracle Private Cloud」も発表された。FUSION Applicationだけでなく、E-Business SuiteやSIEBEL、さらには、ユーザー個別のカスタムアプリケーションも動作させることができることを訴え、「業界標準の技術で構成されているサービス」と、その特徴を示した。
これも大手企業などを対象にしたクラウド戦略の1つといえ、今後は、Oracle Database 12cや、Exadata X3といった新たな製品群と、SaaSサービスのメニューの拡充の組み合わせによって、大手企業の事例をどれだけ拡大できるかが鍵になりそうだ。
さらに、同社ではソーシャルへの取り組みとして、Social Relationship Management Platformを発表。「プラットフォームレイヤから用意し、これまで開発されたすべてのアプリケーションで、ソーシャル技術を取り入れることができる。この点が他社との大きな違いである」などとし、今後、ソーシャルを活用したソリューション提案を加速する姿勢を示した。
そのほか、Oracle Exadata X3 Database in-memory Machineも、今回のイベントでは重要な発表となった。
Exadata X3は、2008年に発表したExadataの第4世代となるもので、10倍の圧縮技術によって220TBのユーザーデータをフラッシュおよびRAMメモリに格納。データスキャンレートは100GB/秒と、大幅な高速化を図ったのが特徴だ。フラッシュメモリを4倍にし、データベース書き込み容量を20倍に拡大。また、ソフトウェアの書き込み容量を10倍に拡大し、消費電力と冷却に要するコストを最大30%削減しながら、価格は従来から据え置いたという。
「もはや速さは、これ以上は必要ないという議論もあるが、この性能がコスト低減などに大きく寄与することになる」と語った。
オラクルも日本にデータセンター構築
また、会期中には日本にデータセンターを開設することも明らかになった。早ければ年内にも設置されることになりそうだ。
これは、会期3日目に行なわれた米オラクルの製品開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのトーマス・クリアン氏の基調講演の中で明らかになったもので、日本オラクルの遠藤隆雄社長は、「日本のお客様から、国内にデータセンターを置いてほしいという強い要望があり、本社側に要請をしていた。日本におけるクラウドビジネスの拡大につなげたい。今回のデータセンターは、パートナー企業との協業によるものだが、将来的には自社の直営によるデータセンターを持ちたい」などとした。
一方、富士通は、初日の基調講演で、同社・豊木則行執行役員常務が、次世代SPARC64プロセッサである「Athena(アテナ)」に言及。展示会場では、プロトタイプを展示し、来場者の関心を集めていた。
富士通では、「2013年の早い時期には市場投入していきたい」としており、米オラクルのエリソンCEOも、「来年秋までには、Oracle DATABASEを走らせることを約束する」とした。