沖縄県尖閣諸島で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突し、日本側が中国漁船の拘置期間延長を決めたことに対し、中国政府は「強烈な対抗措置」として、日中間の閣僚など高官レベルでの交流を停止した。
尖閣諸島について、領土問題ではないことは日本国外務省のページで書いてあるが、この問題について中国メディアと中国サイトの反応はどうだったのか。
人気動画共有サイトの「優酷(YOUKU)」や「土豆(TUDOU)」などはトップページの目立つ場所で掲載。中国で著名なポータルサイト「QQ」「新浪(Sina)」「捜狐(SOHU)」「網易(NetEase)」のニュースページでもトップ記事で掲載した。
ところがネットがすべてこうした論調かというとそうでもなく、国営の新華社による新華網では控えめな場所にトピックが掲載されている。また各都市の新聞もトップでこれを掲載せず、1面ではないページでそこそこのページを割いてこのトピックを紹介している。日本で言えばニュース番組での紹介とワイドショーでの紹介の差(関連記事1)というのだろうか、このトピックに対する力の入れ具合が、ネットユーザー御用達のサイトと、あまり見向きもされないメディアによって違うわけだ。
こうした事象でもっとわかりやすい例では、国営のインターネット放送局「CNTV」(中国網絡電視台)の中国語サイトでは、トップの目立つ場所にこのニュースを配置するが、同局の英語サイトなど外国語サイトではトップニュースとして扱っていない。
つまり多くの中国人のネット利用者が訪れる民間サイトでは、注目が集まりやすくPVが稼ぎやすいトピックなのだろう。ネット利用者を満足させるべくこのニュースを大きく扱っている。しかし、どうも国営サイトや外国向けサイトを見る限り、国内ネット利用者に向けて大きくアピールしたいニュースではないことが見て取れる。
CNNIC(中国インターネット情報センター)が7月に発表した調査結果によれば、今年6月末の時点で4億2000万人のネット利用者がいて、そのうちの8割強が10~30代、別名「90后」(ジョーリンホウ。90年代生)、「80后」(パーリンホウ。80年代生)、「70后」(チーリンホウ。70年代生)である。また7割強が都市部育ちだ。
つまり抗日系記事をトップページにでかでかと載せたのは、都市部在住の若い世代向けの記事であり、若い世代は大変重大な問題と認識することになる。一方でネットをしない40代以上の世代は新聞を読むため、新聞を介してニュースを知った結果、そのニュースはいくつかある記事の中の1つ、という認識となる。
もちろん中国語のブログを「日本製品不買」「抗日」「小日本」などで検索すれば、「背後には米国がいるから武力行使でなく日本製品不買運動だ」「なぜ中国政府は弱腰外交なのだ」といった内容の新鮮なブログ(のコピペブログ)が多数出てくる。こうした中国人の反応を生暖かく見守る人にとっては面白いネタだ(関連記事2)。

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