「電子書籍元年」3度目の正直となるか?
さて、6回にわたって電子書籍を取り上げてきた。
「メディア維新」と銘打った連載なので、あまり長く電子書籍ばかりを取り上げる訳にはいかない。正直に打ち明けると、私自身、はじめは3回程度で次のトピックスに移るつもりでいた。けれども、この分野の抱える課題の大きさと、電子書籍に携わっている方々の創意工夫に強い関心を覚えて、いつの間にか回を重ねてしまっている。
一方で、「電子書籍ブーム」に対して醒めた見方が周囲にあることも承知している。特に、長くこの分野に関わってきた人ほど、現在の一種異様な盛り上がりに対して、距離を置いているようだ。なんと言っても、これは三度目の波なのだ。
第一の波はエキスパンドブックに代表されるCD-ROM書籍群、そして第二の波はリブリエだ。果たして「2度あることは3度ある」のか、それとも「3度目の正直」か?
私は3度目の正直になる――と考えている。
なぜなら、大きく盛り上がることなく消えていったこれまでの電子書籍プラットフォームと、KindleやiPadそして今後登場するAndroid搭載のブックリーダーを核とする今回の展開とでは、決定的な違いと可能性が含まれているからだ。
それが「ソーシャルな読み方(読書体験)」だ。これは連載第一回でも指摘したいわゆる「黒船」に対するカウンターにもなり得る。後に詳しく触れるが、ソーシャルなサービスはグローバル展開を進めるプレイヤー(=いわゆる黒船)には参入しづらい領域だからだ。
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