1月最終週、筆者はサンフランシスコにいた。なにをやっていたかと言えば、「アップルの例のモノ」こと、iPadの発表会見を取材していたのである。「さすがアップル」と言うべきなのか、それとも電子ブック端末への注目が高まっているからなのか、帰国してからは筆者に対し「iPadをどう見るか」という、各マスコミからの問い合わせが急激に増えている。
モバイルの連載をやっているこのコーナーで、iPadに触れないのもやっぱり不自然な話だ。そこで今回は、電子ブックでもアメリカ市場でもなく、「日本のモバイラー」の目から見たiPadの使用感をお伝えしよう。
モバイルには向かない? けど目が離せない
のっけから結論を言うようで恐縮だが、iPadは「デカイからあんなのはいらない」と言ってしまうのは、少々もったいないくらいの可能性を秘めたガジェットだ。
大きいこと、重いことはまったく否定しない。どんな感じか体感してみたい方は、自宅のマガジンラックや書店をのぞいて、「ちょっと薄めの女性向けファッション誌」を手に取ってみてほしい。9.7インチのディスプレーを備え、最軽量の無線LANモデルで約680gというiPadの重さと大きさは、それらの雑誌を手に持つ感覚にそっくりだ(昔からのパソコンマニアならば、薄くなりはじめた頃の月刊アスキーサイズ、といった方がわかりやすいかも知れない)
これを日々電車の中で使ったり、毎日鞄の中に入れて持ち歩くというのは、「薄く小さく軽く」を旨としてきた日本のモバイラーにとっては、明らかに負担だ。
発表会見の後に開かれたハンズオンイベントで、何人かのアメリカ人プレスに「このサイズをどう思う?」と聞いてみた。結果は面白いほど二分されていた。
- 「十分軽いよ。だってAir(MacBook Air)の半分だよ?」
- 「重いよね。だってKindleの倍くらいあるでしょう?」
おわかりのように、ノートパソコン側から評価する人は前者で、電子ブック端末として評価する人は後者、というわけだ。どちらもそれなりに頷ける。筆者は日本人だから、やっぱりiPadはピュアなモバイル機器としては「大きすぎる」と感じる。だが、それも当然の話だろう。やはり米国の彼らと我々とではニーズが大きく異なるのだから。
そもそもアップルも、自ら「我々は世界一のモバイルデバイス・カンパニーである」(スティーブ・ジョブズ氏)と宣言してはいるものの、iPadを「日本人が思うところのモバイルデバイス」、すなわち「屋外に毎日持ち出して使う機器」として設計していないだろう。
iPadのデモは、ほとんどが壇上に用意されたソファーの上で行なわれた。彼らの狙いは、「ソファーの上に転がしておき、リラックスしている時間に使うネット端末」だ。現在でも、ネットブックやモバイルノートでそんな使い方をしている人は少なくないのではないだろうか? だとすれば、100~200g軽いことや小さいことよりも、「画面が見やすい」とか「デザイン的にリビングでも邪魔に感じない」ということの方が重要。そういった点を指して、アップルはiPadを「ネットブックよりもなにかもっといいもの」と言っているのだろう。
別の言い方をすれば、iPadは「リビングPC」なのである。普通の定義とはもちろん異なるが。

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