10月15日、ストレージベンダーのネットアップは「実効性のある、クラウドの姿を探る」をテーマにした「NetApp Cloud Storage Forum」を都内で開催した。ここではストレージを軸にしたクラウド戦略が披露された基調講演と展示会場をレポートしていく。
クラウド事業者のテクノロジーパートナーになる!
基調講演ではネットアップ代表取締役社長のタイ・マッコーニ氏がネットアップのクラウド戦略を説明した。マッコーニ氏は「クラウド=IT as a service」と位置づけ、ストレージもアプリケーションやプラットフォームと同じくサービスとして提供されていくと述べた。そして、クラウドのインフラとなるデータセンターは、今までのようにサーバやストレージ、ネットワークが別々に構築されたシステムではなく、仮想化技術で統合化されていくと語った。
こうした中、ネットアップはクラウド実現のためのテクノロジーパートナーを目指すという。この立ち位置をマッコーニ氏は、米国のゴールドラッシュの時代、あえて金を掘らず、金脈の採掘者にジーンズを提供したリーバイスの創業者リーバイ・ストラウス氏になぞらえた。具体的には今までのようなSIerを経由した企業への間接販売モデルだけではなく、サービスプロバイダやホスティング事業者、SaaSベンダーなどクラウドサービスを提供する事業者への製品供給を積極的に推進していく方向性だ。実際にこのあとには、先頃発表されたIIJのクラウドサービス「IIJ GIO」の担当者の講演もあった。
では、ネットアップのストレージはクラウドの基盤となりうる優位点はあるのか。マッコーニ氏は製品ごとに異なるハードウェア、ソフトウェア、管理手法を用いる他社に対して、ネットアップのFASシリーズは同一の操作性や柔軟性をを持つシングルアーキテクチャの採用を優位点として強調する。そして、こうしたメリットを活かしたクラウド基盤構築の事例として、同氏はドイツテレコム傘下のT-systemsやオーストラリアの通信会社であるテレストラなどの事例を紹介した。「T-systemsはクラウド化により400社以上の会社にアプリケーションを安価に提供できた。また、テレストラはiSCSIで25ペタバイトにおよぶプライベートクラウドを構築し、ストレージも階層化を行なった。このようにクラウドは先の話ではない。成功事例も数多く存在している」(マッコーニ氏)とクラウドが今のソリューションであることを強くアピールした。
Data ONTAPでクラウド基盤を実現すると
そして、基調講演の後半では米ネットアップ クラウドソリューションズ&コアプロダクトソフトウェアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャ ティム・ラッセル氏がクラウド基盤とData ONTAPについて解説した。
Data ONTAPは、汎用のハードウェアを採用するネットアップにとってまさに競争力の源泉となるソフトウェア。年末に登場するData ONTAP8は既存のFASに搭載されていた「Data ONTAP7」と、クラスタ化を前提とする「Data ONTAP GX」という2つのソフトウェアを統合したもので、クラウドに必要な技術要素を完備しているという。具体的には複数のユーザーで共同利用するためのマルチテナント化を実現する「MultiStore」や優先度を付ける「FlexShare」、サービスの自動化と管理を実現する各種APIや「SANscreen」などのツール、ダウンタイムゼロのデータ移行を実現する「NetApp Data Motion」やData ONTAP8のクラスタモード、異なるデータセンター間で共通な方法でリソース指定を可能にする「グローバルネームスペース」などが挙げられる。その他、RAID6やレプリケーションなどのデータ保護技術や、ストレージの利用効率を高めるスナップショット、シンプロビジョニング、仮想クローニング、重複排除など、すでに高い実績を誇る。今後、課題になってくるであろうセキュリティに関しても、ネットアップ、ヴイエムウェア、シスコなどでマルチテナント環境での一貫したセキュリティを保証していくという。
展示会場では、パートナーが製品展示を行っていた。いち早くネットアップがFCoEへの対応を行なったこともあり、シスコやブロケードが10GbpsのFCoE対応製品を展示していたのが注目すべき点だ。とはいえ、サーバ側のFCoE対応はまだまだという状態なので、普及のスピードは未知数といったところだ。
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