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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第91回

楽しい使い方は現在模索中の「セカイカメラ」

2009年10月07日 12時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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今週の1枚

【今週の1枚】。肉眼で見ると何も見えない普通の風景が「セカイカメラ」を通してみると、タグが浮遊している情報空間になる。六本木や秋葉原、渋谷などはすでにたくさんのタグが浮かんでいるので、アプリをダウンロードしたら起動してiPhoneをかざしてみよう

 前回の海外旅行でぜひとも使いたかったが、リリースが間に合わなかったiPhone用アプリが「セカイカメラ」である。登場して4日間で10万本を超えるダウンロード数を記録するなど、未来感あふれるアプリとして注目を集めている。

 僕も1週間このセカイカメラを使いながら生活をしてみた。

画期的なソフトであることはともかく
何に使えばいいかわからない?

 セカイカメラをダウンロードした人の感想は案外渋いものが多い。おもしろさがわからないという意見は少ない一方で、情報手段としてどう使おうか悩む人が多いのは事実だ。

 渋谷、六本木、秋葉原などの街でセカイカメラを起動してみると、非常にたくさんのタグに出会う。しかしこれらの情報を、何か有益に生かす手段を見つけ出せた人が少ないのだろう。僕自身、どのようにセカイカメラと対峙すればいいのか、まだ悩んでいるところがある。

 すでに駅名や建物の情報など、地図的な情報はプリセットされている。さらに駅舎内で起動すれば、何という駅のどちら方面のホームなのかまでわかる。一方ユーザーによって投稿されたタグは「テスト」という投稿や、あまり意味がない風景の写真などが目立っていて、有益な情報が見つかるという状況にはいたっていないのだ。

起動画面

セカイカメラの起動画面。「Tagging in the World」というサブタイトルはアプリで何をするかを表現しきっている感覚がある。

起動画面

タグが浮遊しているのが見える。iPhone 3GSのようにデジタルコンパスが内蔵されている端末なら、カメラを構えてその場で回れば、別の方角に浮かんでいるタグを見ることが出来る。画面上部は方角とタグを表す点が打たれている

タグをタッチ

タグをタッチすると、たぐり寄せたように画面に大きく表示され、中身を読み込み始める

 自分の情報をその場所に捨ててくる感覚もまだ慣れないものだ。セカイカメラのフィルターには自分が投稿したタグだけを表示するモードがあるが、そのフィルターを適用しても実際に以前タグを投稿した場所でなければ再度表示されない。ポストした瞬間に自分のモノではなく、その場所のモノになってしまうということなのだろう。自分の情報を手放すという行為は、どことなくそわそわしてしまう。

 自分がタグとして打ち込んだ情報を残したい、と言う人はTwitterとの連携の道がある。セカイカメラはアプリ内でTwitter連携を設定すると、自分が投稿したエアタグのテキストや写真をTwitterアカウントにも投稿してくれる。ただ現時点では場所の情報は入らない。そもそもセカイカメラから投稿したかどうかがわからないのが残念なところだ。

 一方、同じくTwitterと連携できるBrightKiteは地図とコメントや写真を表示するウェブページへのリンクが付いてくるほか、RSSやGoogle Earthで利用できる位置情報のファイルが用意されるなど、後から活用する手段が用意されている。セカイカメラでも同じようなことができるようになるとうれしい。

 また、ひととおり使ってみて、「プロのタグ」というものの存在を求めてしまうのは僕だけだろうか。

 たとえば「エアタグ作成のプロ」「エアタグ作家」みたいな人たちが活動して、セカイカメラのおすすめの使い方を示してくれる。そうすれば、セカイカメラをダウンロードしたばかりの人も世界観を簡単に楽しんだり、楽しみ方の一端をつかむ助けになるのではないだろうか。

 さらに都市の写真家がタグを作ればどうなるだろうか。「Tokyo Nobody」という写真集では、人が一切写り込んでいない東京の風景の写真が集められている。現在いる場所で、目の前の雑踏がまったく無くなったらどんな景色が見えるのか、そういう機能があると拡張現実の感覚もわかりやすいし、気軽にセカイカメラを起動する動機付けにもなる。

 セカイカメラを作った「頓智・」(頓智ドット)では、セカイカメラをゲームプラットホームにしたり、アプリ内でタグを販売するなど、ビジネス面での活用も想定しているそうだ。まだまだ始まったばかりのセカイカメラ。おもしろい使い方やタグの作り方をユーザー間で考えるフェイズにあるという言い方もできるだろう。

テキストや画像のタグには、投稿した人とその時刻が表示される。朝の六本木にいながら夜のその場の風景が見られる感覚は、なかなか楽しい

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