トヨタ自動車は6日の中間決算発表で、9年ぶりの減収減益を発表するとともに、2009年3月期連結決算の営業利益予想を6000億円に下方修正した。
これは2008年3月期の実績から73.6%という大幅減で、1兆6000億円以上が吹っ飛ぶことになる。この金額は東証1部上場企業の利益総額(2008年3月期決算)の約5%に相当する。日本の製造業が業績不振に苦しむ中で高い成長を続けたトップランナーが、なぜ挫折したのだろうか。
米国の過剰消費がトヨタの好業績を支えた
業績不振の最大の原因は急速に進んだ円高(ドル・ユーロ安)だが、為替差損6900億円は一時的な損失だ。それより深刻なのは、販売減が6100億円に上ると予想されることだ。特に北米市場では、10月の新車販売台数が前年比23%も減り、中間決算では初めての営業赤字となった。
この大きな原因は、自動車ローンの信用収縮である。10月の米国の非優良債務者向け自動車ローンの成約率は、昨年同月の67%から23%に急低下した。低所得者に住宅を担保として融資するサブプライムローンと同様、債務者の所得を無視して自動車を担保に貸す自動車ローンが、米国の過剰消費を生み出した。その市場が崩壊した影響は、円高よりはるかに深刻だ。
円安バブルをもたらした「輸出補助金」
もちろんトヨタは今でも優良企業だが、その突出した好業績の一つの原因が、ここ数年続いた円安による北米市場の好調さだった。図でもわかるように、円の対外的な競争力を示す実質実効為替レートは、2007年には1985年のプラザ合意の前とほとんど同じ水準に低下した。今年の後半、急に円高になったが、これでも1985年の水準の1.1倍でしかない。
円安の最大の原因は、2000年代初頭から続けられた日本銀行のゼロ金利・量的緩和と、財務省のドル買い(円売り)介入だ。低金利の円で借りた金を高金利のドルに投資する「円キャリー取引」によって、1兆ドル以上ともいわれる資金が流出した。2000年代初頭には日本経済は金融危機で崩壊の淵にあり、当時としてはこういう異常な金融政策をとったことはやむをえなかったかもしれない。しかし経済が回復してからも金融緩和を続けたため、日本から米国に流入した資金が米国のバブルの一因となった。
結果的にはこの金融緩和は、預金者からトヨタなどの輸出産業に所得を移転し、彼らが稼いでくる外貨によって日本経済を支える輸出補助金だった。これに助けられて他の産業は国内に閉じこもり、非効率的な企業が生き延びてきた。おかげで日本のエンゲル係数は22.9%と、OECD諸国で最高水準だ。農林水産物を始めとする食費が高いからである。
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