本連載の目的は、インターネットの一部で起きつつある小さなトレンドを見つけることだ。1つ1つの小さなトレンドは“さざ波”のような些細な存在でも、何度も形を変えながら押し寄せることで、砂浜の形を変えてしまう可能性を秘めている。
実は今、この連載で過去2度取り上げた“さざ波”が形を変えて、3度目の波としてSNS業界に押し寄せてきている。
“ソーシャルグラフ”という3度目の波
1度目の波は今年の3月、“米国で盛り上がるOpenID”という記事で紹介した“OpenID”だ。ひとつのIDを取得しておくだけで、複数のウェブサービスに参加できるという技術で、SNSのオープンプラットフォーム化に大きく貢献している。
その後、日本でもライブドアを筆頭にOpenIDを採用する企業がいくつか現われた。最近では3日に、ビート・コミュニケーションが提供するオープン型SNSパッケージ“Beat Media”が“OpenID”対応を発表している。
2度目の波は5月に書いた、“SNS化するブログ”という記事。こちらは先の記事とは逆に、クローズドプラットフォーム化など、SNS的な特徴がブログに備わりつつあるという内容だ。両者は一見、正反対の内容にも感じられるが、その根底では1つの大きな流れに乗っている。
そして、3度目の波となるのが、最近、米国のIT業界で急速に注目を集めているキーワード“ソーシャルグラフ”だ。
人と人との関係を表わすのがソーシャルグラフ
“グラフ”と聞いて棒グラフや円グラフを想像してしまう人は、これが何の話なのかなかなか分かりづらいかもしれない。ここでいうソーシャルグラフとは人と人との相関図、関係図を指す。
今日のネットサービスでは、ソーシャルグラフを屋台骨として成り立っているものが少なくない。その代表格といえば、日本で最もユーザーを獲得している“mixi”、米国で急速に勢いを伸ばしている学生向けの“Facebook”、世界最大の“MySpace”といった、ソーシャルネットワークサービス(SNS)だろう。
SNSに限らず、写真共有サービスの“Flickr”、以前に紹介した人検索サービス、さらには“Where 2.0”の流れで注目されている“Dopplr”(自分の友達の出張予定、旅行予定の確認に特化したサービス)なども、それぞれソーシャルグラフを形成している。
このように説明すると、ソーシャルグラフという言葉によって、mixiの“マイミク”(友人)など、既存サービスの一機能が再定義されただけに感じられるかもしれないが、肝心なのはそこではない。
“3度目の波”で大切なのは、各サービスに散らばった断片的なソーシャルグラフをサービスから独立させ、OpenIDという1つのIDで(あるいは“FOAF”というXMLデータで)組み合わせることで、より大きなソーシャルグラフを構築しようと試みているところにある。
(次ページに続く)
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