第25回 1万キロ現地調査(東京・印刷関係)
1 全般
平成27年1月29日(木)、当会は東京において第25回1万キロ現地調査を実施、都内で1960年代に失踪された印刷関係者、中塚節子さん、小林榮さん、日高信夫さん、早坂勝男さん及び非公開男性、合計5名の方々について調査を行った。
事前調査も踏まえ、今回の調査で判明した事項については後述するが、失踪の時期だけでなく地域や年令等についても類似点が見られ、更に広範な調査が必要とされる失踪案件であることが改めて認識された。
以下、調査と結果概要について述べる。
2 現地調査の概要
(1) 目的
ア 現地調査により個々の事件及び北朝鮮による拉致・工作活動への認識を深める。
イ 広報啓発活動を通し今後の工作活動を抑止する。
ウ 現地で特定失踪者家族・政府認定者家族他関係者から北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」のメッセージを収録する。
(2) 参加者
ア 調査会 : 代表荒木・副代表岡田・専務理事村尾・常務理事三宅(前日の理事会で常務理事に復帰)・同杉野・同武藤・同曽田・計 6名
イ 特定失踪者家族等 : 早坂勝男さん兄・早坂勇治さん、同弟・早坂胞吉さん
ウ その他 : 増元照明 前家族会事務局長 、予備役ブルーリボンの会有志
(3) 日程
○ 09:15 調査会事務所(文京区後楽)前出発
○ 09:40 小林榮さんが勤務していたとされる印刷会社跡地(千代田区猿楽町)にて新たに判明した事項について確認。後述矛盾点について議論(写真)。
〇 11:00 早坂勝男さん最終勤務先印刷会社跡地(墨田区立花)周辺の調査と兄・早坂勇治さん、弟・胞吉さんからの当時の状況等に関する聴取。お二人からの「しおかぜメッセージ」収録。
〇 11:45 早坂さん居住地跡地(墨田区本所)に移動して勤務先との位置関係を確認、当時の状況について勇次さんから聴取。
〇 14:30 日高信夫さん退社前の印刷会社周辺と中塚節子さん勤務の印刷会社跡地周辺調査(新宿区水道町・西五軒町)
○15:20 調査終了。
3 調査対象者及び調査結果(失踪年次順)
(1) 中塚 節子さん
ア 氏名 : 中塚 節子(なかつか せつこ)
イ 生年月日 : 1945(昭和20)年 6月 5日
ウ 当時身分 : 印刷会社社員
エ 当時居住 : 新宿区西五軒町
オ 失踪年月日 : 1963(昭和38)年 6月16日
カ 最終失踪関連地点 : 新宿区西五軒町
キ 失踪状況 : 会社側から家族が聞いた話では勤務終了後、「おやつを買いに行って来る」と言って、同僚の男性・Aさんと一緒に寮から出かけたまま行方不明となった。この時の服装は不明だが、「サンダル履きで小銭を持って出掛けた」とのこと。
会社側は色々探し回ったが、結局二人の行方は不明のままとなった。
ク その他 : 中塚さん・Aさんは同郷(長野県)でそれぞれ勤務先印刷会社の2階部分に設けられた寮に住込みで勤務していた。
ケ 調査結果
(ア) 地域
中塚さんが失踪した1963(昭和38)年当時、印刷会社の周辺は一般住宅と共に印刷工場と出版関係の会社が混在する地域で、喫茶店や食堂、ストアーなども点在していたが、失踪から既に50年を経過した現在では当時の店舗があった位置はビル等に建て変り、当時立寄ったと思われる店舗を特定するのは困難である。
(イ) 他の失踪者との関連性
中塚さん、Aさん失踪の3年後となる1966(昭和41)年9月に失踪した日高信夫さんが勤務していた印刷会社は中塚さん、Aさんが勤務していた印刷会社とは町名こそ違うものの7〜80mの距離しか離れておらず、ほぼ同地区に勤務先と居住していた社員寮があった。また日高さんが印刷会社に就職した昭和38年春には既に中塚さん、Aさんは同地区におり、同年6月中旬に二人が失踪するまでの約2ヶ月間は同地区に生活していたことが確認された。
(ウ) その他
今回、事前調査の課程で、中塚さん、Aさん、日高さんの印刷会社(寮)周辺地域の特性について調査を継続し、失踪との関連性を追及する。
(2) 非公開Aさん(男性)
ア 氏名 : 非公開
イ 生年 : 1940(昭和15)年
ウ 当時身分 : 印刷会社社員
エ 当時居住 : 新宿区西五軒町
オ 失踪年月日 : 1963(昭和38)年 6月16日
カ 最終失踪関連地点 : 新宿区西五軒町
キ 失踪状況 : 前述中塚節子さんと共に寮から出かけたまま失踪。
ク 調査結果:(1)中塚節子さんと同じ
(3) 小林 榮さん
ア 氏名 : 小林 榮 (こばやし さかえ)
イ 生年月日 : 1943(昭和18)年4月29日
ウ 当時身分 : 印刷会社社員
エ 当時居住 : 千代田区神田猿楽町(現:千代田区猿楽町)
オ 失踪年月日 : 1966(昭和41)年8月21日
カ 最終失踪関連地点 : 千代田区神田猿楽町)現:千代田区猿楽町)
キ 失踪状況 : 失踪の数日前から体調を崩して仕事を休み、会社寮から「医者に行く」と同僚に言い残し、外出したまま帰宅せず、行方不明となった。
ク 調査結果
(ア) 勤務期間の矛盾
事前調査の課程で、2012年頃、警視庁が小林榮さんの厚生年金記録を調べた結果、就業先と就業期間に不可解な点が浮上していたことが判明した。
警視庁によれば、小林さんの年金記録は失踪の1年前・1965(昭和40)年8月には猿楽町の印刷会社を退職し、失踪年の1966(昭和41)年8月は、婦人服製作の会社に勤務していたことになっているというものである。
しかし、実際には失踪年・1966(昭和41)年8月下旬に印刷会社側から「8月21日に社内で姿を見たのを最後に所在不明なっている」旨の手紙が届き、その後兄弟2名が印刷会社に榮さんの荷物を引き取りに行った事実もあり、不可解な状況となっている。
過去、年金記録の記録ミスなどが社会問題となった経緯があるが、別の勤務先までも間違って記載されるとは考えにくく、矛盾の意味するものが何なのか、更なる調査が求められる結果となっている。
(イ) 在日関係者との接点
小林さんにも在日関係者との接点がこれまで判明していた事項の他にあることが確認されたため、当時の関係者について更に調査を継続してゆくこととなった。
(ウ) その他判明事項
事前調査の課程で、当時小林さんが所有していたと思われる物品の所在が判明していないことが新たに判り、再度、小林さんの当時の所有物等について確認作業を行うこととなった。
(4) 日高信夫さん
ア 氏名 : 日高 信夫 (ひだか のぶお)
イ 生年月日 : 1944(昭和19)年11月27日
ウ 当時身分 : 無職(印刷会社退職直後)
エ 当時居住 : 東京都新宿区水道町(失踪当日まで印刷会社寮に住む)
オ 失踪年月日 : 1966(昭和41)年9月29日
カ 最終失踪関連地点 : 東京駅
キ 失踪状況 : 1966(昭和41)年秋、勤務していた東京都新宿区の印刷会社を9月25日退職し、同月29日に大阪に向かったまま失踪、行方不明となったもので、実家には『大阪で新しい職場が決まった』と手紙を出しているが、大阪で就職したことは現時点で確認されていない。2006(平成18)年に脱北者H氏が日高さんに似た男性と平壌の病院で一緒にいたとの証言をしており、その証言が正確なため、拉致の可能性は高いものと思われる。
ク 調査結果
(ア) 当時の居住先
今回、現地で印刷会社の関係者に確認した結果、日高さんが退職時まで勤務していた印刷会社の寮は、同社の「建物上階部分にあった」ということが確認され、位置的には1963(昭和38)年6月に失踪した中塚節子さん、Aさんが住み込みで勤務していた印刷会社とは直近の位置にあったことが改めて認識された。
(イ) 印刷会社退職後の動向
日高さんは失踪直前に実家に「印刷会社を退職し、大阪で働く会社が決まった」旨の手紙を送付していたが、同僚には「大阪で仕事を探す」と伝えており、不可解な言動であった。いずれの内容も「大阪」を指し示していることから何らかの理由で大阪に向かうように仕向けられた可能性もある。手紙の内容の分析及び当時の状況について調査継続の必要があるとの結論に至った。
(ウ) 地域
北朝鮮でH氏に目撃された人物が日高さんと同一人物なら、どの時点で日高さんが「拉致の対象」となったのかが問題になる。これについて地域に関連性があるのか別の理由かという点で役員間で意見交換を行い中塚さん、Aさん同様、当時の勤務(居住)先であった地域についても再度調査を継続してゆくこととなった。
(エ) 最終失踪関連地点
今回の現地調査に関連して再度確認作業を行った結果、日高さんの最終失踪関連地点となっていた「上野駅」は実際には「東京駅」であったことが確認された。
(4) 早坂勝男さん
ア 氏名 : 早坂勝男 (はやさか かつお)
イ 生年月日 : 1944(昭和19)年1月22日
ウ 当時身分 : 印刷会社社員
エ 当時居住 : 墨田区本所
オ 失踪年月日 : 1968(昭和43)年4月
カ 最終失踪関連地点 : 墨田区本所
キ 失踪状況 : 1968(昭和43)年秋頃、同居していた友人から家族の元に「ここ数ヶ月間、返ってきていない」旨の連絡があり、4月から行方不明となっていることが判明した。
同(昭和43)年の元日、当時千葉県松戸市に居住していた兄勇次さん宅を訪れた際、同じく兄宅を訪れていた次兄に「自分は尾行されている」と話していた。
また、以前に「大阪に行って印刷の勉強をしたい」旨の発言をしていたが、失踪後、大阪で就職した形跡は無かった。
ク 調査結果
(ア) 勤務先
事前調査の課程で、これまで最終勤務先と思われていた台東区の印刷会社は、失踪の前年に既に退職し、失踪当時は墨田区内の印刷会社に再就職していたことが判明した。
調査当日、墨田区内の現地を御家族と共に訪れたが現在は民家となっていた。この印刷会社は墨田区内から江戸川区内に移転したものの最終的には倒産し、関係者の所在も現在では不明となっていた。また、退職した台東区の印刷会社は小林榮さん・日高さんの居住地とも近いことが確認された。
(イ) 居住先
当時、居住していたとされる墨田区本所の居住先は、現在ではマンションに建て変り、当時の関係者の所在も確認されなかった。また、勤務先と居住先が役4キロ離れており、なぜ離れた距離のところに居住したのか疑問が残る。
(ウ) 靴
早坂さんの失踪当時、居住先まで荷物を引取りに来られた御家族に現地で当時の状況について再確認した結果、残された衣類(スーツ、ワイシャツ、ネクタイ)に関連して当時部屋に残されていた靴は「登山靴」のみで、通勤・外出用の靴(革靴または運動靴)が見当たらなかったことが再確認され、外出または通勤中に失踪したものと考えられる結論に至った。
(エ) カメラと三脚
今回、御家族が現地で思い出された事項の中に、当時早坂さんはカメラと三脚を所有しており、残されたアルバムには各地で撮影された写真が多数残されていたことが判明し、再度分析することとなった。
しかし、御家族が引き取った荷物の中にはカメラや三脚が見当たらなかったということで、今後失踪状況を確認する上で重要な情報となった。
(オ) 失踪前の言動
「尾行されている」旨の話について、調査に同行された御家族に確認を行ったが、それ以上の内容は誰も聞いていないとのことだった。また、尾行されているという時期については言葉通りに受ければ、失踪前(昭和42)年であるが、台東区の印刷会社時代か、墨田区の印刷会社に勤務し始めてからのことなのか、断定できるものはなかった。
この「尾行されている」という言動が仕事(印刷)に関連してのことなのか、別の理由によるものなのか、今回の調査では明らかにならなかった。
また、早坂さんはお兄さんに「大阪に行って印刷の勉強をしてみたい」とも話していたことがあるとのことであったが、調査に同行された御家族からは新たな情報は得られなかった。
(カ) 所属団体
早坂さんは当時集団就職で状況した青年たちの親睦団体に加入していた。今後その方面からの関係者からの情報収集も模索することになった。
4 参考
第24回1万キロ現地調査までの 累計走行距離 = 8,662 km
第25回1万キロ現地調査の走行距離 = 25 km
第25回1万キロ現地調査を終えての累計走行距離= 8,687 km
▲現在「しおかぜ」放送時間と周波数は以下の通りです
夜 22:30〜23:30 5910kHz、5985kHz、6135kHz のいずれか
深夜 1:00〜2:00 5910kHz、5955kHz、6110kHz のいずれか
■調査会役員の参加する講演会(一般公開の拉致問題に関係するイベント)・メディア出演・寄稿・特定失踪者問題に関する報道(突発事案などで、変更される可能性もあります)等
★「正論」2月号
●代表荒木がシンポジウムのパネラーとして「自衛隊特殊部隊の元リーダーが語る拉致の解決策」の中で発言。
★「WiLL」2月号
●代表荒木が「北朝鮮に誠意は通じない」と題して寄稿
★チャンネル桜・防人の道「対北朝鮮ラジオ放送シンポジウム報告・特番「しおかぜコンサート」の意義」
●専務理事村尾が出演
●放送済み。下記のYouTubeでご覧になれます。
http://youtu.be/aylYH105Q2k
★2月1日(日)14:00「拉致問題を考える国民の集いin宮城」(政府拉致問題対策本部・宮城県主催)
●仙台市福祉プラザふれあいホール(仙台市青葉区五橋2-12-2 地下鉄五橋駅前)
●代表荒木が参加
●問合せ:宮城県国際経済・交流課(022-211-2277)
★2月26日(木)14:00「シンポジウム『拉致被害者救出と自衛隊(3)』」(予備役ブルーリボンの会主催)
●衆議院第1議員会館(国会議事堂前駅徒歩3分)
●代表荒木が参加
●問合せ:[email protected](事前申込制)
★3月15日(木)13:00 大澤孝司さんと再会を果たす会総会(同会主催)
●巻公民館(JR越後線巻駅8分 0256-72-3329)
●代表荒木が参加
※特定失踪者に関わる報道は地域限定であってもできるだけ多くの方に知らせたいと思います。報道関係の皆様で特集記事掲載や特集番組放送などについて、可能であればメール(代表荒木アドレス宛)にてお知らせ下さい。
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特定失踪者問題調査会ニュース
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〒112-0004東京都文京区後楽2-3-8第6松屋ビル301
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調査会ホームぺージ:http://www.chosa-kai.jp/
発行責任 者荒木和博(送信を希望されない方、宛先の変更は
[email protected]宛メールをお送り下さい)
●カンパのご協力をよろしくお願いします。
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銀行口座 みずほ銀行 飯田橋支店 普通預金 2520933 名義 特定失踪者問題調査会
(銀行口座をご利用で領収書のご入用な場合はメールないしFAXにてご連絡願います)
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