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2007年11月29日

「総理は特定失踪者家族に会わない」ーー要請書への政府回答

以下は11月28日付[調査会NEWS 579]に掲載した内容です。


 ニュース577号でお知らせした10月31日付要請書への政府回答が本日17:30、河内隆・拉致問題対策本部事務局総合調整室室長より調査会代表荒木に手渡されました。

 要請書と回答の対比は次の通りです。
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(要請文書)
                                                平成19年10月31日
内閣総理大臣・拉致問題対策本部長
            福田康夫殿
                                    特定失踪者問題調査会代表    荒木和博
                                    特定失踪者家族支援委員会委員長 真鍋貞樹

                          特定失踪者問題への対応について
拝啓

 ご就任以来の積極的な拉致問題への取り組みに心より敬意を表します。特に先日は家族会・救う会の皆様との懇談の場を持たれ、解決への決意を表明していただいたこと、大変心強く思っております。

 さて、その総理との面会の場で松本京子さんのお兄さんである松本孟さんが「(昨年に認定される)までは特定失踪者だった。妹の後に特定失踪者が460人いる。『この手で解決』して下さる人の中に、特定失踪者も加えてほしい」と言っておられるように、拉致問題の解決は政府認定の有無に関係なく、拉致被害者全員の救出によってこそ実現することは言うまでもありません。

 しかし、一方で報道によれば総理は去る10月26日に「拉致問題が進展したかどうかの判断基準について『全員だ。こちらが向こうにいると言っている方々が全員帰ってくるということだ』と述べ、政府が認定する拉致被害者全員の帰国が必要との認識を強調した」(共同電)と発言されたと言われています。今、特定失踪者のご家族の中には取り残されていくことへの不安感を持っている方が少なくありません。その懸念を払拭するためにぜひ総理の積極的な対応をお願いし、以下の要請を致す次第です。


1、特定失踪者家族との面会について
 すでに古川了子さんの拉致認定を求める訴訟の折、政府は「認定未認定で差別することはない」と繰り返し言ってきました。しかし、現実には10月26日の面会にも特定失踪者については何の対応もとられていません。このことは極めて残念です。
 私たちは北朝鮮人権週間中の12月16日に東京と大阪で集会を行い、政府への要望書を採択する予定です。総理にはお忙しいところ誠に恐縮ですが、ぜひその要望書を直接受け取っていただきたく、お願い申しあげる次第です。

(政府回答)-----------------------------------------
1について、
 拉致問題対策本部の発足以降、拉致問題に係る外交上の動きについて調査会を通じた情報提供に努めてきているほか、ご家族からの個別の相談等に対しても誠実に応じるなど、出来る限りきめ細かい対応に努力している点について、ご理解をいただきたいと思います。
 なお、古川了子さんの拉致認定を求める訴訟で、内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長兼内閣府拉致被害者等支援担当室長が平成19年4月26日付の表明書で表明した8つの施策については、関係省庁・関係機関が連携してその実施に努めているところです。
 拉致問題に関する政府へのご要望につきましては、基本的には、内閣官房拉致問題対策本部事務局を窓口としてお受け取りすることとしており、今回のご要望につきましても、同様に対応させて頂きます。

(調査会要請文書)-----------------------------------------
2、前述の報道について
 政府が言っている「生存者全員の帰国」というのが認定被害者だけを指すものであれば私たちは到底容認できるものではありません。総理の言葉の真意がどこにあるのか、また、そもそも「生存者全員」というのはどうやって確認するのか。北朝鮮が「死亡」と言ったらそれで納得するということなのか。寺越昭二さん、外雄さんについてはどうするのか、調査会のリストにも、警察が拉致の可能性ありと考えている人のリストにもない拉致被害者についてはどうやって見つけ出すのか、ぜひ明らかにしていただきたく、お願い申しあげます。

(政府回答)-----------------------------------------
2について、
 政府としましては、認定被害者に限らず、現実に拉致されているすべての拉致被害者の安全確保と速やかな帰国を強く求めているところです。
 また、政府としては、認定被害者以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない人が存在しているとの認識の下、関係省庁等が緊密に連携を図りつつ、全力で真相究明に努めているところです。
 ただし、具体的な手段・方法等を明らかにすることは、今後の情報収集活動等を困難にするおそれがあることなどから、お答えを差し控えさせていただきます。

(調査会要請文書)-----------------------------------------
3、北朝鮮における調査について
 北朝鮮側に再調査を求めていても、まともな対応をしないことは明らかです。また、形式だけ再調査をしたということにして、実際は時間を引き延ばされるだけです。私たちは北朝鮮に直接入って関係者の話を聞き、関係した地域の調査を早急に行う必要があると考えます。民間団体の調査活動を認めるよう、北朝鮮当局に強く要求していただくことはできないでしょうか。

(政府回答)-----------------------------------------
3について、
 政府は、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現すべく最大限努力をしています。10月3日の六者会合成果文書においても、日朝双方が精力的な協議を通じて具体的行動を実施していくことが確認されたところであり、政府としては、北朝鮮自身が拉致問題の解決に向けて具体的な行動を取るよう求めていく考えです。
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  以上の内容です。かいつまんで言えば「1」は「要請文書はあくまで事務局が受け取る。総理など政治レベルの人間が受け取るつもりはない」ということ、「2」は総理の発言の真意については回答せず、個々の問題についても一切回答を避けています(ひょっとしたら、明らかにするとちゃんとやっていないことがバレると思ったのか)。「3」は、要は北朝鮮の「誠意」に待つということです。何をか言わんや。

 もともとあまり期待はしていませんでしたが、それにしてもこれほどはっきり言われると何とも開いた口がふさがらないというのが正直なところです。事務局レベルで議論しても仕方ないので適当に切り上げましたが、揚げ足を取るつもりはないものの、河内室長の発言で政府は全力をあげてやっているとの発言、あるいは民間団体の調査団は拉致問題解決に阻害要因になるともとれる内容があったので、私たちには政府が全力をあげているとはとても感じられないこと、この内容では納得できないので、別途の措置を考えること等を伝えておきました。早急に対応を考えたいと思います。

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2007年11月28日

北朝鮮人権週間

以下のファイル(PDF)は11月28日時点での北朝鮮人権週間(12月10日〜16日)の北朝鮮人権問題関連主要NGOの主催集会一覧です。ご参考まで。

「NK07.pdf」をダウンロード

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2007年11月22日

「現代コリア」の終刊

※昨日(11月21日)付調査会NEWS575号に書いたものです。

 「おい、あれ、分かったぞ」

 いまから11年前の平成8(1996)年12月中旬、佐藤勝巳・現代コリア研究所所長の言葉(正確にこうだったかどうかは忘れましたが)からすべては始まりました。まだ家族会も救う会もまったく存在していないとき、というより拉致問題自体が事実上まったく関心を持たれていなかったときのことです。

 この年10月号の「現代コリア」に朝日放送の石高健次さんが寄稿した「私が『金正日の拉致指令』を書いた理由」が掲載され、そこに書かれていた「中学校1年生で日本海側のどこかの県から1970年代後半に拉致された少女」という情報が誰だか分かったのが12月14日、佐藤所長が新潟に講演にいったときのことでした。当時現代コリア研究所の研究部長だった私が「分かったぞ」という言葉を聞いたのはその翌日か翌々日だったと思います。年末には小島晴則さんが横田めぐみさん失踪から1週間後、公開捜査になって初めて報道された昭和52年11月22日の新潟日報を探してコピーをFAXしてくれました。そのころのことは拙著でも書いていますので省略しますが、当時はまさか11年後に自分が今のようなことをやっているとは想像もしていませんでした。

 何しろ相手は北朝鮮で、11年前は今と状況が全く違っていました。新聞もテレビも大部分が「北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国」とフルネームを付けて言っていた時代、拉致は「疑惑」としか言われていませんでした。朝鮮半島研究をしていた人間でも北朝鮮に原則的姿勢を持っていた人はそう多くはなく、しかも、かの独裁政権を相手に拉致被害者の救出運動をやるとなると、言いたいことを言い続け、そのために当然ながら孤立しっぱなしであった現代コリア研究所が当初その中心になったのは当然と言えば当然でしょう。したがって、北朝鮮側に立つ人々からはかなり攻撃をされましたが、私自身運動の当初に現代コリア研究所にいたことは誇りでもあります。

 その後家族会の皆さんや全国の志ある支援者の皆さんのおかげで運動は大きくなり、当然現代コリア研究所の果たす役割は相対的に小さくなりましたが、それでも9.17の頃は大混乱の中で編集業務がほとんどできなくなりました。もともと採算は合わなかったのですが、救出活動をやっていれば営業活動は当然手が着かなくなります。あのときは周囲のご支援によってやっと持ち直したので、その後5年間続いたのは、何より手弁当、自腹で支援してくださった方々の熱意の賜だと思います。

 私は翌平成15年初め、調査会を設立するときに救う会の事務局長を退任し、現代コリア研究所からも離れました。この間色々なことがありましたが、今調査会と救う会全国協議会では、政府との距離感、米国の位置づけなど、多少の意見の違いが出ています。先日の寺越事件に関する西村真悟・拉致議連幹事長の質問主意書に対する答弁書の評価を見てそれを実感した方もおられるでしょう。私たち旧・民社党にいた者は、国会議員と本部の書記局員(事務局)と一般の地方の党員が同じ仲間という立場で、ときに怒鳴り合いの議論もできるという風土の中にいたこともあり、同じことをやっていても意見が異なるのは当然と思っていますし、逆に皆が同じことを言う状態には不安を覚えます。

 意見の違いがあれば、見方によっては「救出運動が分裂している」との評価をする人もいるでしょう。そこを攻撃してくる人間も出るかも知れません。しかし、私たちは敢えて自分たちの思うところを貫き、また、批判には謙虚に耳を傾けながら、議論もしていきたいと思っています。自分の経験から言えば、それのできる組織・運動こそ本当に強いものになるという確信があるからです。

 ですから、佐藤所長(私は今も昔の癖で「会長」というのが言いにくい)や西岡さんとも今後さらに意見が食い違うこともあると思いますが、それはそれとして、私が今、曲がりなりにも朝鮮半島研究者の真似をしていられるのは現代コリア研究所があったからであり、佐藤所長・西岡編集長をはじめとする関係者の皆さんの指導があったからこそです。プライベートなことで言えば私の家内は西岡さんの後輩であり、私たちの仲人は佐藤所長でした。この点は今後意見が衝突することがあっても、絶対に否定できないことですし、もちろん否定するつもりもありません。

 当初拉致問題に関わっていた人たちも、私もふくめて立場は様々になってしまいました。被害者を救出したいという思いは同じでも、もうなかなか皆が一緒になってというわけにはいかないのかも知れません。今回、「現代コリア」の終刊号を手にして、天井をネズミがはい回る音をBGMに、足下のダニと格闘しながら、テーブルの上の山積みになった資料をどけてスペースを作りゲラの校正をやっていた頃を思い出しているところです。

 最近、この手の文を書くと「長すぎる」というご批判を受けているのですが、また長くなってしまいました。もう「現代コリア」と救出運動の関わりもご存じない方が多いと思い、私的なこともふくめて書いた次第です。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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2007年11月20日

でもそんなのカンケーねぇ

※以下は本日(11月20日)発信した「調査会ニュース」584号に書いたものです。
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 いきなり不謹慎なタイトルで恐縮です。先日の家族会・救う会・拉致議連の訪米団のご苦労を見ていて、つい福田総理が開き直って、ブッシュ大統領に「テロ支援国家指定解除、でもそんなのカンケーねぇ」と言ってくれないだろうかと思いました。アメリカがそうするならこっちはもっと北朝鮮を締め上げてやる、と言ってくれたら頼もしいのですが。もちろん、パンツ1枚になって下さいとは申しません。

 訪米団の皆さんには本当にご苦労さまでした。ブッシュ政権がテロ支援国家指定解除を規定方針にしていることは今年初めのベルリン会談の頃からある程度分かっていたことですが、それがなかなか実現できないのはやはり日本からの圧力が効いているということだと思います。そしてその圧力を作っている源泉はやはり3団体の努力と国民の良識ではないでしょうか。

 代表団がヒル国務次官補と会ったときのやりとりを見ると、ヒルは徹底して逃げている感じでした。おそらく本人もあまり自信がないのでしょう。ヒルの姿は1994年、ジュネーブ合意のときのガルーチ・米代表と重なるのですが、あのときやった「枠組み合意」について、後にガルーチは「あれは合意ではない。合意された枠組み(Agreed Framework)だった」と言ったそうです。どうせヒルもそのうちそんな風にして逃げるのだと思います。

 テロ支援国家指定解除が米国の規定方針だったとしても、それを少しでも遅らせることは、いわゆる「遅滞戦術」としての効果を上げています。やがて北朝鮮は必ずボロを出すでしょうから、それまで様々な戦術を動員して流れを変える、こちらに都合の悪い流れを止める努力が必要です。「バスに乗り遅れるな」という人がいますが、戦前、その言葉に乗せられて三国同盟を結んでしまったことの終着点が敗戦だったことを考えれば、無理にバスにのる必要もないでしょう。あのときでも、もう少し待っていれば欧州の状況は変化し、三国同盟にブレーキがかかっていたはずです。

 それはともかく、ブッシュ政権がこういう調子ですから、必要なのは日本政府が正面から北朝鮮との対決姿勢を示すことです。ある意味「米国もたじろいだ北朝鮮を日本が押さえつけた」ということになりえる、絶好のチャンスとも言えます。

 おりしも福田首相はCNNのインタビューで北朝鮮について「非常に鎖国的な、閉鎖的な国家で、人々は非常に不幸な状況にある。自由社会と全く違う体制を組んでいる社会だから、自立とはいえない」と述べ、その上で「いずれは消滅してしまうのではないか」とまで言っています。これまた不謹慎ですが忍者ハットリ君然とした顔でしらっとこういうことを言うと結構効き目があるのではないでしょうか。

 次は北朝鮮が何か日本を非難したら記者会見のときにもろ肌脱いで、「そんなのカンケーねぇ!」と叫び、政府が持っている今の認定被害者よりはるかに多くの拉致被害者リストをドンとテーブルにおいて一気に発表するのはどうかと思います。

 蛇足ですが、「そんなのカンケーねぇ」の小島よしおさんは私と真鍋専務理事、杉野常務理事の元の職場(民社党本部)の先輩の息子さんです。私たち3人とも面識はありませんが。

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2007年11月14日

再チャレンジ

 安倍晋三・前首相が国会に姿を現したニュースを聞いて、一寸ホッとしました。

 安倍さんにとってはまだまだ茨の道でしょうが、ご自身が「再チャレンジ」をスローガンにしていたのですから、ぜひそれを実現してもらいたいものだと思います。1年間の総理としての経験と、それを手放さざるを得なかった経験を、ぜひ今後生かしていただきたいものです。乃木希典将軍は西南戦争で自隊の軍旗(軍旗は部隊にとって命とも言えるものです)を奪われてしまい、そのことが終生心から消えなかったと言われていますが、その思いが後に日露戦争で旅順攻略を果たすことにつながったのだと思います。安倍さんはこの先「敵前逃亡」という汚名を着せられ続けるかも知れませんし、もちろん相応の責任はとっていただくべきですが、その責任は今回のことで得た「戦訓」を次に活かすということでしょう。

 何より安倍さんには年齢という武器があります。政治家としてはまだ四半世紀残り時間があるのですから、この希有な体験を無駄にしないでいただきたいと思います。

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2007年11月13日

寄稿

今出ている文藝春秋社の『日本の論点2008』に「『核か拉致か』は的外れ。拉致問題への強硬姿勢が核解決のカードになる」と題して寄稿しています。ご興味のある方はご一読下さい。ちなみに『日本の論点』は異なる意見を掲載しているもので、私と反対の意見は姜尚中さんです。この間毎日では同様の企画で山崎拓センセイと並べていただきましたが、こういう皆さんと並ぶのが良いのか悪いのか…。

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2007年11月 7日

意見の違い

 以下は昨日流した調査会のニュースです。ほぼ同時に流れた救う会のニュースでは同じ答弁書に対して西岡さんが肯定的なコメントをしていたので、好対照(?)という形になりました。マスコミの人から答弁書についてのコメントを求められたとき「救う会と違いますね」と言われたので、言い訳をふくめて一言。

 そもそも、北朝鮮ではないのですから同じ運動をしていても意見が異なる場合があるのは当然です。「拉致問題はおしまいにしよう」とか「被害者は帰ってこなくて良い」とか言われれば別ですが、問題を解決しようという動きの中では様々なやり方が模索されるべきです。統一すべきは「解決したい、しなければならない」という思いであり方法論ではありません。もちろん非常時においてはその方法論もある程度まとめていかなければなりませんが、可能な限り多様な方法をとっていくことが必要だと思います。

 今月の「正論」にも書きましたが、まさに現場にいた者として、5年前の9.17での政府のやり方それ自体は絶対に許せるものではありませんが、一方で北朝鮮にあのようなアプローチをしていなければ向こうは拉致を認めているはずもなく、いわんや5人を返してもいなかったでしょう。その事実は認めざるを得ません。

 とにかく大事なのは「拉致は許されない、絶対に解決する」という国民の意思だと思います。それさえ間違えていなければこの国の力量からして拉致問題は解決に向かうはずです。基本方針が間違っていなければ戦術的な多少のミスはカバーできます。

[調査会NEWS 572](19.11.6)

■抱腹の答弁書

 10月30日付のニュース567号でお知らせしましたが、西村真悟・拉致議連幹事長は去る10月26日に寺越事件に関する質問主意書を提出しました。これに対する答弁書が本日付で届きましたので元の質問と対比してお知らせします。何と寺越武志さんは「北朝鮮において生存している可能性が高いものと思われる」のだそうです。ということは北朝鮮において生存していない可能性もあるということなのでしょうか。あの武志さんは誰なのか。「影武者」でしょうか。

 前回の西村議員の質問主意書に対する答弁書(安倍政権時代)もそうでしたが、この答弁書を読むと「どれだけ拉致の可能性の高い事件だろうと、政府は認定しないために全力を尽くす。いわんや認定をしていない人を救い出そうなどという動きには身体を張ってでも阻止する」という意気込み(?)が伝わってきます。1年ほど前から政府の言っている「生存者全員の帰国」という目標と重ねて考えると大体どうしたいかが見えてくるようです。

 このままの状態を放置しておけば大多数の拉致被害者は見捨てられてしまいます。これを跳ね返すのは国民の声しかありません。各位のご協力をよろしく御願い申しあげます。

<西村議員の質問主意書と答弁書>
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(質問)一、政府は、寺越昭二、寺越外雄および寺越武志(以下、右三名という)の、それぞれの現在の消息を如何に把握しているか回答されたい。

(答弁)一について
 御指摘の三人の親族からの説明等により、寺越昭二氏及び寺越外雄氏は死亡し、寺越武志氏は北朝鮮において生存している可能性が高いものと思われる。

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(質問)二、政府は、右三名を保護または救出すべき日本国民と考えているのか、回答されたい。

(答弁)二について
 政府としては、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律(平成十四年法律第百四十三号)第二条の規定により北朝鮮当局によって拉致された日本国民として認定された者以外にも北朝鮮によって拉致された可能性を排除できない者が存在しているとの認識の下、御指摘の三人に係る事案を含め、拉致の可能性を排除できない事実の真相究明に努めているところである。

 いずれにせよ、政府としては、北朝鮮に対し、すべての拉致被害者を直ちに帰国させるよう引き続き求めていくこととしている。

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(質問)三、平成十四年四月十八日、参議院外交防衛委員会において、漆間巌警察庁警備局長(当時)は、、「(認定以外の)拉致の可能性のある事案というのはいろいろつかんでおるわけでございます」と答弁して認定以外の拉致事件があることを認め、平成十八年十月十六日、政府拉致問題対策本部が決めた「拉致問題における今後の対応方針」(以下、対応方針という)第五項に、「特定失踪者など拉致の可能性を排除し得ない事案の捜査・調査推進」とあるが、政府は、右三名を捜査・調査を推進すべき拉致の可能性のある事案と考えてきたのか、回答されたい。

(答弁)三について
 御指摘の三人に係る事案については、「拉致問題における今後の対応方針」(平成十八年十月十六日拉致問題対策本部決定。以下「対応方針」という。)五でいう「北朝鮮による拉致の可能性を排除でいない事案」に該当し、当該事案の捜査及び調査を推進する必要があるものと考えている。

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(質問)四、平成十八年十二月十三日、拉致問題国際会議参加者らが招聘された政府主催のレセプションで、漆間警察庁長官(当時)は、寺越昭二の息子らに「(寺越昭二失踪事件は)拉致だと考えている」と話しているが、政府は右三名が北朝鮮に拉致されたと考えているのか、回答されたい。

(答弁)四について
 三についてでお答えしたとおり、御指摘の三人に係る事案については、対応方針五でいう「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案」に該当するものと考えている。

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(質問)五、北朝鮮は、寺越昭二が北朝鮮上陸後に病死したと主張しているが、亡命工作員安明進は、寺越昭二は海上の拉致現場で抵抗したため北朝鮮工作員により射殺されたと証言している。

 寺越昭二の家族は、北朝鮮が言うように同人が北朝鮮で病死したのなら遺骨があるはずだから家族に遺骨を返せと求めているが、北朝鮮は真新しい墓の写真や墓の土などを渡すのみで遺骨を返していない。このことから、寺越昭二が北朝鮮工作員によって射殺された疑いが大きくなっている。

 政府は、寺越昭二が北朝鮮工作員によって射殺された疑いをもっているのか、回答されたい。

(答弁)五について
 御指摘のような可能性も含めて捜査及び調査を行っているところである。

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(質問)六、政府は、対応方針第一項で、「全ての拉致被害者の安全確保と即時帰国、真相究明、実行犯引渡し」を北朝鮮に要求している。

 政府は、ここでいう真相究明には右三名の事案の真相究明も含まれると考えているのか、回答されたい。

(答弁)六について
 御指摘の三人に係る事案は、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案であり、その真相究明は、対応方針一でいう「拉致に関する真相究明」に含まれると考えている。

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(質問)七、政府は、北朝鮮との外交交渉の中で、右三名の事案を如何に扱ってきたか、回答されたい。

(答弁)七について
 北朝鮮に対しては、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案全般について情報提供等を求めてきているところである。

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(質問)八、政府は、「拉致問題の解決なしに北朝鮮との国交正常化はしない」という原則を掲げて、「全ての拉致被害者の安全確保と即時帰国、真相究明、実行犯引渡し」を求めているが、右三名の事案と寺越昭二殺人容疑に関して真相究明と実行犯引渡しがなされることが北朝鮮との国交正常化の条件と考えているのか、回答されたい

(答弁)八について
 御指摘の三人に係る事案については、現在、捜査及び調査を行っている段階であり、お尋ねについては、その成果を慎重に見極める必要があるものと考えている。

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2007年11月 6日

言われなくても

 西村真悟代議士から聞いた話ですが、去る10月30日、米国公使公邸で拉致議連幹部とアービッシュ国務次官補代理、ドノバン公使らが会談した折、米国側は北朝鮮と「核無力化」の合意ができても日本は拉致問題が解決しなければ合意に参加できないのかと、要は一刻も早くテロ支援国家指定解除を認めろとの要請をしてきたそうです。

 日本側は「日本政府は国民を守る責務を負っている。米朝の合意ができても日本は自国民を見捨てることはできない」と、至極もっともな主張をしたそうですが、これに対してドノバン公使は「核の被害は甚大で、無力化してそれを防ぐことができるのにか?」と聞いたとのこと。それに対し西村議員が「その通り。核の被害が甚大なことは、言われなくても2発落とされたので知っている」と言ったところ公使は黙ってしまったとか。このやりとりを聞いて思わず吹き出してしまいましたが、考えてみればこれはまったくその通りです。ヒルに対して佐々江さんが「そんなに大騒ぎするなら、そもそも何であんたのところは日本に原爆を落としたんだ」と聞いているのもいいのでは。

 そう言えばもう20年位前ですが、民社党青年部が入っていた国際青年組織でIUSY(国際社会主義青年同盟)というのがありました。これの会議でインドにいったとき、何かスピーチをすることになったので、何を話すかと考えて核兵器の問題を話したことがありました。日本人が核の話をすると結構説得力があるようで、私の支離滅裂な英語でもそれなりに聞いてくれました。場合によっては「私も被爆者だ」と言っても信じられそうな雰囲気でした(年齢から言えばそんなことはありえないのですが)。

 とにもかくにも唯一の被爆国であることを、左翼的な物言いではなく、もっと有効に使うべきではないでしょうか。特にアメリカに対しては。

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2007年11月 5日

拙稿ご紹介

「諸君!」12月号(11月1日発売・文藝春秋) 連載・月報「北朝鮮問題」(29) 「南北首脳会談、北に有利に終わる」
「正論」12月号(11月1日発売・産経新聞社)「国民の悲劇に対する怒りを忘れてはならない」
「海外事情」11月号(11月中旬発売・拓殖大学海外事情研究所)「韓国にとっての大統領選挙」

 関心のある方はご一読いただければ幸いです。

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