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2007年12月26日

「諸君!」2月号

今月の拙稿「月報『北朝鮮問題』(31)」のタイトルは「北の米国傾斜に揺れる中朝関係」です。米朝接近はかならず中朝関係を緊張させます。それについて、2000年のできごとを材料に書きました。ご一読いただければ幸いです。Scan

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「行動を取るよう求めていく」と「取り返す」の差

以下は12月25日付の調査会NEWS 588号に書いたものです。

  「しおかぜの集い」で採択された要請文書にも書かれていますが、11月28日に拉致問題対策本部から受け取った回答書には「政府は、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現すべく最大限努力をしています。10月3日の六者会合成果文書においても、日朝双方が精力的な協議を通じて具体的行動を実施していくことが確認されたところであり、政府としては、北朝鮮自身が拉致問題の解決に向けて具体的な行動を取るよう求めていく考えです」と書かれています。

 これは後に掲載した一昨年(平成17年)6月14日の参議院内閣委員会における森ゆうこ議員(民主)と当時の細田官房長官のやりとりを見ても分かります。ある意味政府の姿勢は一貫しているとも言えるでしょう。

 しかし、総理(これは小泉総理であれ安倍総理であれ福田総理であれ同じですが)が「拉致問題の解決に全力をあげる」と言ったとき国民、とりわけ認定未認定にかかわらず拉致被害者家族は「拉致被害者を奪還する」(方法は様々あり、その選択はともかくとして)ということだとは思っても、「北朝鮮が拉致被害者を返すまで延々と話し合いを続けていく」とは思っていないはずです。

 私はこの内閣委員会のやりとりをたびたび引用していますが、細田官房長官の答弁の「先方も政府で、彼らのこの領土の中においてはあらゆる人に対する権限を持っておりますので、これは我々が説得をして、そして彼らがついに、実は生きておりました、全員返しますと言うまで粘り強く交渉をすることが我々の今の方針でございます」というのはどう考えても納得できるものではありません。私ならずとも常識を持った人であれば誰でもそう思うでしょう。この答弁には逆の意味で細田さんならではの正直さが出ているのかも知れませんが、拉致をした相手に「返していただく」というのはお役所の論理からすれば正しくても国家としての整合性を欠く認識だと思います。

 「取り返す」と言うと、時に「憲法の制約」を理由にできないという人がいますが、現行憲法でも第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と第65条「行政権は、内閣に属する」によって拉致被害者を取り返すことは認められるはずですし、そもそも拉致された国民を取り返すなどというのは憲法以前の問題であるはずです。なお、たとえ日本国籍がなくても日本国内から何らかの理由で本人の意思に反して連れて行くなどした場合は主権侵害になるはずです。1973年のいわゆる「金大中拉致事件」はその扱いでした。したがって在日の拉致被害者も取り返すべき存在であることはいうまでもありません。

 少なくとも来年はこのことに皆が気づいて、国家として本来行うべきことが当たり前のように行われる日本にしたいものだと思います。


(資料:平成17年6月14日、参議院内閣委員会)

 ○森ゆうこ君 政府が全く認定していない人たちがいるわけですね。先ほどの特定失踪者問題調査会のリストに挙がっている人はたくさんいらっしゃるわけです。そして、疑いが濃厚になっている人も本当に大勢いらっしゃる。そういう人たちにも帰っていただかないと、これは拉致問題の解決にはつながらないわけです。

 外務省が交渉していく場合に、先ほど答弁にもありましたように、やはり認定、きちっとした形でないと要求は突き付けにくいということですから、この認定のやり方、今後変えるべきではないでしょうか、官房長官。

○国務大臣(細田博之君) これは、確かにおっしゃることは分かるわけでございます。

 しかし、こういう言わば犯罪の被害者、言わば誘拐ではございますから、その犯罪の被害者として、だれか特定の人が特定の場所でこういう経路でだれが手伝って連れていったと、拉致をしたということをやはり警察当局がしっかりとした証拠固めをして、そして認定をするという仕組みでやっております。

 したがって、その限りではどうしてもこの田中実さんを含めて十六名の方、特に、五人の方はお帰りになりましたので、残り十一人の方の問題になるわけでございますが、当然ながら、そのほかに交渉においては、例えばいろんな状況証拠が出てきつつあった加瀬テル子さんとか藤田進さんを始め、そういう話もしておりますし、それからいわゆる特定失踪者の千番台のリストの方々等を合わせますと、救う会の認定も含めますと五十数名の方は極めて容疑が濃いわけでございますけれども、そのうち、そのほかにも百数十名と言われる方が突然の、理由もない失踪をされているということから大変疑惑は深いわけでございますけれども、我々としては、北朝鮮にはっきりとしたものからまず交渉をしております。

 はっきりとした証拠のあるものでさえ、その生存を隠し、しかもきちっと、ああ、この方でしたらおられましたと言ってきませんので、これはもう向こうの政府の、極めてこれ遺憾でございますが、こういったことを何とか直させなきゃいけないということは非常に今我々も苦労しておるところでございます。
○森ゆうこ君 申し訳ありませんが、そのような政府の認識、根本的に間違っていると私は思います。

 今、犯罪というふうにおっしゃいました。刑事事件として扱っていらっしゃるんですね、一個一個、それぞれ。それで警察が捜査をして、そして証拠がある程度固まったときに政府として認定をしていく、そしてそれを基に外務省が交渉をしていくと、こういうシステムになっているわけですけど、そもそもそれは間違っているんですよ。そうじゃないんです。

 拉致問題というのは、個別の刑事事件じゃない、北朝鮮の国家による現在進行形のテロなんです。これが拉致問題なんです。だから、そんな姿勢では絶対解決できません。だから、北朝鮮側は何も、自分たちの都合のいいことを言ってくるだけで誠実に対応しようとしないんです。当然です。日本政府がそのような認識で今までのような態度だったら、何にも答えてこないのは当たり前じゃないですか。

 これから救出に向けていつまでに何をするのか、具体的にお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(細田博之君) できるだけの努力を今後とも継続したいと思います。

 それには交渉のテーブルに着き直すことが大事でございますし、それから別途進められております六か国協議も再開に向かって今協議が進められておりますが、こういったところで直接顔を合わせて、それをきっちりと申し入れるということが今後可能になる可能性が今大きくなっていると思っております。

○森ゆうこ君 政府、我が国政府が、我が国の国民が拉致されて救出を待っているときに、我が国の政府が自分でできる、主体的にできるということを、いつまでに、どのように、何をするのか、具体的にお答えいただきたいという質問なんですが。

○国務大臣(細田博之君) 先方も政府で、彼らのこの領土の中においてはあらゆる人に対する権限を持っておりますので、これは我々が説得をして、そして彼らがついに、実は生きておりました、全員返しますと言うまで粘り強く交渉をすることが我々の今の方針でございます。

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2007年12月20日

李明博当選

 李明博48.7%,鄭東泳26,1%、李会昌15.1%、与党も選挙戦当初よりはだいぶ追い上げたが、それでも得票率で20%の差があってはどうしようもない。逆に言えば大統領中心制で絶大な権限が集中する韓国でこれだけ与党が負けるというのは、いかに現在の大統領が国民から見放されているかの証明である。李会昌と合わせて3分の2の得票というのは圧倒的な民意と言ってよい。

 李明博という人はそれほど思想的に固まった人ではないと思うし、ハンナラ党の中にも左翼はいるからそう急に政策が変わることはないと思うが、少なくともこれで韓国の保守派や、脱北者の人たちは息を吹き返すだろう。当然様々な形で報復が始まると思う。それはおそらく今の大統領にも至るだろう。

 テロ支援国家指定解除をしたくて仕方ない米国ブッシュ政権に日本がブレーキをかけているうちに韓国は保守系の大統領候補が当選した。2000年に金正日がクリントン訪朝を夢見て、その手前で挫折したのと同じ状況ができつつある。日本にとってはこの地域でイニシアチブをとっていくために絶好のチャンスであると言える。

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要請文

 だいぶ更新が滞っていました。以下は先日の「しおかぜの集い」で採択された要請文です。これはセレモニー的に採択するのではなく、この要請文自体を武器にしようというものです。

 特に、3項目目を見ていただければわかりますが、政府の方針は「北朝鮮自身が拉致問題の解決に向けて具体的な行動を取るよう求めていく」というものであって、主体的に奪還しようというものではありません。これは意外に盲点だったのではないでしょうか。小泉さんにせよ安倍さんにせよ福田さんにせよ、総理が「拉致問題を解決する」と言ったときには、当然「とりかえす」ということだと国民は思っているはずです。その方法には様々な違いもあるでしょうが、「返してもらう」ということだと認識している人はあまりいないと思います。

 これについては絶対に変えさせなければなりません。ある意味、日本の戦後体制が集約されているとも言える政府のこの姿勢が変えられなければ、拉致被害者の救出は実現しないと思います。各位のご協力をお願いします。
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(要請文書)


内閣総理大臣・拉致問題対策本部長 福田康夫様
内閣官房長官・拉致問題担当大臣  町村信孝様

拝啓

 平素多忙な国事の中で拉致問題に対するご尽力に心より敬意を表します。
 さて、去る10月31日お届けした総理宛要請文書に対し、11月28日対策本部事務局名の回答
をいただきました。お忙しい中回答をまとめてくださったことには感謝しているものの、そ
の内容については到底納得できるものではありません。私たちは本日東京と大阪の集会の参
加者、そして同じ思いを持ってインターネットの中継を見ている全世界の人々の総意として、
あらためて次の3点について要請する次第です。どうか格段のご配慮をお願い申し上げます。

1、事務局ではなく、総理・担当大臣が直接特定失踪者の家族に会い、決意を述べてください。

 回答書では「拉致問題に関する政府へのご要望につきましては、基本的には、内閣官房拉
 致問題対策本部事務局を窓口としてお受け取りすることとしており、今回のご要望につき
 ましても、同様に対応させて頂きます」となっています。しかし、特定失踪者の家族は常
 に「取り残されるのではないか」という危機感にさいなまれており、文字通り「事務的」
 な回答で納得できるものではありません。家族会への対応も10年前は今の特定失踪者の家
 族と同じでした。しかし、それが変わっていったのは政治が動いたからです。あらためて、
 総理・担当大臣が家族に会い、「認定未認定にかかわらず北朝鮮からすべての拉致被害者
 を取り返す」との決意を明らかにしていただきたくお願いします。

2、果断に情報を公開してください。

 11月28日の回答文には「具体的な手段・方法等を明らかにすることは、今後の情報収集活
 動等を困難にするおそれがあることなどから、お答えを差し控えさせていただきます」と
 書かれています。しかし本当にそうでしょうか。少しでも多くの情報を明らかにすること
 が新たな情報をもたらし、拉致問題の解決につながるのではないでしょうか。政府が拉致
 の可能性の高いと思われる、少なくとも数十人のリストを持っていることは10年近く前か
 ら知られています。情報の隠蔽が、やがてとてつもない責任問題となることは最近の役所
 をめぐる不祥事からも明らかです。現在失われつつある国民の政府への信頼を再び取り戻
 すためにも、明確な対応をしていただきますようお願い申し上げます。

3、北朝鮮に拉致問題の解決を求めるのではなく、日本政府が奪還してください。

 回答書には「政府は、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現すべく最大限努力をし
 ています。10月3日の六者会合成果文書においても、日朝双方が精力的な協議を通じて具
 体的行動を実施していくことが確認されたところであり、政府としては、北朝鮮自身が拉
 致問題の解決に向けて具体的な行動を取るよう求めていく考えです」と書かれています。
 しかし、「北朝鮮自身が拉致問題の解決に向けて具体的な行動を取る」などと思っている
 人はほとんどいません。この認識を変えることなく「政府は、すべての拉致被害者の一刻
 も早い帰国を実現すべく最大限努力をしています」と言い続けるのであれば、それは国民
 に対する許しがたい背信であると言わざるをえません。総理・担当大臣の口から「日本国
 政府の力をもって、独裁国家北朝鮮から国民を救い出す」と明言していただきたくお願い
 申し上げます。
敬具
 平成19年12月16日
しおかぜの集い実行委員長   大澤昭一
                     同大阪集会実行委員長     秋田正一郎
                     特定失踪者問題調査会代表    荒木和博
特定失踪者家族支援委員会委員長 真鍋貞樹
東京集会・大阪集会参加者一同

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2007年12月14日

やっと復旧

Kousakuin_2


 パソコンがほぼ復旧しました。データの方はだめですが。このブログをご覧いただいている方にはご迷惑をおかけしました。

 そこでサービス、というわけではありませんが、北朝鮮工作員の侵入現場を撮った大スクープ、ではなく、16日の「しおかぜの集い」で東京会場の陸上自衛隊広報センターに展示する水中スクーターのレプリカの写真をご披露します。工作員に扮しているのは調査会の曽田理事です(当日はこの扮装はしていません。水中スクーターだけです)。ぜひご参加ください。

 なお、イベントの最後、16:00のちょっと前から東京大阪で一緒に「ふるさと」を歌う予定です。インターネットでご覧の方もぜひ一緒に歌ってください。

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2007年12月 8日

お詫びとご報告

 昨晩パソコンのOSの更新をしていて、誤ってデータを消去してしまいました。何しろバックアップの仕方を間違えたため何も残っていないという惨状です。ときどきこういう夢を見るので、夢ではないかと思ったのですが、現実でした。朝起きて「やはり夢だったのではないか」とおもってみたのですが、現実でした。
 昨年はBB彈でパソコンを一つだめにしたのですが、そのときはハードディスクは大丈夫だったのでデータはすべてのこっていました。今度はほとんどきれいになくなってしまい、さてこれからが大変です。関係各位にはご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。調査会ニュースなどはできるだけ早くに復旧するよう努力します。あくまでデータの消失であって流出ではありませんので、その点のご迷惑をおかけすることはありません(それが唯一の救い)。

 それにしても、こんなことになるのは「パソコンなんぞいじっていないで、早く北朝鮮に乗り込め」という天の声かもしれません。

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2007年12月 1日

召集令状

Meirei

 現代版召集令状です。予備自衛官以外見たことのある人はあまりいないと思いますのでご参考まで。
 正式には「訓練招集命令書」。「召す」ではなく「招く」になっているところが現代風(?)。私たち技能語学(英語・ロシア語・中国語・朝鮮語)の予備自の専門訓練は今のところ年間に1回だけ。今年は今月10日から12日までの3日間、東京都小平市の陸上自衛隊小平学校で行われます。所定の訓練は年間5日で、残り3日は私の場合通常朝霞で射撃や徒手格闘などの訓練と体力測定などを行います。

 私は現在軍曹(1曹)ですが、たたき上げで下士官になる人からすれば「基本動作もろくにできないくせに」とも見られていると思います。それはその通りで、公募予備自も一般なら予備自衛官補50日の訓練で2等兵(2等陸士)になります。これは訓練に対して付く階級で、階級自体は低くても中身はあるのですが、私たちの場合予備自衛官補としての訓練は10日だけ。階級は訓練ではなく技能に付くものなので、使ってもらわなければだだの穀潰しです。やはり一刻も早く石破大臣の「防衛招集命令書」で招集されて北朝鮮に乗り込みたいと思います。

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