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2006年11月28日

日本海

 25日に福井県の若狭町、26日に米子で集会があったため、小浜線の上中から米子まで、列車を乗り継いで移動した。夕方の17:43上中発の東舞鶴行きで終点まで行き、乗り継いで西舞鶴へ、切符はそのままJRで綾部まわりなのだが、急に気が変わり北近畿タンゴ鉄道で豊岡に出た。宮津行きの快速だが、宮津からそのまま特急になり豊岡に行く。車両は特急「タンゴエクスプローラー」の車両なので。得したような気分ではあった。もっとも、夜だったので残念ながら景色は全く見えなかったが。

 豊岡で宿に着いたのが22時頃、テレビをつけたら「遙かなる約束」をやっていた。スパイ容疑でソ連に抑留された男性が半世紀ぶりに妻・娘との再会を果たす話だが、黒木瞳さんのやっていた奥さんが松本京子さんのお母さんにだぶって感じられた。

 翌朝、7:43豊岡発で浜坂、鳥取と乗り継いで11:50米子着。何か昭和30年代のような行程だった。それにしても山陰の海岸は美しく、美しいということは逆に言えば無防備だということでもある。拉致のことをやっているせいか、海岸を見ていると「ここなら侵入しやすいだろうなあ」などと、変な感慨に浸るのだが、そういう海岸がずっと続くのである。

 これだけ見ていても、この国の防衛の基本である「専守防衛」というのがいかに欺瞞であるかがよく分かる。そして、その欺瞞の被害者の1人が26日の集会のメインテーマとなった松本京子さんであった。折しも米子では国民保護法制に基づく訓練が行われ、官房副長官が参加していた。国籍不明の武装グループによる科学剤爆発飛散事件が起きたとの想定だったそうだが、この訓練と松本さんの事件は決して関係のないものではない。当事者がどの程度理解しているかは分からないが。

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2006年11月17日

拉致認定

以下は11月16日付の調査会NEWS 435号に書いたものです
■松本京子さん拉致認定の件

                                        荒木和博

 昨日夕方、いっとき「漆間警察庁長官が官邸で記者の質問に答えて松本京子さんの拉致認定をした」との情報が流れました。しばらく情報が錯綜し混乱しましたが、長官は「今週中の認定手続きはない」という趣旨のことを言ったようです。官邸には未確認ながら松本さんについて警察としての意志を固めたことを伝えに行ったと言われています。様々な情報からすると認定は来週週明け早々に行われるようです。

 それにしても、先週金曜日に「松本さんを拉致認定の方向」との報道が流れてからまもなく1週間になります。こちらとしては「後がつかえているんだから、早いところやってくれ」というのが正直なところです。松本さんの事件を発掘した地元米子の妹原仁・調査会常務理事は「子供の出生を待っているような、そんな感じが長く続いている」と表現していますが、松本さんの件は4年前のクアラルンプールでの日朝協議でも出ているのであり、とっくに拉致間違いなしと認識されていたケースです。今更もったいぶっても仕方ないでしょう。

 政府の方では色々な手続きがあるというのでしょうが、認定というのは、あくまで日本政府がどう考えるかであって、認定しようとしまいと拉致被害者は被害者ですし、認定したから拉致被害者が帰ってくるというものではありません。こんなにもったいつけられると、私たちも報道関係の皆さんも、もちろん一般の皆さんも、逆に認定というのがいかに大変なことで、それが大きな山であるかのように感じてしまいます。

 必要なことは救出であって、認定はそのためのステップの一つでしかありません。私たちは何が本当に大事なのか、しっかり見極める必要があるのではないでしょうか。もし、松本京子さんのことだけに見せかけておいて、実は50人位まとめて拉致認定する準備をしているというのであれば話は別ですが。

 ともかく、後がつかえています。1週間に1人ずつ認定できたとしても、拉致被害者が仮にあと100人とすれば全部認定するのに2年、200人なら4年もかかるのです。9.17以降これまでの2年に1人のペースだと400年です。やり方を変えるか別のやり方を並行させるかしないと大部分の人は見捨てられ、北朝鮮で亡くなってしまいます。本質をもう一度見つめ直し、早く次のステップに進みましょう。

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2006年11月13日

松本京子さん

松本京子さんの拉致認定が早々になされるとのニュースが流れている。実現すれば特定失踪者リストから初めてとなり、現在認定訴訟が行われている古川了子さんをはじめ、特定失踪者ご家族にすれば朗報である。ただ、何より大事なのは被害者の救出である。政府にもそれを忘れないで欲しいし、私たちも目標を誤らないようにしなければならないと思っている。
 以下は10日に発表したものである。

         松本京子さんの拉致認定報道について(11月10日調査会ニュース431号で発表)

 本日、昭和52(1977)年に鳥取県米子市から失踪した松本京子さんについて、拉致認定されるとの報道がなされた。認定が実現するなら、救出に向けて一歩進んだということであり、松本さんのご家族のみならず、他の特定失踪者、あるいは私たちのリストにないご家族にとっても希望の灯である。関係各位のご努力に心より敬意を表したい。

 松本さん以外にもまだまだ多数の拉致疑惑がある。そして北朝鮮にいる被害者も、残された家族も救出を待っている。もちろん、拉致認定は救出に向けての一歩でしかないのだが、今回松本さんが認定されればその波及効果はきわめて大きい。関係各位には一層の努力を求める次第である。もちろん私たちも可能なことはすべて行っていく所存である。

   平成18年11月10日
                     特定失踪者問題調査会代表 荒木和博

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2006年11月 9日

「放送命令」答申について

以下は調査会のメールニュース428号(本日付)で流したものです。
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 本日電波監理審議会から拉致問題についての放送命令に関し答申が出されました。「編集の自由に配慮した制度の運用を行うことが適当」との注文をつけた上で放送命令を容認しています。
 これ自体は「しおかぜ」とは関係ありませんが、これまであたかも命令放送を利用して「しおかぜ」を流すかのような誤解が生まれていましたので、一言私の見解を述べておきたいと思います。
 報道の自由という観点からしても、NHKの編集の自由の保障は当然だと思います(もちろん、これはNHKの個別の報道や番組が妥当かどうかというのとは全く別の問題です)。しかし、編集の自由を前提にしたとき、鳴り物入りで「命令放送」をやることにどの程度効果があるのか疑わしいと言わざるを得ません。しかも、NHK国際放送ではこれまでも拉致問題を何度もとりあげているのです。命令された方も困るのではないでしょうか。
 「命令」という言葉の本来の意味からすれば、国際放送の中に一定の時間を確保し(不可能なら時間を延長しても)、政府の責任で番組を作成し、放送させるべきでしょう。例えば総理や官房長官が、政見放送のように直接マイクを通して拉致被害者に語りかけ、「必ず救出します」と呼びかける政府広報のような放送を確保すれば、きわめて大きな効果を上げることができるはずです。それは北朝鮮にいる被害者のみならず、国際的にも大きなアピールになりますし、国民も力強く思うでしょう。
 現在の「命令放送」は、一般の番組の中に渾然一体となったもので、「何時何分から何時何分までが命令放送」というものではありません。そこに抽象的に拉致問題を強調せよと言っても、無理に増やせば「命令に屈した」ということになるし、無視していれば「拉致問題解決に不熱心」と言われる。現場では混乱するだけではないでしょうか。
 それより今、具体的に拉致被害者のために放送を活用するには、現在北朝鮮では十分に聞こえない朝鮮語国際放送の時間、周波数、送信出力などを見直して、北朝鮮で、隠れて聞きやすくすることが重要です。現在の第二放送(中波)利用なども考えられるのではないでしょうか。
 私たちも北朝鮮に放送を流している立場として、これを機会に関係する専門家と協議し、NHKの放送を拉致被害者救出に効果のあるものにしていただくための提言とりまとめを行いたいと考えています。

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2006年11月 6日

しおかぜについての見解

前にも同様のものを流していますが、本日の記者会見であらためて以下の見解を発表しました。少なくとも言えることは、今回の動きは、「政治のレベルで積極的に拉致問題をやろうとしているのに官僚やNHKが抵抗している」というものではなく、現場を分からない人たちのリップサービスのために、かえって話がややこしくなっているというのが本質です。その点をご理解いただきたいと思います。

          「しおかぜ」への政府の対応について

 去る10月11日の総務大臣国会答弁以来、北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」への政府の支援の話がたびたび報道されている。それ自体は大変ありがたいことだし、実際拉致対策本部の調整室や総務省、NHKなどの現場が真摯に対応して下さっていることに感謝したい。
 しかし、一方で現在に至るまで、「しおかぜ」を運営しているわたしたち調査会に対して具体的に「このような形で対応できる」との話はなく、逆に「命令放送」という言葉だけが一人歩きし、誤解と混乱がみられる。この際私たちの認識を明らかにしておきたい。

 現在、「しおかぜ」に対する政府の支援として言われているのは①NHK国際放送の「命令放送」の利用、②茨城にあるKDDIの送信施設の利用、の二つである。

 まず、①については、物理的に不可能だと考える。現在の「命令放送」は「○○の問題について重点的に放送して欲しい」と、政府からNHKに対し口頭で伝えるだけのものであり、一般の放送の中に渾然一体となっている。番組の中に拉致問題の取り扱いを増やすかどうかは別次元の問題であり、少なくともこれを利用して「しおかぜ」の内容を流すのは不可能であると考える。なお、NHK国際放送ではこれまでも「しおかぜ」について番組の中で何度か取り上げていただいている。
 ②については、現在総務省からの回答を待っているところである。しかし、施設利用が可能になったとしても、手続きに相当の時間がかかることが予想され、作成したプログラムを送る方法などの技術的な問題、資金的保証の問題等、クリアしなければならない問題は少なくない。

 以上のような現状からして、わたしたちが希望するのは以下の通りである。

1、現在の英国VT社経由の送信に関わる費用の負担
2、前記②が可能であれば、手続き、技術面、資金面での具体的かつ早急な対応

 なお、現在のNHK国際放送については内容はそのままでも送信時間や周波数などの工夫(例えば中波でのNHK第二放送の活用)により、北朝鮮にいる日本人拉致被害者のみならず、在日朝鮮人帰国者及びその日本人家族などにきわめて有益な放送が可能である。これについては調査会として専門家などと議論の上、再度提言を行いたいと考えている。

    平成18年11月 6日
                                                    特定失踪者問題調査会代表 荒木和博

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