調査会のメールニュースでも流していますが、昨日対北放送に関する提言を発表しました。今日は橋本会長宛の文書をNHKに届け、佐藤俊行国際放送局長にお渡ししてお願いしてきました。あまり積極的な返事は聞けませんでしたが、せっかく現場で一所懸命番組を作っても聞こえないのでは仕方がありません。今後各方面から色々な形でアプローチをしていきたいと思います。
(要請文書)
平成18年12月26日
(要請先は以下の通り。宛先は個別記載。日付はNHKのみ27日)
拉致問題対策本部長・内閣総理大臣 安倍晋三様
拉致問題担当大臣・内閣官房長官 塩崎恭久様
総務大臣 菅義偉様
北朝鮮による拉致被害者を救出するために行動する議員連盟会長 平沼赳夫様
日本放送協会会長 橋本元一様
特定失踪者問題調査会
代表 荒木和博
平素の拉致被害者救出への献身的なお取り組みに心より敬意を表します。
さて、拉致被害者救出のための対北朝鮮放送について、昨年10月私どもの短波放送「しおかぜ」スタート以来、様々な議論がなされてきました。そして、今年度補正予算及び来年度予算では政府自ら放送を含めた海外広報を実施し、また、「しおかぜ」への実質上のご支援をしていただけることになりました。
北朝鮮向け情報伝達が様々なチャンネルで流されることは極めて重要であると考えます。しかし、それを効果あらしめるようにするためには改善していかなければならない点が少なくありません。つきましては別紙の通り提言を作成しました。ぜひご理解、ご協力賜りますよう、心よりお願い申し上げる次第です。
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(提言文書)
平成18年12月26日
北朝鮮向け放送について
特定失踪者問題調査会
代表 荒木和博
対北放送の分類
日本からの北朝鮮に向けた放送は概ね目的によって次のように分類できる。
(1)北朝鮮にいる日本語を解する人々(拉致被害者・在日朝鮮人帰国者及びその日本人家族)に情報を伝えるもの。政権崩壊等緊急時の対応も含まれる。これについてはNHKの国際放送が一般的情報を流し、私たちの「しおかぜ」が拉致被害者を中心に、自らの意志に反して北朝鮮にとどまらざるを得ない状態にいる人々に対する情報の提供、呼びかけを行っている。
(2)北朝鮮の一般国民及び党・軍・政府機関幹部に拉致問題解決への協力を求めるもの。しおかぜの朝鮮語放送がこれに当たるが、救う会が韓国の自由北韓放送を通じて行っている北朝鮮への呼びかけも同様の目的である。
(3)北朝鮮の金正日体制を崩壊に誘導するための情報を注入するもの。これについては、北朝鮮における独裁政権の存在が人権問題のみならずわが国国家主権の侵害、安全保障上の大きな懸念となっている以上、本来国家意志をもって行うべきと考えるが、現状では国が行うのは難しいので以下の議論では省略する。
なお、これ以外に「しおかぜ」では英語でのニュース発信も行っており、これは短波放送の特性を活かして英語圏まで含め広範囲に拉致問題・北朝鮮問題への周知をはかるものである。さらに、すでに報道されているように政府では平成18年度補正予算及び19年度予算において放送などを利用した海外向け広報活動を行うこととしているのは周知の通りである。
現在のNHKの北朝鮮向け国際放送に関する問題点
現在のNHKのハングル(朝鮮語)国際放送は20分ないし30分の放送を1日6回流している。時間は日本時間で7時10分から23時30分の間、周波数は放送によって異なるが6190khzから17845khzの間である。また、建前上は外国向けではないが、中波の第2放送では毎日13時10分から13時20分の間「ハングルニュース」を放送している。
短波の国際放送は拉致問題も含めたニュースのみならず、日本の様々な情報を朝鮮語で伝える貴重な時間だが現在の放送は高域の周波数が多く、ソウルでも聴取状況は決して良いとは言えない。朝も7時10分放送開始と、遅めのスタートで、北朝鮮で隠れて聞いている人には聴取しにくい時間である。
命令放送に関する問題点
すでに何度も報道されてきた通りだが、11月10日総務省からNHK国際放送に対して「拉致問題を重点的にとりあげるよう」命令が行われた。
菅義偉総務大臣の意図は、国際放送で拉致問題の報道を増やすことによって北朝鮮にいる拉致被害者への広報効果の拡大をねらったものであり、意図としては高く評価すべきものだが、もともとこの命令放送についてはその名称と運用が実態にそぐわないものであったため、かえって現場に混乱をきたしており、本来目指したものが実現しているとは言い難い。
命令放送の根拠となる放送法第33条には「総務大臣は、協会に対し、放送区域、放送事項その他必要な事項を指定して国際放送を行うべきことを命じ、又は委託して放送をさせる区域、委託放送事項その他必要な事項を指定して委託協会国際放送業務を行うべきことを命ずることができる」とある。これにもとづいて今回の放送命令も実施されたわけだが、実際にはこれまで行われたNHKへの放送命令の内容は慣例的に一般放送の中で「渾然一体」となって放送されており、その責任の所在が極めて不明確である。一方で拉致問題は日朝間のみならず周辺国も巻き込んだ国際問題であり、なおかつ多数の日本人の人命にかかわる重要問題であるため、さまざまな齟齬が生じている。
特に現場では報道すれば「命令をされたからだろう」と見られ、報道しなければ「命令に逆らっている」と見られるというジレンマに陥っている。また、本来国際放送に対する命令放送であるにもかかわらず、国内でのNHKのテレビ・ラジオの報道までそのような目でみられているのが実情である。
公共放送であるNHKがその報道内容について様々な批判を受け、それに真摯に対応すべきことは当然である。私たちも批判すべきことは批判しているが、一方メディアとしての編集権は担保されなければならない。それは自由な社会を守るために当然のことである。
提言
以上のことを踏まえ、より効果的な北朝鮮への放送を実現するため以下のように提言する。関係各位には積極的にご検討されることを切に期待する次第である。
1、NHK国際放送の時間及び周波数の変更
放送時間を可能な限り早朝及び深夜にシフトし、周波数帯の高い放送はできるだけ低い周波数、例えば6Mhz台に変更して、より聴取機会を増やしていただきたい。
2、NHK第2放送の活用
第2放送の開始される前の時間、5時30分〜6時の30分を使って国際放送(朝鮮語)のプログラムを流していただきたい。(注・この記載は誤りで第2放送の放送開始時間は5時30分であり、要請する時間は5時〜5時30分になります)。
3、「命令放送」の見直し
最終的には放送法の改正が必要になるが、政府が出資する根拠と編集権の確保の齟齬を解消するためには、現在のやり方を見直さなければならない。「命令放送」を「指定放送」とし、国際放送の中の一定時間を政府広報として流す形に変更していただきたい。その内容は政府が独自に作っても、NHKに委託しても良いが、いずれにしても放送にあたっては政府広報であることを明確にし、内容についての責任は政府が負うものとすべきである。政府はこの時間を使って拉致問題に関する広報活動を積極的に行っていただきたい。
4、政府による海外広報(特に北朝鮮向け放送)について
政府が自ら北朝鮮向けの呼びかけを行うことを決めたのは評価される。実施に当たってはぜひ「しおかぜ」第一放送で実施している特定失踪者の氏名等データの読み上げと連絡先(瀋陽・北京の在外公館等も含め)の告知を行っていただきたい。
政府が行うとなれば「特定失踪者」という括りで氏名を流すことは難しいかも知れないが、名称にこだわる必要はない。認定未認定にかかわらず、拉致被害者にとって自分の氏名を放送で聞くことの意味は計り知れないほど大きいはずである。「しおかぜ」では「拉致された方、拉致の可能性のある失踪をされた方」という言い方をしている。私たちのリストにある人以外にも警察には多数の方々から「家族の失踪は拉致ではないか」との問い合わせが届いており、可能であればそれらの方々で希望する場合も含めて流せば大きな意義があると思われる。
なお、上記政府海外広報についてもそうだが、北朝鮮の金正日体制崩壊などにともなう緊急時の放送については関係機関が連携をとりながら迅速な判断によって行うべきであり、調査会としてもその準備を進める予定である。
以上