« 2006年11月 | トップページ | 2007年1月 »

2006年12月31日

新年にあたって

 あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願い申し上げます。

 さて、私は一昨年より、「平成18年の内に拉致問題を解決する、それができなければ相応の責任をとる」と約束して参りました。そして、その約束を果たすことはできませんでした。金正日体制は相当窮地に陥っていると思われますが、拉致被害者5人の帰国以降1人も取り返せていません。

 もちろん、このような問題を私一人で解決できるなどと大それたことを考えていたわけではありません。北朝鮮をめぐる全体の流れがその方向に向かっており、平成18年後半で一つの結果を出せるだろうという判断があり、自分としても末端でその一翼を担いたいというのが私の考えでした。しかし、とにもかくにもその約束は実現できなかったのですから、責任は取らなければならないと思っております。

 私がこの「責任」発言をしてから、色々な方から色々なご意見をいただきました。具体的にどうするとは言っていなかったので、様々な憶測も飛んだようですが、私に聞こえてきたのは(1)調査会の役員を辞任するのではないか、(2)自決ないしそれに近い行動をするのではないか、ということでした。

 結論から言えば私が考えているのはそのどちらでもありません。(1)を選択すれば私は物理的にも精神的にも楽になるだけですし、そのような選択をすれば逆に「責任逃れ」になるからです。(2)は、単に憤死したところで何が変わるものでもなく、これまた敵を利するだけです。

 したがって、本年も活動は従前と同様続けて参ります。ただし、拉致問題解決に目処がついたか、目処をつける過程で何らかの形で責任をとることはお約束しておきます。具体的にどういうことなのかは、正直なところまだ決めていませんが、その局面に至って天の声が聞こえるものと思っております。ただ、ことは命がかかっていることであり、形式的な責任の取り方で済むものでないことは当然です。もし私が逃げようとすることがあれば厳しく糾弾して下さいますようお願い申し上げます。

 こうしている間にも拉致被害者であれ、帰国者や日本人家族であれ、一般国民であれ北朝鮮でまた独裁体制の中命を落としていく人が続出しているはずです。時間の猶予はありません。受け身で対応をするのではなく、今年こそ積極的に事態を変えていきたいと思います。

|

五能線

 ふと目を覚ますと旅館の部屋の様子が変わっていた。何か全体がセピア色のようになっていて、障子に穴が空いている。
 それでもしばらくボーッとしていた。酔いが残っていたせいもあり、さっきストーブの上に置いたコーヒー缶が破裂したのだと気づくのには少々時間がかかった。

 独身時代、正月休みは元旦に初詣をして、年賀状を見てその夜から1人で旅に出るというのが恒例行事になっていた。行く先は大体雪の降っているところで、雪の中を走るローカル線の列車の写真を撮るのが最大の目的である。

 とは言っても、行く先を決めて出る訳ではなく、家を出て上野駅まで行く間にどこに行くか考えるといった行き当たりばったりの旅で、途中でも方向を変えたり気が向いたら列車を降りたりといった調子で仕事始めの前までの数日を楽しんでいた。

 奥羽本線の東能代から日本海沿いに走って同じく奥羽本線の川部に至るJR五能線に行ったのは15年以上前だったと思う。中程にある深浦という駅で降りて駅前の旅館を探した。幸い2軒目位で泊めてくれるところが見つかり、荷物を置いたが夕食はない。旅館を出て食堂を探した。人通りの少ない雪の港町を歩くのは何となく健さんの気分である。

 しばらく行くと寿司屋があった。何しろ漁港である。この寿司が美味かった。日本酒を2合ほどだったか飲んで、さらに健さん気分を高めて(?)宿に戻った。

 良い気持ちでごろんとすると、リュックの中に昼間買った缶コーヒーが残っているのに気づいた。部屋の暖房は今はあまり見られない、円柱形の石油ストーブである。「ちょっと暖めて飲もうか」と思い、その上に乗せた。そしてそのままいい気分になってまどろんでいき、気がついたら冒頭のシーンとなっていたのである。

 もうお分かりと思うが、缶の中のコーヒーが熱せられて膨張し、その圧力が高まって破裂したのである。まずストーブに接地している底の部分が外れ、ロケット噴射よろしく飛び出して、それが障子を突き破り、サッシの窓も割って外に飛び出たらしい(私はその現場は見ていない。おそらく爆発音で目が覚めたのだと思う)。もしこの「ロケット」が自分に向かって飛んでいたら私は大火傷を負っていたろう。

 旅館のご主人に訳を話したのだが、「缶コーヒーが破裂したんです」と言っても余り信じてはいないようだった。「飛行機が落ちたかと思った」と言っていたので相当凄い音ではあったようだ。翌朝宿の外に回ってみて「確かに缶が落ちていた」と言っていた。

 普通であれば、すぐに弁償を請求して追い出すのだろうが、そこは田舎の駅前旅館で、人が良いというか、別の部屋に移してくれた。あまり持ち合わせが無かったのと、部屋の修理代がいくらになるのか分からなかったので、免許証を置いて翌朝宿を辞した。後で届いた請求書は確か5万円になっていたと記憶している。それにしてもご主人からすれば、正月2日の夜に突然得体の知れない男が「泊めてくれ」と言ってやってきて、泊めてやったら部屋をめちゃくちゃにされたのだから、「今年は正月から縁起が悪い」と思ったのではないか。今考えても冷汗ものである。

 ところで、この五能線というのは沿線が北朝鮮工作員の侵入ポイントの多いところである。このブログをお読みの北朝鮮工作員の皆さんの中にも懐かしく思い出される(?)人がいるのではないか。もし今正月に不審な男がこのあたりで1人で泊まって夜中に爆発音を立て部屋を壊したら北朝鮮工作員と間違えられて警察を呼ばれてもおかしくないだろう。現在自分のやっていることと考えると不思議な因縁すら感じるのである。

 ともかく、缶コーヒーを温めるときは栓を開けるかお湯の中でやりましょう。

|

2006年12月28日

蓮池さんのこと

以下は特定失踪者問題調査会のNEWS 456号(12月28日付)で流したものです

■蓮池さんのこと
                      荒木和博

 調査会の岡田常務理事から言われて気づいたのですが、蓮池透さんの著書『奪還 第二章』126ページに警察の事情聴取に関する話が出てきます。その中にこんな一節があります。
 
 「弟夫婦への警察の事情聴取は結局、2004年秋に弟の希望通り実家で行われました。その時、驚くような質問を受けたそうです。
 『北朝鮮のパスポートを所有していますね。日本国内へ工作活動に来たのはいつですか?誰にも言いませんから』
『北朝鮮で日本語教育というある意味でスパイ養成に加担したわけですが、どういうお気持ちで?』
弟は、『日本国内になんて、入れるわけがないだろう。日本語教育は、われわれが生き残るためにやったまでなのに…あなた方は助けに来てくれたのか?』と激怒したそうです。状況を聞いた私は開いた口が塞がりませんでした」

 確かに、こう聞かれれば、薫さんが怒るのももっともでしょう。誰も助けに来なかったのに何を言うか、というのは今北朝鮮に残っている拉致被害者からも、私たちはやがて同じ言葉を聞かされることになると思います。

 しかし、それはそれとして、この記述が事実なら、なぜ警察はあえてこういう質問をしたのでしょうか。何も根拠がなくて、皆が腫れ物にでも触るように扱っている帰国した拉致被害者にこういうことを聞くでしょうか。やはり警察は何か極めて重要な情報、捜査上の秘密などという言葉で隠してはならない重要なことを知っていて、そして隠しているのではないかと思わざるを得ません。あるいはそれは警察レベルのことではないのかも知れません。そして隠しているという意味ではもちろん帰国した5人もです(私は少なくとも5人を非難するつもりはありませんし、その資格があるとも思いませんが)。

 ちなみに私はこれまで5人に何度も、もっと積極的に事実を語ってほしいと手紙を出してきました。『奪還 第2章』にはそのことも書かれており、調査会から脅迫状めいた手紙が届いたとされています。そう受け止められているとすれば残念ですが、私たちはほんの僅かな、不確かな情報でも渇望している失踪者のご家族の思いを背に負っているのですから、多少の無理はせざるを得ません。それが脅迫であるとして罪に問われるならそれも仕方ないと思います。

 少し話が変わりますが、平成14年9月17日の、外務省飯倉公館で確認もしていない死亡情報を「確認しました」と伝えられたこと、そうしておきながら北朝鮮の伝えてきた「死亡」日付などの情報は伝えなかったという体験のおかげで、私の国家権力というものに対する見方は大きく変わってしまいました。この件については拙著『拉致 異常な国家の本質』に書きましたが、先日これが原作となった漫画が『撃論』というコミックの中に掲載されています。山本美保さんの事件についても載っていますので、関心のある方はご一読下さい。もっとも、そのときの雰囲気は結局その場にいた者でなければ分からないとは思います。

 さらに話が飛躍します。遡ること65年、ミッドウェー海戦での大敗北を、当時の帝国海軍は隠し続けました。陸軍すら知らない状態であったのですから、その後まともな作戦計画など立てられるはずはありません。残念ながらまだ見ていないのですが、今上映されている映画「硫黄島からの手紙」にも栗林中将が海軍の現状を知って驚愕するシーンがあるそうです。これは決して誇張ではないと思います。

 そのとき、海軍の首脳に何らかのはっきりした方針があって隠していたならまだ良かったでしょう。実際にはそんな高次元なものではなく、単に「認めたくない」「責任を取りたくない」ということだったとしか思えません。そして、そこから始まった壮大なボタンの掛け違えの結果が何であったのかは歴史が教えてくれています。

 私には今、拉致問題をめぐって行われていることがこれと同じなのではないかと思えてなりません。国家としての基本方針が存在しない中で、個別の機関がそれぞれ自分の都合で隠したり、あるいは必要に応じてマスコミにリークしたりする。マスコミはマスコミで、個々の記者は「おかしい」と感じながらもリークする者の意図に沿うように報道してしまう、ということで来てしまっているのではないか。そんな懸念がこの数年脳裏を離れないのです。

 拉致問題は絶対にハッピーエンドでは終わりません。「見なければ良かった」というようなことに私たちは今後何度も直面することになるはずです。しかし、正面から真実と向き合う勇気がなければ、必ずそのツケは私たちに回ってきます。想像もできないような事実を受け止めることができるかどうか、私たち一人ひとりが天から試されているのかも知れません。
 

|

2006年12月27日

対北放送

  調査会のメールニュースでも流していますが、昨日対北放送に関する提言を発表しました。今日は橋本会長宛の文書をNHKに届け、佐藤俊行国際放送局長にお渡ししてお願いしてきました。あまり積極的な返事は聞けませんでしたが、せっかく現場で一所懸命番組を作っても聞こえないのでは仕方がありません。今後各方面から色々な形でアプローチをしていきたいと思います。

(要請文書)
                                                         平成18年12月26日

(要請先は以下の通り。宛先は個別記載。日付はNHKのみ27日)

拉致問題対策本部長・内閣総理大臣 安倍晋三様
拉致問題担当大臣・内閣官房長官 塩崎恭久様
総務大臣 菅義偉様
北朝鮮による拉致被害者を救出するために行動する議員連盟会長 平沼赳夫様
日本放送協会会長 橋本元一様

特定失踪者問題調査会 
代表 荒木和博

 平素の拉致被害者救出への献身的なお取り組みに心より敬意を表します。
 さて、拉致被害者救出のための対北朝鮮放送について、昨年10月私どもの短波放送「しおかぜ」スタート以来、様々な議論がなされてきました。そして、今年度補正予算及び来年度予算では政府自ら放送を含めた海外広報を実施し、また、「しおかぜ」への実質上のご支援をしていただけることになりました。
 北朝鮮向け情報伝達が様々なチャンネルで流されることは極めて重要であると考えます。しかし、それを効果あらしめるようにするためには改善していかなければならない点が少なくありません。つきましては別紙の通り提言を作成しました。ぜひご理解、ご協力賜りますよう、心よりお願い申し上げる次第です。
-----------------------------------------------------------------------
(提言文書)
平成18年12月26日
北朝鮮向け放送について

特定失踪者問題調査会 
代表 荒木和博
対北放送の分類

 日本からの北朝鮮に向けた放送は概ね目的によって次のように分類できる。

(1)北朝鮮にいる日本語を解する人々(拉致被害者・在日朝鮮人帰国者及びその日本人家族)に情報を伝えるもの。政権崩壊等緊急時の対応も含まれる。これについてはNHKの国際放送が一般的情報を流し、私たちの「しおかぜ」が拉致被害者を中心に、自らの意志に反して北朝鮮にとどまらざるを得ない状態にいる人々に対する情報の提供、呼びかけを行っている。

(2)北朝鮮の一般国民及び党・軍・政府機関幹部に拉致問題解決への協力を求めるもの。しおかぜの朝鮮語放送がこれに当たるが、救う会が韓国の自由北韓放送を通じて行っている北朝鮮への呼びかけも同様の目的である。

(3)北朝鮮の金正日体制を崩壊に誘導するための情報を注入するもの。これについては、北朝鮮における独裁政権の存在が人権問題のみならずわが国国家主権の侵害、安全保障上の大きな懸念となっている以上、本来国家意志をもって行うべきと考えるが、現状では国が行うのは難しいので以下の議論では省略する。

 なお、これ以外に「しおかぜ」では英語でのニュース発信も行っており、これは短波放送の特性を活かして英語圏まで含め広範囲に拉致問題・北朝鮮問題への周知をはかるものである。さらに、すでに報道されているように政府では平成18年度補正予算及び19年度予算において放送などを利用した海外向け広報活動を行うこととしているのは周知の通りである。
現在のNHKの北朝鮮向け国際放送に関する問題点

 現在のNHKのハングル(朝鮮語)国際放送は20分ないし30分の放送を1日6回流している。時間は日本時間で7時10分から23時30分の間、周波数は放送によって異なるが6190khzから17845khzの間である。また、建前上は外国向けではないが、中波の第2放送では毎日13時10分から13時20分の間「ハングルニュース」を放送している。

 短波の国際放送は拉致問題も含めたニュースのみならず、日本の様々な情報を朝鮮語で伝える貴重な時間だが現在の放送は高域の周波数が多く、ソウルでも聴取状況は決して良いとは言えない。朝も7時10分放送開始と、遅めのスタートで、北朝鮮で隠れて聞いている人には聴取しにくい時間である。

命令放送に関する問題点

 すでに何度も報道されてきた通りだが、11月10日総務省からNHK国際放送に対して「拉致問題を重点的にとりあげるよう」命令が行われた。

 菅義偉総務大臣の意図は、国際放送で拉致問題の報道を増やすことによって北朝鮮にいる拉致被害者への広報効果の拡大をねらったものであり、意図としては高く評価すべきものだが、もともとこの命令放送についてはその名称と運用が実態にそぐわないものであったため、かえって現場に混乱をきたしており、本来目指したものが実現しているとは言い難い。

 命令放送の根拠となる放送法第33条には「総務大臣は、協会に対し、放送区域、放送事項その他必要な事項を指定して国際放送を行うべきことを命じ、又は委託して放送をさせる区域、委託放送事項その他必要な事項を指定して委託協会国際放送業務を行うべきことを命ずることができる」とある。これにもとづいて今回の放送命令も実施されたわけだが、実際にはこれまで行われたNHKへの放送命令の内容は慣例的に一般放送の中で「渾然一体」となって放送されており、その責任の所在が極めて不明確である。一方で拉致問題は日朝間のみならず周辺国も巻き込んだ国際問題であり、なおかつ多数の日本人の人命にかかわる重要問題であるため、さまざまな齟齬が生じている。

 特に現場では報道すれば「命令をされたからだろう」と見られ、報道しなければ「命令に逆らっている」と見られるというジレンマに陥っている。また、本来国際放送に対する命令放送であるにもかかわらず、国内でのNHKのテレビ・ラジオの報道までそのような目でみられているのが実情である。

 公共放送であるNHKがその報道内容について様々な批判を受け、それに真摯に対応すべきことは当然である。私たちも批判すべきことは批判しているが、一方メディアとしての編集権は担保されなければならない。それは自由な社会を守るために当然のことである。

提言

 以上のことを踏まえ、より効果的な北朝鮮への放送を実現するため以下のように提言する。関係各位には積極的にご検討されることを切に期待する次第である。

1、NHK国際放送の時間及び周波数の変更

 放送時間を可能な限り早朝及び深夜にシフトし、周波数帯の高い放送はできるだけ低い周波数、例えば6Mhz台に変更して、より聴取機会を増やしていただきたい。

2、NHK第2放送の活用

 第2放送の開始される前の時間、5時30分〜6時の30分を使って国際放送(朝鮮語)のプログラムを流していただきたい。(注・この記載は誤りで第2放送の放送開始時間は5時30分であり、要請する時間は5時〜5時30分になります)。

3、「命令放送」の見直し

 最終的には放送法の改正が必要になるが、政府が出資する根拠と編集権の確保の齟齬を解消するためには、現在のやり方を見直さなければならない。「命令放送」を「指定放送」とし、国際放送の中の一定時間を政府広報として流す形に変更していただきたい。その内容は政府が独自に作っても、NHKに委託しても良いが、いずれにしても放送にあたっては政府広報であることを明確にし、内容についての責任は政府が負うものとすべきである。政府はこの時間を使って拉致問題に関する広報活動を積極的に行っていただきたい。

4、政府による海外広報(特に北朝鮮向け放送)について

 政府が自ら北朝鮮向けの呼びかけを行うことを決めたのは評価される。実施に当たってはぜひ「しおかぜ」第一放送で実施している特定失踪者の氏名等データの読み上げと連絡先(瀋陽・北京の在外公館等も含め)の告知を行っていただきたい。

 政府が行うとなれば「特定失踪者」という括りで氏名を流すことは難しいかも知れないが、名称にこだわる必要はない。認定未認定にかかわらず、拉致被害者にとって自分の氏名を放送で聞くことの意味は計り知れないほど大きいはずである。「しおかぜ」では「拉致された方、拉致の可能性のある失踪をされた方」という言い方をしている。私たちのリストにある人以外にも警察には多数の方々から「家族の失踪は拉致ではないか」との問い合わせが届いており、可能であればそれらの方々で希望する場合も含めて流せば大きな意義があると思われる。

 なお、上記政府海外広報についてもそうだが、北朝鮮の金正日体制崩壊などにともなう緊急時の放送については関係機関が連携をとりながら迅速な判断によって行うべきであり、調査会としてもその準備を進める予定である。
                                                                          
                        以上
 

|

2006年12月26日

「週刊現代」の記事

特定失踪者問題調査会のニュースで次のようなものを流しました。

[調査会NEWS 454](18.12.26)

■「週刊現代」の記事について
                                                  荒木和博

 昨日(25日)発売の「週刊現代」1月6・13合併号に「蓮池薫さんは私を拉致しようと日本に上陸していた」という記事が掲載され話題になっています。この記事の主人公である元小学校教員・横井邦彦氏の証言についてはご本人がブログに書く等して既に出回っていたため、私も事前に知ってはいました。「週刊現代」からは取材を受けていませんのでそれ以上のことは分かりませんが、色々お問い合わせがあるので、一般論としてその可能性について書いておきたいと思います。

 拉致被害者が日本に戻る可能性はあるか、と問われれば、「ある」と答えざるを得ません。例えば福留貴美子さんは昭和51年に騙されて北朝鮮に入国し、よど号グループの1人である岡本武と結婚させられた後、昭和55年に一度日本に戻っています。これは当然工作目的であり、北朝鮮がそのようなことを福留さん1人だけにやらせることは有り得ません(福留さんの事件については月刊『正論』最新号-19年2月号-に掲載された岡田和典・調査会常務理事の論文をご一読下さい)。

 私たちが調べている中でも、ある日新潟の海岸で海水パンツ姿で失踪し、数年後に沖縄で「発見」された人がいます。よど号グループのリーダーだった田宮崇麿(故人)も北朝鮮に来てから戻っている人間がいるという話をしており、そういう類の人間が相当数いることは事実です。

 日本人拉致はその目的は様々でも、最大の目的は対日工作だと思われます。蓮池さんも当然そのような仕事をさせられたのでしょう。したがって、北朝鮮当局が必要だと思えば日本に戻っていたことがあってもおかしくはありません。もちろん、本件が真実だという証拠もないのですが。

 ご本人のブログなどを見る限り、横井氏の証言に妄想と思われるようなところはありません。左翼は左翼ですので、私自身は思想的に相容れないところがありますが、北朝鮮に対しては非常に厳しい見方をしており、見解の違いは別にして冷静な分析であるように思います。蓮池氏には政府(対策本部事務局)を盾にするのではなく、やはり本人がマスコミの前に出て可能な限り真実を明らかにする必要があるのではないでしょうか。

 なお、本件は別にしても拉致被害者が工作活動に従事させられることは、北朝鮮当局に責任があるのであって本人に責任があるのではありません。逆に、拉致をした人を工作活動に使うという北朝鮮当局の非人間性こそが非難されるべきです。次に責任があるのは拉致を防げなかった日本政府であり私たち国民一人ひとりです。いずれにしても一番悪いのは誰かをしっかり見極めなければなりません。
 

|

2006年12月23日

緊急放送

こちらは「しおかぜ」です。

ただいま東京に入った情報によりますと、平壌で何らかの政変が起きた模様です。繰り返します。ただいま東京に入った情報によりますと、平壌で何らかの政変が起きた模様です。
 この放送は今後予定されていたすべての番組を中止し、入手できた情報及び今後の行動についての放送を繰り返します。NHKの国際放送などでも各種の情報が伝えられます。北朝鮮におられる拉致被害者の皆さん、様々な事情で北朝鮮に渡って戻れなくなった皆さんは海外から聞こえる日本語放送に注意してください。

 この番組は日本の民間団体である「特定失踪者問題調査会」が、多くの方々のご支援を受け、毎日一時間の放送を三十分ずつ二回に分けて短波放送でお送りしています。

もう一度繰り返します。先ほど東京に入った情報によりますと、平壌で何らかの政変が起きた模様です。「しおかぜ」は今後予定されていたすべての番組を中止し、入手できた情報及び今後の行動についての放送を繰り返します。NHKの国際放送などでも各種の情報が伝えられると思います。北朝鮮におられる拉致被害者の皆さん、様々な事情で北朝鮮に渡って戻れなくなった皆さんは海外から聞こえる日本語放送に注意してください。

 こちらは「しおかぜ」です。

 現在日本政府では様々な形で拉致被害者の皆さん、また、たとえ北朝鮮に入ったのが自分の意志であっても自らの意志に反して出られなくなった皆さん、在日朝鮮人帰国者の皆さん、そしてそれぞれのご家族の皆さんの保護の準備を進めています。まず、身辺には十分に注意してください。今後この放送では救援のための艦艇の寄港地や、乗船のための手続き等についての放送も行う予定です。引き続きこの放送、「しおかぜ」に注意してください。
---------------------------------------------------------------------------------------
これは去る16日、陸上自衛隊広報センターで行われた「しおかぜ」公開収録のオープニングで披露した北朝鮮の体制崩壊時の緊急放送のモデルである。こういう放送が一刻でも早くできるようになることを願うとともに、単に願っているだけではなく、主体的に行動していかなければならないと痛切に感じている。

 平成6(1994)年の第1次核危機の時、ジュネーブ合意といういい加減な枠組みを作ったクリントンの頭には「どうせあんな国は2〜3年もすればつぶれるだろう」というものがあったに違いない。だから時間を稼げば問題は解決すると思ったはずだ。それを笑うことはできない。私もそうだった。金日成が死んだとき、「1年以内の崩壊に10万円賭ける、10年以内なら100万円かけてやる」と言っていたものだ。幸にしてこの賭けに乗る人間がいなかったので助かったのだが、その後も「荒木は直ぐにでもつぶれるといったのにそうならなかったではないか」と批判されている。その批判は甘んじて受けなければならないが、その上での結論は「鳴かぬなら鳴くまで待とう」ではだめだということだ。私たちの手であの体制をつぶしてしまわなければならないのである。

 この放送を流せる日を一日でも早めるために努力を続けたい。

|

2006年12月 8日

「しおかぜ」公開収録

■北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」公開収録--しおかぜの韻(ひびき)--

 北朝鮮人権侵害問題啓発週間の最終日である16日、特定失踪者問題調査会では北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」の公開収録イベントを行います。今回は陸上自衛隊東部方面総監部のご協力をいただき、広報センターのイベントホールで開催することとなりました。初めての公開収録でもあり、人権週間の最終日を飾るイベントとして成功に終わらせたいと思っております。各位のご協力、ご参加を切に期待する次第です。

日時 平成18年12月16日(土)10:00〜12:00
場所 陸上自衛隊広報センター イベントホール
   東京都練馬区大泉学園町 Tel:048-460-1711(代)内線2641
   東武東上線(有楽町線)「和光市駅」から約1.5km(徒歩15分・地図参照)
内容 北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」の収録
家族のからのメッセージ(特定失踪者家族・政府認定者家族・脱北者)
各界から北朝鮮へのメッセージ(関係団体代表、外国来賓他)
ニュース・解説・トーク番組、客席も含め参加者全員での「ふるさと」「あかとんぼ」などの収録他

参加予定者 特定失踪者家族・政府認定者家族・関係団体役員・外国来賓・調査会役員他(調整中)
※現在決定は横田滋家族会代表代表・飯塚繁雄副代表・松本孟さん(松本京子さんの兄)他

参加費 無料
Asaka

|

2006年12月 5日

認定

 松本京子さんのことで「拉致認定」という言葉が飛び交った。
 それも少しおちついてきたが、認定は認定でもっと拍車をかけてもらわなければならないのだが、たとえば1週間に1人拉致認定をしたとしても1年で50人余りにしかならない。それどころか9.17以降これまで4年余でやっと2人である。
 もし警察の捜査→認定→外交交渉という今のやり方だけで行くならとても間に合わないことは明らかで、別ルートを並行して進めるべきなのは当然である。しかし、例えば認定を警察以外の機関(公安調査庁とか、海上保安庁とか、自衛隊とか)の具申によっても行うとしたら、おそらく警察は黙っていないだろう。あの縄張り意識はどうにかしてもらいたいのだが、警察庁と警視庁は仲が悪く、警視庁は他の県警と仲が悪いなど、警察内部でさえ縄張り意識がはびこっているのだから、自力でそれを克服するのは難しいのかも知れない。私たちが全国で接する警察の人たちには頭が下がる程一所懸命にやっている人も少なくないのだが、組織となると個人の思いだけでは動かないようだ。実力を持った権力機関であるだけに、根は深い。

 ところで、私たちはこれまで「拉致被害者として認定」というのにばかり気をとられていたが、「拉致加害者として認定」することはできないのだろうか。認定の対象はただ1人、金正日である。金日成を入れてももちろんいいだろうが、死人に口なし、こちらはすべてが終わった後で歴史の中で断罪されればいい。とりあえず金正日を「拉致加害者として認定」し、その権力の解体を目指す。これが拉致問題解決の最短ルートであると思う。
 これなら1人だけだから直ぐに終わる。警察や政府がやらないなら私が勝手に「認定」してもいいのだが。

|

« 2006年11月 | トップページ | 2007年1月 »