白紙を歩く
鯨井あめ 幻冬舎 2024年10月
天才ランナーと小説家志望。人生の分岐路で交差する2人の女子高生の友情物語。
ただ、走っていた。
ただ、書いていた。
君に出会うまでは――。
立ち止まった時間も、言い合った時間も、無力さを感じた時間も。無駄だと感じていたすべての時間を掬い上げる長編小説。
「あなたをモデルに、小説を書いてもいい?」
ケガをきっかけに自分には“走る理由”がないことに気付いた陸上部のエース、定本風香。「物語は人を救う」と信じている小説家志望の明戸類。梅雨明けの司書室で2人は出会った。
付かず離れずの距離感を保ちながら同じ時間を過ごしていくうちに「自分と陸上」「自分と小説」に真剣に向き合うようになっていく風香と類。性格も好きなことも正反対。だけど、君と出会わなければ気付けなかったことがある。
ハッピーでもバッドでもない、でも決して無駄にはできない青春がここに“在る”。
定本風香は陸上の選手。
本を読むのが苦手。読書家に憧れている。
定本は、ケガで走れなくなり、走る意味がわからなくなり、「走れメロス」を読んで答えを見つけようとする。
小説家志望の明戸類。
学校の司書室に入り浸り、小説を書いている。
「物語は人を救う」と信じている。
運動は苦手。マラソンは友情破壊スポーツと思っている。
この正反対のふたりが出会った所から物語は始まる。
明戸の伯母の店「アトガキ」でふたりは過ごすようになる。
といっても、定本が本好きになるわけでもなく、友情を育むわけでもなく、ふたりの考え方はすれ違っている。
自分の生い立ちからか、ハッピーエンドが書けないと悩む明戸。
走る意味が見つからない定本。
「人生はストーリー」
「人生は一冊のメモ帳」
どちらの考えも共感できる。
いろいろ悩み、考える時間こそが重要なのだと思う。
ふたりを否定しない大人の関わり方もよかった。
ラスト、マラソンは「友情破壊スポーツ」という考え方が変わってよかった。
つかずはなれずのふたりの関係がよい。
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