以前
こちらのエントリーでジャーナリストの西谷さんのツイートを取り上げたことがあります。再掲しましょう
米国ウィスコンシン州で教師をしているカスリンさんを取材。ウィスコンシン州では共和党のウォーカー知事になって教師がどんどんレイオフされていった。彼がおこなったのは、労働者の団交権を認めず、労組潰しと、一方的な解雇
解雇の根拠となった法律がブッシュの定めた 落ちこぼれゼロ法。これがハシズムの教育基本条例とソックリ
子供たちに国語と算数のテストをさせ、その点数だけで予算配分を決める。点数を伸ばせなかった教師はダメ教師
ウィスコンシン州ではブッシュの落ちこぼれゼロ法があっても組合があり教職員が解雇させないよう頑張っていたのだが、ウォーカー知事になって団交権が否定され、簡単に解雇できるように
成績の上がらない学校は、ダメ学校とみなされ、民営化されて行った
ウィスコンシン州は民主党が強かった。 でも長引く不況と、大統領がオバマになってもかわらなかったので、民主党支持層に失望が広がり、ティーパーティに代表される共和党が知事を取った
そして教育現場に過度な競争を持ち込んだ。落ちこぼれた高校には軍隊のリクルーターが来て、イラクやアフガン戦争に行く貧困層の子供たちをリクルートしていった
学校は、もちろん学力向上を目指すがそれだけではない。社会に巣立つ前の人格形成も必要。教師は塾の先生ではない。公立学校の役割は、大きいし、教師が働きやすい環境を整備するのも必要なはず。だから労組が当局と交渉する権利が認められてきた。でもウォーカー知事は一方的にクビにしようとした。
ここで高校生や大学生たちが立ち上がった。先生を守れ、と議会を占拠した。そしてウォーカー知事に対するリコール運動が始まったのだ
何と署名が100筆を越えた。これはウォーカー知事の得票とほぼ同じ。現在、署名の確認作業が行われていて、
法定数に達しているはずなので、リコール知事選挙になる見通しだ。
「落ちこぼれゼロ法」は、公立校の教師をすぐに首にできる法律で、ダメ学校を民営化する仕組み。私学には労組はない。つまり労組をつぶして、教育予算を削減しようという法律。ウィスコンシン州と大阪は酷似している
長引く不況で、民主党支持層が失望した。さらにチェンジを掲げたオバマで、何も変わらなかった。よってリベラル層が知事選挙を棄権した。一方、力をつけてきたのが、右翼のティーパーティー。結果、民主党の牙城で、共和党のウォーカーが当選。彼はこれを好機に、公務員の労組をつぶしにかかった
ウィスコンシン州と大阪はかなり似ているが、1つ違うのは、学生や若年労働者が、「ウォーカー知事ではダメだ」と立ち上がり、議会を占拠し、リコールを成立させかけていること。一方の大阪、日本では、その若者たちが日本のティーパーティーである維新に票を入れてしまう
米国と日本は似ている。社会的な話題を報道せず、ゴシップやスポーツばかり報道するマスコミ。所得の格差の広がり。政治への失望。公務員への敵愾心…。しかし、徹底的に社会が壊れていくと、米国では「何とか立て直そう」と若者が立ち上がる。日本は?
(引用ここまで)
広原教授は学生や市民がウィスコンシン州知事をリコールしたことを受け、
『私はこの報告を聞いた瞬間、大阪でこそ「反ハシズム」のための「ユナイティッド・オーサカ」(団結した大阪)と呼べるリコール運動組織が必要であり、いまこそ橋下市長や松井知事を同時にリコールする“大阪ダブルリコール運動”が提起されるべきときだと感じた。』と語ってらっしゃいます。
●いまこそ「反ハシズム、ユナイテッド・オ―サカ」を結成して、“大阪ダブルリコール運動”の準備をするときが来た、(大阪ダブル選挙の分析、その15)
http://d.hatena.ne.jp/hiroharablog/20120228/1330422843 そして広原教授は
『大阪維新の会が次々と打ち出してくる反動的施策や策動に後追い的に批判・対抗するだけでは、「ハシズム」に勝利することが難しい
ハシズムにイニシャティブ(主導権)を握られている状況の下では、「反ハシズム」の国民世論を効果的に結集することが困難
もっと広汎な府民や市民、それを支援する国民世論を結集できる「大きな旗印」が必要なのだ。「モグラ叩き」のような後追い的な行動だけでは、人びとを立ち上らせることは出来ない』
と指摘し、
『「反ハシズム、ユナイティッド・オーサカ」を結成し、“大阪ダブルリコール運動”を提起することは、現在の局面に危機感を抱く広汎な良識層を結集し得る「大きな旗印」になると私は確信する。自治体労組、教組など公務員労働組合はもとより、広汎な市民団体、ボランティ団体、学生グループ、商店主、工場主などにも広くかつ大胆に働きかけるべきだ』
と提案されています。
広原教授の提案に私も賛成しますが、一方でどうしても西谷さんのツイートどおり
「ウィスコンシン州と大阪はかなり似ているが、1つ違うのは、学生や若年労働者が、「ウォーカー知事ではダメだ」と立ち上がり、議会を占拠し、リコールを成立させかけていること。一方の大阪、日本では、その若者たちが日本のティーパーティーである維新に票を入れてしまう」
「徹底的に社会が壊れていくと、米国では「何とか立て直そう」と若者が立ち上がる。日本は?」
という現実に悲観的になってしまう自分がいます。
また、こんなツイートにも思わず頷きます。
IDEKUBO Keiichi @Idekubo_Keiichi
日本では、政策ではなく、政治家を選ぶポピュリズムが蔓延。なぜか?日本では、運動を組織することが弱く政策的対決点が明確にならない。市民は、自分の要求を実現する運動や組織を知らず、政策の違いも分からず、政治家に期待するだけである。橋下のような輩が跋扈するのは、市民運動・社会運動の弱さ
日本は個性の主張を嫌い、輪を乱さず同質、同調を求める社会です。でもその同質、同調というものは決して「連帯」ではありません。
市民運動、社会運動の持続に欠かせない「連帯」というものは確立した個人主義があってはじめて成り立つと思うのですが、本当の個人主義はまだまだ未発達だと感じます。
でも昨日の3・16『OCCUPY中之島 ~橋下さん!大阪をNYにするってこういうことやっ!!~』は私の悲観的な気持ちをふきとばしてくれるものでした。
大阪の7つの労働組合(大阪労連・大阪全労協・全港湾関西地本・国労近畿地本・全日建連帯近畿地本・関西マスコミ文化情報労組会議・おおさかユニオンネットワーク)が共同して呼びかけを発し、賛同する全国の労働組合と一緒に、橋下市長の労働組合敵視政策に反対する申し入れをおこないました(
http://goo.gl/pkcFnより)なんでも大阪の7つの労組が共同するのは初めてで画期的だったそうです。
その模様がこちら
◆【堺からのアピール】教育基本条例案を撤回せよ
http://blog.livedoor.jp/woodgate1313-sakaiappeal/archives/4140357.htmlまた同日、大阪教育合同労組の非常勤教職員が教育・職員条例案に反発して4年ぶりのストライキを行いました。
強力な橋下旋風は続いていますが、少しずつ、これはおかしい、橋下市政は間違っている、という市民の声が連帯して形になり始めたことに気持ちが明るくなりました。
少し前のものですが、皆さんにも読んでいただきたい報道記事がありますのでご紹介します。
Viewpoint:橋下市長は職員調査命令撤回を=ローレンス・レペタ
◇Lawrence Repeta(明治大学法学部特任教授)
http://mainichi.jp/select/world/news/20120303ddm004070146000c.html
大阪市の橋下徹市長は2月、市職員へのアンケート調査で、労働組合活動や支持する政治家などに関する個人情報を強制的に答えるよう命じた。命令が許されるのならば日本の民主主義社会にとって大きな後退になるだろう。
米国史に詳しい人なら、プライバシーや結社の自由に対する同様の攻撃があったのをご存じだろう。最も有名なのは1950年代にマッカーシー上院議員らが率いる米上院小委員会が俳優や作家、学者らの政治歴を調べた例だ。共産主義が米国を席巻するという恐怖感から行われ、後に「赤狩り」と呼ばれた。
職員への調査で、橋下氏は「正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます」と述べたが、マッカーシー議員らの調査を拒否した人たちも処罰によって脅かされた。多くの作家や大学教授が政治信条や政治活動の秘密を守る憲法上の権利を主張して、仕事を失うなどした。
ブルックリン大学教授だったハリー・スロックアワー氏は52年に小委員会に呼ばれた。共産党員だった過去について証言を拒否し大学を解雇されたが、憲法で保障された権利を侵害されたとして提訴。56年、米連邦最高裁は解雇を違憲とする判決を下した。
同じころ米南部では黒人に平等な権利を求める公民権運動が始まっていた。55年、アラバマ州でバスに乗っていた黒人のローザ・パークスさんが黒人用に分離された座席への移動を拒否し逮捕された。
パークスさんは全米黒人地位向上協会の会員だった。アラバマ州政府は協会に会員名簿の開示を求めたが、会員への暴力や嫌がらせにつながると恐れた協会は拒否した。州政府は協会を提訴した。
58年の連邦最高裁判決は全員一致で、結社の自由が民主主義社会に不可欠な権利だとし、「結社の自由を保つためには多くの状況でプライバシーを守ることが必要だろう」と指摘した。判決は個人情報の保護における画期的な出来事として称賛されている。
「公権力の乱用からの個人情報の保護」は簡単に実現したわけではない。スロックアワー氏やパークスさんといった個人の勇気のおかげで米国人は今日、憲法上の権利を享受しているのだ。この歴史を考慮すれば、橋下市長の命令は衝撃的だ。日本が民主主義社会だと認識しているのなら、橋下市長は直ちに命令を撤回すべきだ。【訳・秋山信一】
◇大阪市職員の政治・組合活動調査
昨年11月の大阪市長選で市職員の労働組合が前市長を支援した疑いがあるとして、市が2月10~16日に市職員約3万5000人にアンケートを実施。記名式で特定の政治家の応援や組合活動への参加の有無などを尋ね、非回答の場合は処分を検討するとした。労組側が不当労働行為に当たると申し立て、大阪府労働委員会は、府労委が結論を出すまで調査を中断するよう勧告。市側は月内に結論が出なければ、アンケートを廃棄するとしている。
毎日新聞 2012年3月3日 東京朝刊
(引用ここまで)
弱者切り捨ての新自由主義、覇権主義が鼻についてならないアメリカですが、司法が「人権の最後の砦」としての役割を果たしている所は、国旗国歌の強制は違憲だという判決一つ出せない日本の司法より優れていると思います。
これはなんだかんだ言っても、自由のために闘うと自負(これは両刃の刃だと思いますが・・)がアメリカ人のDNAに受け継がれているせいでしょう。
しかし日本の司法は、てんでアテになりません。
『「公権力の乱用からの個人情報の保護」は簡単に実現したわけではない。スロックアワー氏やパークスさんといった個人の勇気のおかげで米国人は今日、憲法上の権利を享受しているのだ。』
日本のような人権後退国では、権利は市民がそれを守り行使しなければ、やがて形骸化の憂き目にあうでしょう。
橋下氏は今、表だって憲法を攻撃し、憲法に保障された国民の基本的人権を攻撃しています。
OCCUPY中之島のような反ハシズムの市民運動が広がりを見せていきますように。
『「公権力の乱用からの思想信条の自由、労働基本権の保護」は簡単に実現したわけではない。大阪市民と国民の勇気のおかげで日本人は今日、憲法上の権利を享受しているのだ』
と言えるようになるために。
大阪が第二のウィスコンシンになりますように。
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