東北大震災の「復興」によせて~ショックドクトリン(その2)
- 2011/12/02
- 16:00
(前の記事からの続きになりますので、さきにこちらをお読みください)
過去、死刑再審で逆転無罪が連続したとき、世間からは「何故やってもいない犯罪を自白してしまったのか」と不思議がる声が一様に上がりました。名張毒葡萄酒事件で有罪判決を下した裁判官も判決文の中で「死刑になるかもしれない重大事件で虚偽の自白をするとは考えがたい」と述べています。
しかし冤罪被害者は皆、口をそろえてこういいます
「とにかく怖かった辛かった逃れたかった、逃れられるなら刑事達の言うとおりに自白をしても構わないと思った。この気持ちは実際に経験した者でなければ決してわからない」
人間はショック状態に陥ると判断力を奪われ、言いなりになりやすくなる。
それと似たようなことが個人のレベルだけでなく社会のレベルでも起こる。
政府がそのような社会のショック状態を利用して、通常なら国民が反対するであろう政策を強引に推進するのがショックドクトリンです。
こうしてみると野田政権が強引に急いだTPPも、消費税増税も、震災を口実にしたショックドクトリンの一つ、というとらえ方ができますね。
「災害のショックに便乗した財界主導の市場原理主義改革」は阪神大震災の時にもありました。そのとき被災者置き去りの「創造的復興」が行われました。
ハリケーンカトリーナの後のニューオリンズや洪水に見舞われた後のニューヨークでも同様です。災害に備えて公共インフラを手厚く整備するどころか、逆に民営化してしまいました。
そして東北大震災の「復興」でも同じことが繰り返されようとしています。
住民そっちのけで、国と財界のお偉いさん達がよってたかって自分たちに都合の良い街に作り直そうとしているのです。
宮城の「水産特区構想」しかり
ソニーは被災者を大量解雇しようとしました
日本全国から集まった善意の義援金を受け取った被災者はその分生活保護費がカットされました
被災者の生活保護を国が引き受けるのではなく避難先の自治体に丸投げ
失業保険延期なし
自主避難は補償しない、等々・・・
東電や政府の棄民とも言える隠蔽、不誠実な態度。被災者に冷たく東電や財界様に手厚く、という現実を見ると、やっぱり「頑張ろう日本」「ひとつになろう日本」「絆」などという美辞麗句は、「ショックに便乗した市場原理主義改革」を覆い隠すための空虚で偽善的なスローガンにしか思えません。
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-733.html
「ショック状態に陥ると私たちはまるで子供のようになり、守ってやると約束する指導者に従いがちになる」というのは911直後のアメリカがまさにそうでした。
指導者(ブッシュ)が指し示す方向へ向かうことを強制する同調圧力がものすごく高まりました。
イラクを攻撃するのは間違ってる、などと発言しようものなら、陰から射殺されかねない雰囲気が蔓延し、どう見ても熱狂する全体主義国家にしか見えなかったです。
これはまさに小泉氏、石原氏、橋下氏、と言ったポピュリストが歓迎される日本に当てはまっていますね。
バブルが崩壊し、地下鉄サリン事件が起こってから、日本の社会は一気に閉塞し、今もそれが続いています。慢性的なショック状態が続いているのです。
サイドカラムに書いた
「格差を広げ、セイフティネットを破壊し、冷徹な自己責任論が横行する社会を継続させるのは簡単だ。今よりもっと格差を広げ、セイフティネットを破壊する政策をとればよい。そうすれば人々に自己責任論がもっと浸透し、草の根から勝手に右傾化してくれる。」
新自由主義に対する不満を抑えるために新自由主義をもっと強めその弊害を強めれば、新自由主義への不満がでなくなってくる、という逆説的な負のスパイラルもショックドクトリンであると言えるのでしょう。
災害やテロなどでショックをうけたあと、社会がいち早く健全な判断能力を取り戻し示すことができるかは、その国がいかに民主主義を成熟させる経験を積んできたかが、大きな要因になりそうな気がします。
そういう意味で、サリン事件の後の日本とテロの後のノルウェーの比較は興味深いです。
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-744.html
今のアメリカは911のショックから立ち直りつつあるのかもしれません。
かつてあれほど支持したイラク戦争を否定する人が増えました。99%による反格差デモが三ヶ月たった今も続いています。
でも日本については嫌な難題が立ちふさがっています。
日本も、セイフティネットが張られ、貧困層を底上げし、格差解消に向かえば経済も持ち直し、ショック状態から立ち直れるでしょう。
すると人々は何が起こったのか自覚し始めます。騙されていたことに気づくのです。
それではお財界様支配層に都合が悪いです。
だからいつまでも格差を持続させ、国民を苦しめる状態を続けるようにする、決して国民全体の生活を改良できるような政策はとりません、ショック状態を継続させるために・・・
社会をショック状態から解放するためには格差を解消し再分配社会に移行すればいい
けれど、再分配社会を実現するには、人々が自分に起ったこと(自己責任や市場原理主義や小さな政府は間違いだったこと)を知り、ショック状態から回復し、そういう社会が必要なのだという自覚を持たなければならない
というジレンマに陥るのです。
このジレンマを断ち切るにはどうしたらよいのでしょうか。
過去、死刑再審で逆転無罪が連続したとき、世間からは「何故やってもいない犯罪を自白してしまったのか」と不思議がる声が一様に上がりました。名張毒葡萄酒事件で有罪判決を下した裁判官も判決文の中で「死刑になるかもしれない重大事件で虚偽の自白をするとは考えがたい」と述べています。
しかし冤罪被害者は皆、口をそろえてこういいます
「とにかく怖かった辛かった逃れたかった、逃れられるなら刑事達の言うとおりに自白をしても構わないと思った。この気持ちは実際に経験した者でなければ決してわからない」
人間はショック状態に陥ると判断力を奪われ、言いなりになりやすくなる。
それと似たようなことが個人のレベルだけでなく社会のレベルでも起こる。
政府がそのような社会のショック状態を利用して、通常なら国民が反対するであろう政策を強引に推進するのがショックドクトリンです。
こうしてみると野田政権が強引に急いだTPPも、消費税増税も、震災を口実にしたショックドクトリンの一つ、というとらえ方ができますね。
「災害のショックに便乗した財界主導の市場原理主義改革」は阪神大震災の時にもありました。そのとき被災者置き去りの「創造的復興」が行われました。
ハリケーンカトリーナの後のニューオリンズや洪水に見舞われた後のニューヨークでも同様です。災害に備えて公共インフラを手厚く整備するどころか、逆に民営化してしまいました。
そして東北大震災の「復興」でも同じことが繰り返されようとしています。
住民そっちのけで、国と財界のお偉いさん達がよってたかって自分たちに都合の良い街に作り直そうとしているのです。
宮城の「水産特区構想」しかり
ソニーは被災者を大量解雇しようとしました
日本全国から集まった善意の義援金を受け取った被災者はその分生活保護費がカットされました
被災者の生活保護を国が引き受けるのではなく避難先の自治体に丸投げ
失業保険延期なし
自主避難は補償しない、等々・・・
東電や政府の棄民とも言える隠蔽、不誠実な態度。被災者に冷たく東電や財界様に手厚く、という現実を見ると、やっぱり「頑張ろう日本」「ひとつになろう日本」「絆」などという美辞麗句は、「ショックに便乗した市場原理主義改革」を覆い隠すための空虚で偽善的なスローガンにしか思えません。
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-733.html
「ショック状態に陥ると私たちはまるで子供のようになり、守ってやると約束する指導者に従いがちになる」というのは911直後のアメリカがまさにそうでした。
指導者(ブッシュ)が指し示す方向へ向かうことを強制する同調圧力がものすごく高まりました。
イラクを攻撃するのは間違ってる、などと発言しようものなら、陰から射殺されかねない雰囲気が蔓延し、どう見ても熱狂する全体主義国家にしか見えなかったです。
経済危機と暮らしの破壊は日々継続中ですから、慢性的ショック状態が続いているとも言えます、なるほどポピュリズムやファシズム、全体主義的な思考が受け入れられやすくなるわけです
これはまさに小泉氏、石原氏、橋下氏、と言ったポピュリストが歓迎される日本に当てはまっていますね。
バブルが崩壊し、地下鉄サリン事件が起こってから、日本の社会は一気に閉塞し、今もそれが続いています。慢性的なショック状態が続いているのです。
サイドカラムに書いた
「格差を広げ、セイフティネットを破壊し、冷徹な自己責任論が横行する社会を継続させるのは簡単だ。今よりもっと格差を広げ、セイフティネットを破壊する政策をとればよい。そうすれば人々に自己責任論がもっと浸透し、草の根から勝手に右傾化してくれる。」
新自由主義に対する不満を抑えるために新自由主義をもっと強めその弊害を強めれば、新自由主義への不満がでなくなってくる、という逆説的な負のスパイラルもショックドクトリンであると言えるのでしょう。
災害やテロなどでショックをうけたあと、社会がいち早く健全な判断能力を取り戻し示すことができるかは、その国がいかに民主主義を成熟させる経験を積んできたかが、大きな要因になりそうな気がします。
そういう意味で、サリン事件の後の日本とテロの後のノルウェーの比較は興味深いです。
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-744.html
この調査でもう一つ知ったのは、ショックもいずれ消えることです。一時的な状態なのです。
ショックに抵抗する最善の道は自分に起ったことを知ることです。
今のアメリカは911のショックから立ち直りつつあるのかもしれません。
かつてあれほど支持したイラク戦争を否定する人が増えました。99%による反格差デモが三ヶ月たった今も続いています。
でも日本については嫌な難題が立ちふさがっています。
日本も、セイフティネットが張られ、貧困層を底上げし、格差解消に向かえば経済も持ち直し、ショック状態から立ち直れるでしょう。
すると人々は何が起こったのか自覚し始めます。騙されていたことに気づくのです。
それではお財界様支配層に都合が悪いです。
だからいつまでも格差を持続させ、国民を苦しめる状態を続けるようにする、決して国民全体の生活を改良できるような政策はとりません、ショック状態を継続させるために・・・
社会をショック状態から解放するためには格差を解消し再分配社会に移行すればいい
けれど、再分配社会を実現するには、人々が自分に起ったこと(自己責任や市場原理主義や小さな政府は間違いだったこと)を知り、ショック状態から回復し、そういう社会が必要なのだという自覚を持たなければならない
というジレンマに陥るのです。
このジレンマを断ち切るにはどうしたらよいのでしょうか。
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