東北大震災の「復興」によせて~ショックドクトリン(その1)
- 2011/12/01
- 13:00
今日は動画「ショックドクトリン 大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義改革、ナオミ・クライン新著を語る」をご紹介しましょう。
(長くなりますので、エントリーは二つに分けます。)
民主党がTPP参加やマニフェストぶっちぎりの消費税増税を強引な手段で実行しようとしていることも、ショックドクトリンなのですね。
●http://democracynow.jp/video/20070917-1#
●http://democracynow.jp/video/20070917-8
●http://democracynow.jp/video/20070917-9
動画は是非3つとも見ていただきたいのですが、とりあえず1だけ書き起こしておきましょう
ーチリのクーデター 天安門事件 ソ連崩壊 911事件、イラク戦争 津波やハリケーン
これらを一つの糸に通すのがナオミ・クライン氏の新著 『ショックドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体』です
経済学者フリードマンによれば「危機のみが真の変化をもたらす」 「危機に際しての行動はすぐ使える案が頼りだ」
クライン氏はこれを最も危険な思想とみなします
大惨事は企業に大もうけの機会を与え 政府が「惨事資本主義」を推進する契機となります。
ー(ナオミ・クラインは)『ショックドクトリン』にこう書きました
「自由市場の歴史はショックで綴られてきた。過去35年のひどい人権侵害は反民主主義政権のサディズムとみられがちだが、じつは計画的に民衆を怯えさせ、過激な自由市場改革を進める素地づくりだった」
まずは同名の短編映画の一部をご覧ください。A・クアロン監督とクライン氏の共同制作 「ショックドクトリン」です1940年代には薬物と精神医学が大躍進、精神病の治療に新技術が採用された。電気ショックによって患者の心を白紙に戻しゼロから再出発できるようにする。白紙に戻った精神に「健全」な新人格を刷り込む。
「人々を改造しようショックによって服従させるのだ」この強烈な発想がテーマです
1950年代にCIAがこれに注目し一連の実験をやり囚人を屈服させる秘密の手引書を作りました。ショックを与え子供の状態に戻し服従させる手法です。
CIA尋問マニュアルの引用です。
マニュアルの基本前提は幼児へと退行させるテクニックです。人は一時的に人事不省になる瞬間があります。心理的なショックや麻痺の状態です。
この瞬間こそ尋問者がつけ入るすきです。相手はずっと従順で忠告に応じやすくなっている。
この手法は個人だけではなく社会全体にも効き目があります。
集団トラウマや戦争クーデターや自然災害、テロ攻撃などが皆をショック状態に陥れます。
尋問室の囚人と同様に私たちも子供のようになり、守ってやると約束する指導者に従いがちになるのです。
この現象に早くから気づいたのは有名な経済学者ミルトン・フリードマンでした。
彼の示す過激な理想社会ではすべてが利益と市場で決まります。学校も医療保険も軍隊さえも。
貿易保護や価格規制を全廃し政府機能を骨抜きにする主張はもちろん非常に評判が悪い。大規模な失業や物価暴騰を招き大勢の暮しを不安にするからです。
民主的に理想が実現できないフリードマン一派はショックの力を借ります。
容疑者をたたき起こし目隠しをして手錠をかけます。このとき強烈なショックを受け不安や心理的緊張に襲われます。このショックから回復させないのがコツです。
逮捕時のショックが尋問への抵抗を弱めるように、大惨事が 急進的な市場経済化への抵抗を弱めるとフリードマンは考えました。
彼の政治家たちに助言した不人気な政策は災害直後を狙って一気に断行せよ。
彼は「経済ショック療法」と呼んだ。私は「ショックドクトリン」と呼ぶ 。
経済危機と暮らしの破壊は日々継続中ですから、慢性的ショック状態が続いているとも言えます、なるほどポピュリズムやファシズム、全体主義的な思考が受け入れられやすくなるわけです
現代の重大事件を振り返ればこの理論の実践例に気づきます。
これが自由市場の陰の歴史。自由と民主主義からではなく、ショックから生まれたのです。
逮捕の時からずっと身体も精神も孤立させておくと困惑によって抵抗力がなくなる。囚人は常に沈黙させられ、他の囚人と話すことは許されない。
この調査でもう一つ知ったのは、ショックもいずれ消えることです。一時的な状態なのです。
ショックに抵抗する最善の道は自分に起ったことを知ることです。
ークアロン監督の映画「ショックドクトリン」でした。全部を覧になりたい方は番組サイトを ご覧ください。
ジャーナリストのナオミ・クライン氏は 『ブランドなんかいらない』の著者映画「テイク」の共同監督です。
新著は『ショックドクトリン』 今日はスタジオにお招きし時間いっぱいお話を聞きます。
ー「ショックドクトリン」とは何かお考えを聞かせてください
「ドクトリン」とは権力の理念です。政治や経済の目標を達成する為のね。この理念によれば市場至上主義を推進する最適の時は大きなショックの直後です。経済の破綻でも 天災でもテロでも 戦争でもいい、肝心なのはそのショックで社会全体の抵抗力が弱まる点です。人々が混乱して自分を見失った一瞬のすきをついて「経済のショック療法」が強引に行われます。極端な国家改造を一気に全部やるのです。ソ連崩壊後のロシアの改革やイラク侵略後ブレマー代表が試みたようにね 。危機状況を利用したのは現代の右派だけではありません。危機を利用するという考えはショックドクトリンに特有ではなく、ファシストも共産主義国もやりました。ただこれにより現代の主流思想への理解が深まる。「野放しの市場経済」への。
ー ミルトン・フリードマンとは何者ですか?
私が問い直そうとする歴史を象徴する人物です。フリードマンが2006年に亡くなった時、惜しみない賞賛がそそがれました。経済学者だけでなく知識人としても戦後最大だと。 彼はサッチャーからニクソン、レーガン ブッシュの顧問を務め、ラムズフェルドが駆け出しの頃に指導し、70年代のピノチェトにも助言した。80年代後半の中国共産党の改革にも助言しました。影響力は大きく 資本主義のカール・マルクスとも呼ばれます。マルクスは嫌がるでしょうがあたってますね。思想を普及させましたから。彼によれば国家の役割は 契約履行の強制と国境の防衛のみです。 それ以外は完全に市場に委ねる。教育も国立公園も郵便局もすべて営利を目的に運営すべきと、売り買いこそが自由と民主主義の最高形態だと、フリードマンは本気で信じていたらしい。 主著は『資本主義と自由』です。昨年彼が亡くなって何度も聞かされたのが過激な自由市場主義がいかに世界を席巻したかの物語。過去35年ソ連や南米やアフリカにこの思想がいかに強く浸透したか。ちょうどこの本を書いていた私は暴力や危機やショックが語られないのに驚きました。ただ人々が求めたから浸透したというのです。ビッグマックと民主主義を求めてベルリンの壁を崩したのだと。「他に選択肢はない」とサッチャーが言い、資本主義と自由が提携し「歴史は終った」とフクヤマが言う。私の本は同じ物語を語り直します。この思想を躍進させた重要事件に暴力やショックも落とさずに加え、大虐殺や危機や大規模ショック国家への打撃を利用して世界の大多数が拒絶した政策をごり押しする仕組みを説明しました。
ーナオミ・クライン氏の新著は『ショックドクトリン』 惨事便乗型資本主義の正体です。
(太字は私)
(その2に続く)
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