Ａｆｔｅｒｎｏｏｎ　Ｃａｆｅ

広島の記念式典に際して菅総理、そしてルース大使にそれぞれ言いたいことがあります。

●菅総理にはどうやら去年麻生さんにした批判と同じ批判が当てはまりそうです。
去年麻生さんは、式典で「日本が、今後も非核三原則を堅持し、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に向けて、国際社会の先頭に立っていくことをお誓い申し上げます」と述べたのに、その舌の根も乾かない式典後の記者会見では「核抑止は必要」と平然と話し、「そのような考えで長崎の式典には来るなと言いたい」と猛批判を受けました。

今年の菅総理はどうでしょうか。
総理は式典で「唯一の被爆国である我が国は核兵器のない世界への実現に向けて先頭に立って行動する道義的責任を有していると確信します」と述べたのに、その後の記者会見では秋葉広島市長が求めた核の傘からの離脱を間髪入れずに否定しました。
「核兵器のない世界への実現に向けて先頭に立つ道義的責任がある」のに「核抑止力は必要」なのだそうです。
よくもまあこんな矛盾したことが平然と言えるものだと感心します。
去年の麻生さんの二枚舌と全く同じこと言ってますね。去年と同様の猛抗議を菅総理にもしたいと思います。

仙石氏も秋葉市長が求めた非核三原則の法制化は必要ないと否定しましたが、菅総理の私的諮問機関は非核三原則の見直しを言い出してるし、政府は非核三原則を破って核を持ち込んだアメリカや核密約を締結した前政権の責任を見ないふりしているのです。そんな政府に「非核三原則は堅持されているから法制化の必要なし」なんていわれたって、信頼できるわけがありません。政府の態度を見ていれば、今に非核三原則を崩したいから法制化しないのだろうと勘ぐりたくなります。

式典に出席した潘基文国連事務総長は「自分が生きているうちに核廃絶を実現したい」と述べ、早くも「包括的核実験禁止条約（ＣＴＢＴ）の２０１２年の発効」という具体的な行動の指針を打ち出しています。
それに比べ、被爆国政府のこの後ろ向きかげんはどうでしょう。
非核三原則の法制化もしなければ核の傘の見直しもしない。核廃絶に向けて新たに何も行動しようとはしないのです。
「被爆者に会えることを非常に光栄に思う。被爆者は一日一日老いている。一日も早い核廃絶が被爆者の夢であり、私はその実現をお手伝いしたい」という熱意溢れる潘国連総長の言葉は、本当なら我が国の総理から聞かれなくてはならない言葉のはずです。

原爆の唯一の被害者である我が国は、核を廃絶せよと要求する権利と義務を最も強く持っています。
なのにこの国の政府はその権利行使の足を引っ張り、義務をおろそかにして、一瞬にして何万という自国民を殺した加害者の悪魔の武器にすり寄りつづけて65年がたちました。
本当に情けなく思います。毎年式典で聞く総理の言葉ほど虚しいものはありません。
被爆者の方々は毎年式典の度に無念を味わっているのではないかと想像します。

今年は初めてアメリカのルース大使が出席し、「未来の世代のために、私たちは核兵器のない世界の実現を目指し、今後も協力していかなければならない」「（日本とアメリカは）核兵器のない世界というオバマ米大統領の構想を推進する目標も共有している」 と言いました。
この発言は核の傘＝日米安保を見直す交渉の第一歩を踏み出すことができるチャンスだと思うのですが・・・やらないんですよねぇ。

いい加減言い飽きてきましたが再度言いましょう、現政府はこれまでの自民党政府と何も変わりません。去年も書きましたが、こんな後ろ向きの総理にはいっそのこと式典への出席を断って抗議の意を表したらどうかと思うくらいです。



●ルース大使には次のように言いたいです。
今も昔も兵士になったらまっ先に仕込まれることは、人間らしい心を捨てることだと聞きます。相手も同じ人間だと感じたら無慈悲に殺すことはできなくなるからです。
それは原爆を投下した兵士も、今もアフガニスタンで女子どもを殺している兵士も同じです。

オバマ大統領がプラハで核廃絶を言い出した動機の一つとして、世界を何度も絶滅させるだけの核を保持するコストがかかりすぎること、核がテロリストのてに渡ったらどうしようもないことがあると言われています。
動機やきっかけがなんであれ、核廃絶に向けて努力すること自体は大歓迎です。
しかし核が無くなっても、無人戦闘機で良心の痛みを感じることなくイラクやアフガンの市民を殺し続けるのであれば、核が無くなったと喜んでばかりもいられません。

核廃絶は歴史的な偉大な転換点ですがゴールではない、ゴールはもっと先にある、反核と反戦は同じ線上にあるのだと私は確信しています。
広島で核廃絶への努力を述べることは、アメリカが仕掛けたこれらの侵略戦争をやめる誓いをすることでもあるのだと思います。

もう一つ。
池田香代子さんはブログで「第二次世界大戦のすべての犠牲者に敬意を表するため出席する」という表現に強烈な違和感を覚えると書いてらっしゃいました。私も同じです。
自分たちが殺しておいて「敬意を表する」とは何事かと思います。
これ、加害者も被害者もいわば「英霊」として一緒くたにして加害者の犯罪性をぼかす典型的な「加害者の論理」ではないでしょうか。
もしイラク戦争、アフガン戦争が完全終結し何年かたった後にアメリカはこういうのでしょうか。「イラク戦争、アフガン戦争のすべての犠牲者に敬意を表する」と。侵略し強姦し虐殺した兵士とその被害者を一緒くたに並べて「敬意を表する」と。

アメリカという国家が言葉を発するのなら（←この部分補足）「敬意を表する」ではなく「謝罪する」とはっきり言うべきです。
世界で最もたくさんの核を持ち世界でただ一つ原爆を使用した国が核廃絶へ言及したのは注目に値しますが、まだ「本気」だとは信じることができません。
ドイツがホロコーストの罪を謝罪したように原爆の過ちをハッキリ認め謝罪することです。そうすればアメリカは核廃絶へ向けて本気で第一歩を踏み出したのだと評価できるのではないでしょうか。

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