今週は人権週間です。
法務省は人権週間に際し
平成29年度啓発活動強調事項の中で、「外国人の人権を尊重しよう」という項目をあげているので、最近の外国人の人権に関してゆゆしき事件をピックアップしてみます。
◇ひとつめは「外国人実習制度」で日本に働きに来ている外国人の扱いです
日本の過酷なブラック企業では底辺労働者がこういう劣悪な労働を強いられていますが、外国人実習生ともなると更に酷いです。借金に縛られてやめようにもやめられないのですから。
実習生は仲介業者を介して日本に来るのですが、そのとき仲介業者にビザ(査証)やパスポートなどの各種の関連手続き費用、飛行機料金、手数料、(失踪防止などを名目とした高額の保証金)などを支払わねばなりません。当然、高額で支払えないので借金を背負わされ、日本に来て働き始めてから返済していくことになります。
しかし日本では最低賃金にも満たない低賃金であることが多く、その上不当な経費天引きもあったりしてなかなか借金が返せず、祖国に帰りたくても帰れないのです。
かつての「身売り」を思い出させますね
(こちらを参考にどうぞ→●
<ルポ>「外国人技能実習生ビジネス」と送り出し地ベトナムの悲鳴(4)借金に縛られた実習生を生む構造)
もう一つニュースを。
●元外国人実習生が火だるまに… 異常な事件の中で起きた、さらに「あり得ない」事態
http://www.huffingtonpost.jp/2017/12/07/weird-weird_a_23299834/
元・外国人技能実習生で中国籍男性の柳さん(32)が、仕事中に同僚から燃料を浴びせられ、火を付けられて全身やけどを負ったとして、同僚(54)と雇い主の建設業者を相手どって、約9000万円の損害賠償を求める裁判を12月7日、東京地裁に起こした。
経緯
柳さんの弁護団によると、柳さんは2014年4月、外国人技能実習生として来日した。
当初は千葉の農家で働いていたが、「賃金」が非常に安く、差別的だと感じるようになった。さらに職場で「日本語が下手だ」などといじめを受けた。
そこで、柳さんは2016年7月、逃げるように職場を去り、自ら転職先を探し出して、茨城県の建設会社に就職した。
事件が起きたのは、この建設会社でだった。
訴状によると、柳さんは2017年5月11日朝8時ごろ、草刈り作業の現場で、前日に工具を片付けなかった同僚について「バカ」とつぶやいた。すると、その言葉を聞きとがめた別の同僚と言い争いになった。
これが、今回の裁判の相手方となる男性だ。
この同僚は、午前10時からの休憩時間に突如、怒りを爆発させた。柳さんは地面に座っていたところを蹴りつけられ、さらにヘルメットで頭を2回叩かれた。柳さんは驚いて後ずさりしたが、相手はさらに怒鳴りながら距離を詰めてきた。
どんどんエスカレートした相手は、草刈り機用の燃料が入った、20リットルの缶を持ち上げ、「バカってなんだ」と言いながら、燃料を柳さんに浴びせかけた。
さらに、相手は別の燃料携行缶(4〜5リットル入る小型のもの)を車から取ってくると、その中のガソリンを柳さんにかけ、ついに、左手に持っていたライターで火を付けた。
火は一気に燃え上がり、柳さんは2カ月も入院する大やけどを負った。いまも、からだのあちこちがケロイド状になり、首が自由に動かず、腕も上がらない状態。このままでは、働くこともできないという。
柳さん側の主張は、大まかにいうとこのような内容で、今回の裁判は、この大やけどをさせた責任を問うものだ。
示談金
ただ、柳さんは今年7月3日、すでに元同僚から示談金400万円を受け取っている。それで解決済みではないのか?
柳さんの代理人・川上資人弁護士は、その示談金は直接ケガをさせたことに対してのみ払われたものだと説明する。働けなかったことで生じた損害や現状で残っている深刻な後遺症など、「当時想定できなかったものは示談の対象でなかった」という主張だ。
柳さんのサポートをしている、中国の弁護士資格を持つ張玉人さんは「元研修生は、当時、説明を十分に受けられていないまま示談書にサインしてしまった」と語った。
異常な事態とは?
さて、ガソリンを浴びせられ、大やけどを負った——。
これだけでも十分に「異常」な事件だが、事件の「異常さ」はそれにとどまらない。
この同僚は、事件翌月の2017年6月に「暴行罪」で起訴され、水戸地裁下妻支部で懲役1年6カ月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。
「暴行罪」(2年以下の懲役 または 30万円以下の罰金)である。
相手に大ケガをさせたなら、普通は「傷害罪」(15年以下の懲役 または 50万円以下の罰金)のはずだ。いまも後遺症の残る明らかな大やけどなのに、なぜ......。
川上弁護士によると、それは、この同僚が「ライターで着火はしていない。勝手に火が付いた」と主張し、検察も「着火の事実までは認定できない」と判断したからだという。
暴行罪は、人にケガをさせないような場合でも成立する。つまり今回有罪になった原因は、ざっくり言えば「ガソリンをかけた」というところまでなのだ。
勝手に火がついた?
同じく元研修生の代理人・指宿昭一弁護士は「勝手に火がついたというのは、どう考えても不合理。あり得ない話」と、憤りを隠さない。
「本件は極めて異常です。ガソリンをかけて、ライターで火をつけたのなら、普通だったら傷害罪、あるいは、生命の危険がある行為ですから、殺人未遂で起訴してもおかしくない事件です。それが、同僚の男性は、傷害罪どころか『暴行罪』で起訴され、執行猶予まで付きました」
指宿弁護士によると、この同僚は刑事裁判で、ガソリンをかけたところまでは認めている。そして、左手にライターを持っていたことも認めている。その状態で近づくのを見た同僚もいる。しかし、「火を付けた瞬間」だけは、被害者以外の目撃証言がないのだという。
地裁判決は確定している。つまり、刑事事件としては、すでに終わってしまっている。この点はもう、どうしようもない話だが......。
「なんともやるせない話だ」と指宿弁護士は語る。
たしかに刑事裁判には「疑わしきは被告人の利益に」という重要なルールがある。しかし、実態はかなり被告人に相当有利な事情があっても、それが裁判所に認められないことが少なくない。そんな中で、今回のようなケースで、なぜ。それが、やりきれなさの背景だ。
柳さんも、この判決について「全く納得がいかない」と話しているそうだ。示談金の支払いはあったものの、同僚からは謝罪がない。さらに、同僚は、燃え上がった火を消すための救助活動にも、一切手を貸さなかった......。こうしたことで、今も大きな精神的な損害を受けている、という。
こういったことが、柳さんに裁判を決意させた。
「外国人技能実習生」とは
今回の事件がおきた遠因のひとつとして、触れておかなければならないのが「外国人技能実習」という制度だ。
この制度は、技術を学ぶために外国人が日本に来る、というのが建前だ。だが、実態は違う。研修生たちは「低賃金労働者」として扱われている。研修生の中には、最低賃金も何もない環境で長時間労働を強いられ、逃げ出す人も少なくない。柳さんも、そうした状況下、逃げ出して建設会社に就職した。
制度上、外国人研修生に好きなところで働く自由はない。逃げ出して他の会社に就職した元研修生の行為は「ルール違反」だ。そのため、柳さんは「不法滞在者」として、いま入管施設に収容されている。
柳さんの弁護士たちによると、入管施設では十分な治療が受けられていない。そのため、柳さんの面倒を見てくれる人が見つかった段階で、「仮放免」を申請する予定だという。
この事件の背景には、こうした境遇の「外国人」に対する、冷たい視線が見え隠れする。
柳さんが最初にいた千葉の農家から逃げ出したのは、日本語が不自由だとしていじめられたことも一因だ。裁判の相手方となっている同僚は、他の職場の人たちについては「さん付け」で呼ぶのに、柳さんのことだけは「リュウ」と呼び捨てにしていたという。
暴行罪での起訴についても、柳さんの弁護士たちは「あり得ない」「おかしい」と口々に語る。
「もし、これが日本人同士の事件だったら、同じようになっていたでしょうか......」
指宿弁護士は、やるせなさそうに、そうつぶやいていた。
これ、通常なら検察は殺人未遂で起訴する案件でしょう。相手が中国人の低賃金労働者だったからこんな微罪での起訴になったとしか思えません、明らかに差別です。
外国人実習制度は、「外国人に日本の技術を学んでもらい、それを祖国に持ち帰ってもらうという国際貢献する」というのが建前ですが、実際には安価な使い捨て労働力の確保の手段です。
祖国では習得が難しいような技能を学ばせるのが目的とされているので単純労働に就労させることは一応禁止されていますが、実習生がどのような技術を学んで帰国後どのように生かしたかという調査は行われていないので、技術習得などさせなくても咎められません。ですから実際には単純労働に就かせることが多いです。
また、一定程度の技能習得のためという名目で「移籍(職場移転)の自由」が認められないため、劣悪な労働環境であっても職場を変わることができず、人権侵害に耐えるしかありません。その結果実習生の失踪や不法滞在が起きます。
居住場所はたこ部屋だったり、違法な給料天引きがあったり、劣悪な労働環境、暴力、長時間労働にさらされ、過労死も少なくありません。
米国務省や国連人権規約委員会は外国人実習制度を、奴隷、人身売買、強制労働だと厳しく批判し、改善を勧告しています。
(
●国連自由権規約委員会は日本政府に何を求めたか 2014/7/30)
つまり日本は外国人(主にアジア人)の人身売買、強制労働を法制度化している国だとみなされているのですね
それなのに安倍内閣は昨年、実習生の受け入れ機関の最長年数を3年から5年に延ばし、受け入れ人数も増加するよう制度を改正(改悪)、日本のブラック企業が酷使できる安価な労働力をもっと仕入れることができるようにしたのです。
反省ゼロ
そして今度はブラックバイトの代名詞にもなってるコンビニ業務にも従事できるようにさせろと業界が要請しています。
日本に対しこうなるのも当然。
これでも報復を怖れて回答しなかった実習生がけっこういます
外国人実習制度については以前こちらのエントリーでも触れています
●
外国人技能実習制度という奴隷制度に見られる日本人のアジア人差別と、外国人に日本を絶賛させる日本人の自己愛日本は敗戦まで韓国人中国人を徴用して過酷な強制労働を強いましたが、今もそのころと基本的にアジア人蔑視のマインドは変わっていないと言わざるを得ません。
私たちの社会は、再び外国人の強制労働という人権侵害を構造的に組み込んで回る社会に逆戻りしているのだということを忘れてはいけません
◇二つ目は入管(入国管理局収容施設)です。
柳さんのように外国人実習生として日本に来たものの劣悪な労働から逃げ、不法滞在となってしまった人たちもこの恐ろしい場所に収容されます
ここでは職員による日常的な暴行 病気の放置、薬の過剰投与などで、考えられないほどの頻度で死亡事件がおきています。
日本の入管は、外国人実習制度と並んで国連人権規約委員会から厳しく批判され改善を勧告されている「強制収容所」なのです。
入管の実態については下記の本がおすすめです
「密室の人権侵害 入国管理局収容施設の実態」 入管問題調査会編
そのうちこのほんのレビューを書きたいな、と思ってはいますが、とりあえずお時間のない方はこちらをさっと一読されても良いかと思います
↓
●元入管職員の証言 http://hwm5.gyao.ne.jp/tabunka/nyukan/cell/cell04.htm最近の死亡事件はこれです
●入管収容中のベトナム人死亡 頭痛訴えるも専門検査なし
2017年12月5日11時09分
http://www.asahi.com/articles/ASKD45CXYKD4UTIL04Q.html
法務省入国管理局は4日、退去強制処分を受けて東日本入国管理センター(茨城県牛久市)に収容中のベトナム人男性(当時47)が今年3月、くも膜下出血で死亡した際に、1週間前から体調不良を訴えていたのに、外部の病院で専門的な検査を受けさせていなかった、と明らかにした。同省の調査報告書は「センターの対応に過失はなかった」と結論づけたが、今後、収容施設と医療機関との連携などを強化する方針だ。
報告書によると、男性はセンターに入った2日後の3月18日夜から頭痛を訴えた。意識がもうろうとし、失禁するなどの症状も職員が確認。同月21日にセンター内で非常勤医師の診察を受けたところ、「筋緊張性頭痛」と診断され、頭痛薬を処方された。その後も頭痛を訴え、同25日未明、職員の呼びかけに反応がなく、外部の病院で死亡が確認された。
報告書で、外部の脳神経外科医は、「頭痛の訴えを受けた段階で専門的な検査をすれば、くも膜下出血を確認できた」と指摘。だが、薬の服用で一時回復したことなどから、報告書は「重篤な病気と認識するのは難しかった」と結論づけた。同局は「事実を重く受け止め、医療体制を整えていきたい」としている。
同局によると、収容施設は全国に計17カ所あり、1500人弱が収容されている。常勤医師は現在、東日本入国管理センターの1人だけで、他は非常勤医師が診察などをしている。(小松隆次郎)
ところで、入管の管轄は「人権週間」を実施している法務省です。
法務省は「人権」などと、一体どの口が。
そして、いっこうに入管の人権侵害が改善されないのは、他人の、特に外国人の「(それもオーバーステイの)についての関心が薄く、人権侵害があろうが無かろうが関係ないと思っていることも後押ししてるのではないでしょうか
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