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2009年09月28日
セカイカメラが公開されて秋葉原で歴史的事件発生?
iPhone用にセカイカメラという注目度の高いアプリが公開されたのをきっかけに、秋葉原でちょっとしたリアルとバーチャル混濁の特異な現象が起きつつある。
セカイカメラはAR=拡張現実という新しいジャンルのテクノロジーを利用したアプリで、iPhoneのカメラでその場所をかざすと、GPSやコンパス情報などを利用してリアルタイムに現実の映像へランドマーク情報やユーザーが書き込んだテキスト、写真などを合成表示してくれるもの。つまりリアル(現実)の情報とネット上のバーチャルな情報を映像で合成表示してくれるもので、たとえばお店の位置やその場所のおすすめの食べ物や待ち合わせ情報などが表示できる。
iPhoneのカメラで現実世界をのぞくと、別のデータレイヤーと合成された新しい別の世界が見える。最近のアニメで言えば、電脳コイル、東のエデンなどの世界がそのままやってきたような感じだ。
初の本格的なARアプリと言うことで、日本全国のiPhoneユーザーがこぞって試し始め、中でもやはり秋葉原は活発な展開に。公開されて数日というのに、まだほかでは起きていない現象までが起き始めている。
このセカイカメラを使い、たとえば秋葉原駅からカメラをかざして見回すと、「ラオックス」「UDX」「ヨドバシカメラ」などのランドマークを表示するほか、その場所で誰かが書き込んだ「ここの○○は食べてみるべき」とか「秋葉原にやってきた!」といった情報が見える。空中にぷかぷか浮いているような吹き出し表示になっているため、それらをエアタグと呼ぶ。このエアタグは基本的に誰でも書き込めるため、バーチャル側がどんな世界になるかはユーザー次第。その土地・場所特有の有意なデータが集まれば面白くなるが、誹謗中傷やいたずらに使われる危険性もある。
秋葉原でも公開初日の9月24日(水)はさほどエアタグはつけられなかったが、それでもヨドバシカメラや駅周辺にはその場所の写真や挨拶を投稿したもの、中には「秋葉原愛してる!」といったエアタグもつけられているのが確認できた。
反応が加速したのは2日目から。ユーザが書き込んだエアタグの数が急増、特にリナックスカフェの前を中心に「姉ヶ崎...」と表示されるエアタグが秋葉原中のあちこちで大量に書き込まれ、場所によっては画面がそのエアタグで埋め尽くされるほど。このエアタグの中身は「姉ヶ崎寧々参上!」「姉ヶ崎寧々りなかふぇなう!」などというテキスト。姉ヶ崎寧々というのは、現在大流行しているニンテンドーDS用恋愛シミュレーションソフト「ラブプラス」に出てくる少女キャラクターの名前。ある人物ががいたずらで大量に書き込んだものとみられる。
そのおびただしい数のためにほかのエアタグが隠れてしまい、ARで恐れられていた“エアタグテロ”“エアタグ汚染”が起こってしまったことに。もっとも、誰かを傷つけるものではないし、ゲームの中の女性キャラクターの名前で秋葉原中が埋まるというあたりは、いかにもオタクの街らしい展開とも言える。
その後、「姉ヶ崎..」タグのほかに、着々と飲食店系のエアタグなどが書き込まれ、例えば牛丼サンボには「サンボ行きたいなーっ(><)携帯電話の電源をOFFしておかないと、マダムに怒られちゃうよっ(^^)」と、同店を知っている人ならにやりとしてしまうエアタグも。また、PCパーツショップ上にもいくつかショップ紹介のエアタグが埋め込まれているのが確認できた。
そして、さらに面白いのがここから。「姉ヶ崎..」のエアタグテロがあまりにもインパクトが強かったため、情報感度の高い一部のPCパーツショップがこれに反応、透明シート上に緑の吹き出しと「姉ヶ崎..」と書いたエアタグを現実に再現し、それを店先に張り出したのだ。これはまさしくバーチャルからリアルへの逆流現象。バーチャル側ではエアタグテロ、それを見てリアル側が面白がって現実に再現するという、おそらく世界中でもまだ起きていないARを介したデータの逆流現象だ。これがアプリ公開から4日目の出来事。リアルエアタグを実現したショップはTSUKUMO eX.とパソコンショップArkで、ほかのショップもこの動きに乗ろうという動きもある。これらの動きは弊誌がいち早くTwitter上で速報しており、そのたびに反響が広がり、こうした動きに拍車をかけた面がある。現実にエアタグを再現したショップもTwitterに参加しているところで、最新のテクノロジーとメディアに関わっているところがいち早く体験し、それを面白がって広めているというわけだ。
セカイカメラはまだ公開して1週間に満たないが、先進的な秋葉原の中ではもうほかでは起きていないようなことが次々と起き始めている。秋葉原ならではのイベント、お買い得情報や、ゲームに使われるなどの新しい使い方、また想定していない出来事がまた起きる可能性があり、これは要注目だ。
なお、セカイカメラのエアタグはランドマーク以外はデフォルトで半径150mの最新1週間に書き込まれたエアタグを表示する、というフィルタ設定になっているため、いずれいたずらのエアタグもほとんどみえなくなる。
新しいARというジャンルが秋葉原がどう料理していくのかこれからがみもの。今後も弊誌ではTwitterのアカウント@watch_akibaで動きを随時速報していくので、気になる人はこちらでチェックしておいてほしい。
ARを利用したコンシューマー向け製品としては、すでに1年前、WebカメラとPCを使って画面上で少女キャラクターを動かし、指でくすぐると反応して動いたりする“電脳フィギュア”「ARis(アリス)」が発売になり、話題になったことがある。
□頓智・ 「セカイカメラ」
http://support.sekaicamera.com/
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http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20081018/etc_alice.html
iPhone向け拡張現実(AR)アプリ「セカイカメラ」配信(BB Watch)
http://bb.watch.impress.co.jp/docs/news/20090924_317426.html
ケータイ用語の基礎知識 拡張現実(AR) とは (BB Watch)
http://k-tai.impress.co.jp/docs/column/keyword/20090728_305346.html