ラッチョ・ドローム


奇想天外映画祭にて観賞、1993年フランス、トニー・ガトリフが自らのルーツであるロマの旅の歴史を一本の映画に収めたミュージカル。熱いけど滑らかな中にすっと飲み込まれる。

風と動物に装飾品、「砂漠の果てにお嫁に行くのは辛い」といったような歌と共に一行がインドの砂漠をゆくのに始まり、女(達)が「夕暮れ時には飼われている犬が羨ましい」と歌いながらスペインの丘を見下ろすのに終わる(道中彼らの連れている犬が飼い犬らに吠えられる場面があり、犬は人間と同じ立場に置かれているんだと思う)。前者の後の結婚式の場面で「君のために魅惑的なベッドを準備した」と歌う新郎?のあまりにこなれた身振り手振りに、こういうものを皆どうやって身に付けていくのかと思っていたら、少年が弦が一本きりの楽器(手作り?)を手に少女は布のベルトを腰に部屋の中の大人達の真似をする場面に至り、全体とまた違う進度の時間が見えてくる。楽器の方をやりたい女子はどうするものかと考える。そして終盤気付いたことに出演しているのは殆ど音楽家なのだから、熟練しているわけだ。

少年はチャウシェスクよ、よくもルーマニアをずたずたにしてくれたなと老人が歌う(弦を引っ張って演奏する楽器を初めて見たかもしれない)『独裁者のバラード』を聞き、革命広場で兄貴分?とパンを食べる。少女は渡ってゆく鳥を列車から見ながら、大人の女性と「私達はどこへ行っても嫌われる」と歌う。その後に着いたハンガリーの駅で一行が暖を取っていると、家を出でもするのか悲しんでいる母親のためにと地元の坊やが金貨を手に演奏を依頼してくる。それこそ『ハンサム・ガイズ』のように仲間を下から煽った子ども目線の「恐ろしい」画のあと、一人が金貨を坊やのポケットに返して皆は歌い踊る。道具と楽器は同じようだがここでは水差しやスプーンが打楽器に使われ、これらは専用なのかもしれないが、そういえば少年はどこだったかで大人を見ながら掃除の束子めいたものを叩いていたなと思い出した。