孤高の国産日本語入力「ATOK」が実質2倍値上げ 米マイクロソフトやグーグルへの勝算

代表的な日本語入力システム。(左から)マイクロソフトIME、ATOK、グーグル日本語入力
代表的な日本語入力システム。(左から)マイクロソフトIME、ATOK、グーグル日本語入力

ジャストシステムのパソコン・スマートフォン用日本語入力システム「ATOK(エイトック)」の低額プランが廃止されることが、11月に発表された。現在、月額330円の低額プランを利用しているユーザーの場合、来年2月から支払額が2倍になる。長年の愛用者も多いATOKだが、基本ソフトのウィンドウズに標準搭載されている「マイクロソフトIME」や、無料の「グーグル日本語入力」といった米巨大IT企業によるライバルが立ちはだかる。だが、日本語にこだわり続けてきた国産ソフトとして、「正確性」と「表現力」で対抗していくという。

突然の発表に困惑も

ジャストシステムは11月25日、月額330円のベーシックと、より高機能で月額660円または年額7920円のプレミアムの2本立てだった「ATOK Passport」を統合し、プレミアムに一本化すると発表した。現在、ベーシックで契約している人は、来年1月8日に自動的にプレミアムへ移行し、2月分から新料金が適用されることになる。

併せて、機能の強化も発表。生成AI(人工知能)を活用した文章作成アシスタントが搭載され、AIが個々のユーザーの入力傾向を学習しながら、文章の推敲や要約、書き換えなどをサポートするという。

ただ、一般のユーザーにはベーシックで契約していた人も多いとみられ、発表後、ネット上では困惑の声が相次いだ。ジャストシステムは「機能の強化を行い、その価値に見合うよう商品のラインアップを見直した」としている。

「じいれんりつ」→「自維連立」

ジャストシステムはプログラマーの浮川和宣さん、初子さん夫妻がパソコン黎明期の昭和54年、徳島市で創業した。57年にATOKの前身となる「KTIS」を発表。3年後には日本語ワープロソフトの草分けとなる「一太郎」を発売し、大ヒットした。

一太郎が言葉を職業とする作家やライター、大量の文書を作成する官公庁を中心に高く評価されたのは、縦書き文書やルビへの対応を含めた国産ソフトならではの使い勝手のよさと、入力効率を大きく左右する変換精度の高さだった。後者の核となっていたのがATOKで、後に単独のソフトとして販売され、一太郎を上回るヒット商品となった。

変換精度を支える辞書は今も常に更新され、「じいれんりつ」は「辞意連立」や「爺連立」と誤変換されることなく「自維連立」に変換。今年の新語・流行語大賞の候補となった「ぬい活」や、青森県東方沖を震源として12月8日に発生した地震で注目された「後発地震注意情報」にも、対応済みだという。

単なる入力の道具ではなく

一方でジャストシステムには一太郎をめぐり、苦い過去がある。きっかけとなったのは、平成7年のマイクロソフトによるウィンドウズ95発売。その後、ウィンドウズがシェアを高めるにつれ、同じマイクロソフトのワープロソフト「WORD(ワード)」に市場を奪われていった。

同様に日本語入力の分野でも、ウィンドウズパソコンにはマイクロソフトIMEが標準搭載されている。さらには検索で圧倒的なシェアを持つグーグルが開発したグーグル日本語入力は、無料でダウンロードすることができる。ATOKも一太郎と同じ道をたどっていく恐れはないのだろうか。

だがATOKが目指すものは競合ソフトとは異なり、単なる「文書を入力するための道具」ではないという。ジャストシステムは「ユーザーの方々それぞれの頭の中にある思考を、個性に応じた自分らしい言葉で表現すること。生成AIの活用で、ATOKはそうした体験ができるソフトに近づいた」と自信をのぞかせている。(福富正大)

9割が生成AIを業務に利用「文書作成・要約」が95% 109社アンケート

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