クマの人的被害対策として、警察官のライフル銃による駆除を可能とする運用が13日始まった。市民生活へのさらなる影響を防ぐため、緊急性の高い措置に踏み切った背景には深刻なハンター不足という現実もある。自治体が駆除専門の公務員として雇う「ガバメントハンター」は、その切り札として注目を集めるが、専門家は制度上の課題を指摘する。
有害鳥獣として駆除されるシカやイノシシは、自治体から許可を受けたハンターが捕獲するケースが大半だ。ハンターの多くは各地の猟友会に所属し、捕獲に成功すると、1頭につき数万円の報奨金が支払われることもある。
現行の狩猟免許制度は、愛好家が趣味で狩猟を楽しむことを想定し、銃やわなを安全かつ適法に扱えるよう導入された経緯がある。そのため、獣害対策に必要な基礎知識は、免許試験ではほとんど問われない。
環境省によると、ライフル銃や散弾銃を扱える「第1種銃猟免許」の所持者は、昭和50年度に約49万3700人だったが、令和2年度には約9万人にまで減少。免許保有者の約6割を60歳以上が占める。
近年、拡大傾向にあるクマ被害対策として、今年9月からは自治体の判断で市街地での銃猟を可能とする「緊急銃猟制度」がスタート。既に仙台市や札幌市、秋田県横手市などで実施されたが、ハンターや専門人材の確保が課題として早くも浮かび上がった。
鳥獣政策に詳しい岐阜大の鈴木正嗣教授は「クマの個体数が増えた原因をハンターの減少に結びつけるのは短絡的だが、そもそも公的な鳥獣対策を個人の趣味としての狩猟で培われた手法や経験に頼る発想には無理がある」と話す。
自身も狩猟免許を持つ鈴木氏が提言するのは、駆除や捕獲、個体数管理までを一手に担う獣害対策のプロを育成し、将来にわたって担い手を確保できる仕組み作りだ。
「公務員」という身分や待遇を保障するガバメントハンターは対策の一つにはなり得るが、既に狩猟免許を持つ民間人を非常勤職員とする「鳥獣被害対策実施隊」の制度を採用した自治体も多く、隊員数は全国で4千人を超える。
ただ、鈴木氏によれば、「この制度に採用試験があるわけでもなく、必ずしも知識や技能の質を担保できるものではない」と指摘。「クマ対策を担うハンターに求められるのは、撃った地点でクマの動きを止め、その後の探索を不要とする『即時無力化』と呼ばれる技量。現状ではこうした技能を確かめたり、学んだりする場もない」
その上で「公務員ハンターを増やせば即解決というのはあまりに楽観すぎる。将来を見据え、専門家を育成する教育システムの構築や、人材確保の環境整備といった持続可能な対策こそが何より重要だ」と訴える。(白岩賢太)



