メローニ伊政権、外国労働者50万人誘致で混乱 それでも止まらぬ過疎 受け入れ「無理」

人通りのないバラディリ村の中心部(10月28日、三井美奈撮影)
人通りのないバラディリ村の中心部(10月28日、三井美奈撮影)

先進国で日本に次いで高齢化が進むイタリアが、3年間で約50万人の外国人労働者を誘致する計画を進めている。メローニ政権は「不法移民排除」を掲げて国民の不安に応えつつ、移民を人手不足の切り札にすることを狙う。だが、人口減少が著しい西部サルデーニャ州を訪ねると、政府の思惑と現実のズレが浮き彫りになっていた。

移住者に440万円

サルデーニャ州は、地中海のリゾート島。海岸はオーバーツーリズム(観光公害)対策で入場規制が必要なほど混雑する。だが、60キロ内陸にあるバラディリ村は壮絶な過疎に直面していた。

「30年前、村民は120人いました。今は80人。多くは65歳以上です」と村長マリアアンナ・カメダは話す。

州の少子化対策で、村への移住者には2万5千ユーロ(約440万円)を支給。子供が生まれれば毎月600ユーロ(約10万円)の手当が出る。過疎対策でプールやサッカー場も建設された。利用者はなく、閑散としている。

カメダは「家族頼みの高齢者介護はもう限界。それでも、移民を招こうとは思わない」と言う。外国人に言葉を教え、村に溶け込ませる態勢作りは到底無理だと訴える。

壁修繕に2カ月待ち

イタリアの合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供の平均数)は昨年、1・18で日本(1・15)とほぼ同じ。同州は国内最低の0・91で、156万人の人口は2080年には85万人になると予測される。

島は高齢化と貧困が同時進行する。州都カリャリの観光地でも作業が止まった建築現場が目立つ。州内には、米欧人を呼び込もうと「移住者には1ユーロ(約178円)で住宅売ります」と宣伝する自治体もある。

海岸沿いのある町の住民は「近所の住宅は独仏の投資家が買っている。民泊への転用も多い」と話す。実際に移住する人は退職者が多く、地元の人手不足の解消にはつながらない。「壁の修繕を業者に頼んだら、作業員が来るまで2カ月かかった。彼は61歳で、『もうすぐ退職する』と言われた」と現状を語った。

縦割り行政で大混乱

外国人約50万人の誘致制度は、23年に始まった。欧州連合(EU)域外の労働者が対象で、建築や農業、観光、介護など人手不足の産業に限られる。希望者には指定日にオンライン申請してもらい、企業とのマッチングで雇用が決まれば労働許可証を出す仕組み。政府は不法就労を取り締まり、正規雇用の道を広げることで「移民管理を徹底する」と訴えた。

ところが、制度は大混乱。縦割り行政の弊害で、入国しても滞在許可証が出ないなどのトラブルが続出した。民間団体の調査によると、この制度では毎回、定員の5~6倍の応募があるが、就労に至るのは定員の約1割。「かえって不法滞在者を増やしている」という批判が出た。

移民に高額の手数料を課す闇ビジネスも横行。首相メローニが「私が悪徳業者を検察に告発した」と宣言し、騒動の沈静化に努めたほどだ。サルデーニャは零細業者が多く、産業団体は「多くの企業は制度の枠外にある」と慎重な姿勢をとる。

大都市目指す移民

島は、北アフリカから欧州を目指す移民船の漂着地でもある。だが、黒人やアラブ系労働者の姿を見ることはあまりない。難民支援団体SAIの職員エリザベタ・ラジオは「みんな仕事や仲間を求めて都会に行きたがる。地方に定住したがらないのです」と話す。

首都ローマや商都ミラノでは移民が固まって住み、独自の共同体を作るようになった。それが国民の不安を高める一因になっている。ラジオは「移民の統合は、地方都市の方がうまくいく。トラブルが生じても、少人数なら住民とじっくり話し合い、相互理解ができるからだ」という。現実には、バラディリのように異文化受け入れに尻込みする自治体が多い。イタリアは毎年約1万人を難民として保護対象にしている。

高度人材よりマンパワー

イタリアの不法移民は推計約32万人。闇就労は、政府にとって頭の痛い課題でもある。昨年夏には、農作業中のインド人男性が腕を切断する大けがをし、雇用者に路上に放置されて死亡する事件が発覚。「現代の奴隷」と波紋を広げた。

カリャリ大教授ピエラ・ロイは政府の移民政策について「外国から新たに人材を招くより、不法就労者に正規雇用の道を与え、社会統合の努力をした方が現実的だ」と訴える。

メローニ政権は、混乱する制度の見直しに言及しながら、移民労働者を誘致する方針を変えていない。10月、26~28年の3年間で新たに約50万人を受け入れる計画を政令で公布した。=敬称略(伊西部カリャリ 三井美奈)

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