韓国旅行でグーグルマップが「使えない」、その背景にある理由とは

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朝鮮半島を南北に分ける軍事境界線上にある非武装地帯(DMZ)=2024年8月/Soeren Stache/picture alliance/dpa/Getty Images

朝鮮半島を南北に分ける軍事境界線上にある非武装地帯(DMZ)=2024年8月/Soeren Stache/picture alliance/dpa/Getty Images

カカオとネイバーも公の場で、グーグルマップのデータ使用に反対してきた。アン氏によれば、両社はその理由として、税金を払って国内ルールに従っている韓国企業にとって不公平だと主張している。

この意見に同調する声は多い。韓国の地理情報を扱う国内239社を対象にした最近の調査では、90%がグーグルに地図データを渡すことに反対し、売り上げへの悪影響や雇用喪失の恐れがあるためと述べていた。

地図アプリ「カカオマップ」の画面/CNN
地図アプリ「カカオマップ」の画面/CNN

アン氏はさらに、韓国側にはグーグルの要請に応じるインセンティブがないと説明。経済が大きく後押しされるわけでもなく、住民はもともとカカオやネイバーのアプリを使っているため国民の需要があるわけでもないと述べた。旅行者への影響も、ほかの懸念材料に比べれば無視できる程度と考えられる。

一方グーグルにとっては、韓国の地図が大きな価値を持つかもしれない。

データへの懸念

韓国の人口は約5100万人。そのほとんどがスマートフォンを持ち、大量のデジタル・フットプリント(インターネット上の活動記録)を残している。グーグルがそこに参入すれば、地図データをほかの目的に使って利益を上げることも可能になる。

たとえばグーグルが、韓国の地図アプリを使っている現地の民泊仲介大手「Airbnb(エアビーアンドビー)」や配車サービス大手「Uber(ウーバー)」に取って代わることもあり得る。グーグルの登場で、韓国の地図アプリに依存するアプリの数は減少するかもしれない。

その結果、ユーザーの移動やオンラインサービス利用に関する大量のデータがグーグルの手に入ることになる。

「そのレベルでの懸念、つまり地図が地図として使われるだけでなく、ほかのあらゆるサービスの基点になるとの懸念があると思われる」と、マクワイア氏は話す。

英ロンドンを走行するストリートビュー・マッピングカー=2017年/Guy Bell/Alamy Stock Photo
英ロンドンを走行するストリートビュー・マッピングカー=2017年/Guy Bell/Alamy Stock Photo

そもそもグーグルは地図データを本当に必要としているのかという点について、専門家の意見は分かれている。

アン氏もマクワイア氏も、グーグルは韓国の詳細な地図を作ろうとすれば、作れるだけの手段を持っていると主張する。同社はそのコストと労力を回避しようとしている可能性がうかがえる。グーグルは地図とナビの全サービスを提供しているほかの多くの国で、政府に直接データを要求してはいないと、アン氏は指摘する。

これに対してグーグルはCNNに、2万5000分の1の地図では詳細なナビ機能、特に人口密度の高い都市部や、狭い路地での徒歩や自転車の道順表示に必要な精度が得られないと主張した。

グーグルはまた、他国で外部業者から地図データを購入する場合、同社はそのデータが対象国の法律に従っていることを条件付けていると強調した。

今後の見通しは

台湾から年に2~3回韓国を訪れるという旅行者のビビアン・チェン氏は、韓国の地図アプリの英語版を使っているが、翻訳が分かりにくいことも多いと話す。グーグルマップのように徒歩の経路をリアルタイムで案内してくれる機能が見当たらず、住所がうまく翻訳されなくて別のアプリが必要になることもある。

ショッピングセンターや観光名所はすぐに見つかっても、「小さな店の英語名を探すのはとても大変」で、穴場を探索する気にはなれないという。

今後、韓国の通商、外務、国防、情報、内務を担当する省庁の会合で決断が下されれば、状況は一変する可能性がある。

ただしアン氏は、「グーグルが大きく譲歩するか、政府の懸念に対応して協力姿勢を示さない限り、政府側がまた拒否する可能性は非常に高い」との見方を示す。

その一方で、韓国側が貿易問題などで米国から譲歩を引き出すため、戦略的な動きとして要請を認めることも考えられるという。

両国は7月末、米国が韓国からの輸入品に15%の関税を課すことで合意に達したが、詳細については今も交渉が続いている。アン氏は「トランプ現政権の下で、圧力は非常に高まっているはずだと想像がつく」と話す。

グーグルはこれ以外にも、世界各地でトラブルを抱えている。米司法省による反トラスト法(独占禁止法)訴訟もその一例だ。

マクワイア氏によれば、グーグルは長年、無料で善良な公共サービスととらえられてきた。「その考え方が今、変化しつつある。人々の目にはもっとはっきり、ありのままのグーグルが映っている。よく工夫された製品やサービスもつくる巨大企業だが、データ収集力の出しゃばり方は途方もない、そんな正体が見えている」

韓国の念頭にあるのは、政府が来月グーグルの要請を認める決定を下した場合、グーグルが大きな利益を得るという可能性だ。それまでの間、旅行者にとってはややこしい状況が続くだろう。あるいは韓国アプリが大幅に改善されて、使いやすくなるかもしれない。

チェン氏は12月にまた韓国を訪れる予定だが、道順がよく分からないことに「不満といらだちが募り、もう来たくないと思ってしまいそう」だと語った。

チェン氏は「どうしてこんなに不便なのか」と問いかけ、首都ソウルは「こんなに現代的な街なのに、こんなひどい欠点があるなんて」と嘆いていた。

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