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Zon@ Japon 放送雑記



J en E (スペインの中の日本) -5-

**この記事は、日西商業会議所発行の季刊誌「スペイン広報64号 2005年夏季号」に掲載されたものです**


まずは、お知らせ。
『Zona Japón』の放送時間が変わりました。3月から、毎週木曜日の20:30~ 21:00の生放送となっています。また、日本のリスナー向けに深夜の再放送も準備中です。こちらは整い次第このコーナーでもお伝えしますネ。もう1つ、この改編を機に番組のブログも開設しました。オンエア曲や日本の季節の行事の今昔、プレゼント、放送こぼれ話、耳寄り情報などをUPしています。URLはzonajapon.exblog.jpです。

さてさて、本題。
この改編前(1時間枠のうち)にゆっくりたっぷりお話を伺おうと、2月某日『佐伯夕利子さん特別インタビュー』を企画した。佐伯さんは、日本人としては初めて、スペインのサッカー・ナショナルライセンスを獲得、ナショナルリーグ史上初の女性監督として、今シーズンは天下のアトレティコ・デ・マドリッド女子Bの監督を務めている、というドエライお方。1度お会いしたいと以前から目論んでいたのだ。

当日、彼女はアトレティコの赤いスポーツウェアでスタジオに登場した。聞くと、この後車をかっ飛ばして郊外の練習場へ直行すると言う。澄んだまっすぐな視線、ハキハキとした口調、礼儀正しく無駄のない物腰、後ろでキリリと1つに結んだ長い黒髪…。その第一印象に「古き良きサムライ」のイメージが重なった。
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佐伯さんの渡西のきっかけは、お父上の転勤だった。数年いるなら言葉もマスターしなければ!とアカデミーに通うも、思うように上達しない。そこで思いついたのがサッカーだった。「子供の頃から男の子たちに混ざってプレーしていました。ブランクはあったものの、スペイン語が話せるようになりたい、友達がほしいという一心で地元の女子サッカーチームに入団したんです」。ネイティブ同然にスペイン語(しかも生粋のマドリッド弁!)を操る現在の彼女からは、想像もつかない話だ。

「選手としての限界は見えていました。でも、なんとか大好きなこの道で生きていきたい。それには審判か監督だ、と。実はサッカー業界には沢山の仕事があるんですが、18歳の頭にはその2つしか思い浮かばなくて(笑)。審判は自分にはキツすぎる、ならば監督しかない!」と、スペイン生活2年目に入った93年から、彼女はスペインサッカー連盟の監督講座に通い始める。なんでも連盟公認の監督ライセンスには3つのレベルがあるんだそうで、最も上のランクを取得すると、例えばバルサ、果てはスペイン選抜チームまで監督する公の資格ができる。佐伯さんが目指したのはこの最高峰だった。

あまりの極暑に死人も続出した一昨年の地獄の夏、彼女は最後の難関を突破するための国家講座に参加。しかも会場は内陸のバジャドリッド 。ここまで這い上がってきたクラスメート34人は、全員男だった。紅一点、唯一の外国人、しかも日本人という環境で、毎日12時間、うち屋外での授業が10時間、休みは日曜のみという超ハードなコースを受講し、見事一発で選考試験に合格した。勉強を始めてからちょうど10年の歳月が流れていた。

と『さわり』を聞いただけでも、彼女の並外れた根気、努力、才能は推して知るべしなのだが、私は佐伯さんの奥深さ、素晴らしさにインタビューが進むにつれ引き込まれていった。スペースの関係上内容は省略せざるを得ないが、まず感心したのは、その頭の回転の速さと話の組み立ての上手さ。どんな質問にも例のマドリッド弁で、長すぎず短すぎない的を得た答えが返ってくる。全部アドリブでだ!こんな邦人ゲストは後にも先にも佐伯さんだけ。

また、彼女は正直で公平で、かつ肝が据わっている。自分に厳しく、自信に溢れていながらも謙虚で、強靭なメンタリティと物事に正面からぶつかっていく潔さを持ち合わせている。そして何より自身の職業を、選手を、クラブを愛している。好きなことをして『自分の人生を100% 生きている』人独特の輝きに満ちているのだ。Ah!こんな人に出会ったら元気にならないわけがない。監督業に最も必要とされるのは、知識や技術を超えたところにある「人格」に違いないが、インタビューを終える頃には「この人ならスペイン・ナショナルチームを率いるのも夢じゃない!」と、妙な確信を覚えたのだった。

そんな佐伯さんの足跡と魅力を余すところなく描いたノンフィクションが、この5月末に出版された。著者は本誌でもおなじみの湯川カナさん。タイトルは『情熱とサッカーボールを抱きしめて』。ファンNo.1を豪語するカナさんが思いを込めて取材・執筆したこの本には、きっと2人のパワーが渦巻いているはずだ。Ah!早く読みたーい!そうだ、原稿も書き終えたことだし、早速『トーキョー屋』までひとっ走りしてこよーっと。

写真提供:湯川カナ
by zonajapon | 2005-08-01 06:00 | スペインの中の日本
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ソナ・ハポン(Zona Japon)は、マドリッドのFM局 "ラジオ・シルクロ100.4FM" にて放送のジャパンカルチャー紹介番組です!      (09年で一旦終了)www.radiocirculo.es

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