多くの評論家が才能を絶賛する女性作家のデビュー短編集 Milk Blood Heat

作者:Dantiel W. Moniz(デビュー作)
Publisher ‏ : ‎ Grove Press
刊行日:February 2, 2021
Hardcover ‏ : ‎ 208 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0802158153
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0802158154
適正年齢:一般向け
読みやすさ:8(文章はシンプルだがニュアンスを解釈する必要あり)
ジャンル:短編集
キーワード、テーマ:少女、女性、死、親子関係、愛、妊娠

大手新聞社やオプラ・ウィンフリーの雑誌などが「今年注目の作品」に挙げて刊行前から話題になっていたのが、Dantiel W. Monizのデビュー短編集 Milk Blook Heatだ。

この本に収録された短編の大部分の主人公はフロリダに住む有色人種の少女や女性である。表題作の”Milk Blood Honey,”は死に魅了された2人の少女が「ピンクは女の子の色」とミルクに互いの血を混ぜて飲んでblood sistersの誓いをするところから始まり、そこから悲劇に続いていく。その他にも、実際に不倫をやりとげなかったのに夫から捨てられた母を見下げる少女がある出来事をきっかけに母親をひとりの人間として見直す“The Hearts of Our Enemies,”など女性と周囲の人々との関係、そして世界との関係を描いている。

唯一男性の視点で語られているのが”The Loss of Heaven,”だ。浮気をすることで男性としての自分のバイタリティと価値観を見出していた男が、末期のがんで妻が死に直面して自信を喪失してしまう。私の心に一番残ったのが、なぜかこの作品だった。もうひとつ他の作品とは異なるのが“Exotics.”だ。大金持ちが禁じられている珍獣を食べる秘密クラブを描くとても短い短編なのだが、人間の本質にある残酷さを描いていて“Haven’t we always eaten our young?”という最後の1行が頭から離れなくなる。

オーディオブックとキンドルで読み比べてみたが、どちらにも異なる良さがある。オーディオブックで聞くと短編が映画の一コマのように感じる。しかし、文字で読むと、オーディオブックのときには聞き流していた鋭い表現に気づき、「これはすごい」と唸る。

私は文字で読み終えることを選んだのだが、ナレーターに運命をまかせて見知らぬ世界に連れて行ってもらうオーディオブックの魅力も捨てがたい。

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