2017年、ビジネスパーソンはポコニャンを読む

みなさんの家と同じように我が家にも本棚に藤子F全集が並んでいる。子供は初めて読むドラえもんに夢中で、私はエスパー魔美やチンプイ、バケルくんやSF短編の面白さを何度も噛みしめている。

しかし、仕事に疲れた夜、ふと手に取るのはポコニャンだ。ポコニャンは楽しい。ポコニャンは癒しである。

ポコニャンの異質さは、ドラえもんと比較すると分かりやすい。

ドラえもんでは、多くのエピソードでまずなにか問題が起きる(起)。そこで、ひみつ道具が登場する(承)。しかし、せっかくの道具は、のび太が悪用しはじめたり、ジャイアンに奪われたりする(転)。ところが、その栄華は長続きせずに終わる(結)。短いページ数に押し込まれた物語の流れはあまりに滑らかで、愉快で、それでいて教訓が散りばめられている。

ポコニャンにはそのような難しい流れはない。まず、なにか問題が起きる。そこで、ポコニャンがポコニャンと言う。そして解決する。終わり。素晴らしい毎日だ。

我々はポコニャンが何者であるのかも分からない。どのような能力をどういう理由で持っているのか分からない。どこから来たのかも分からない(拾ったらしい)。でもポコニャンはかわいい。ポコニャンは猫型ロボットのように怒らない。オバケのようにおせっかいでもない。苦手なものも、面倒なところもない。最高じゃないか。

ポコニャンは、もともと「ようじえほん」で連載され、そのあと「希望の友」に移った。藤子Fの多くの作品の中でも低年齢向け作品と言える。それでいて、いつもの藤子Fの構成のうまさ、絵の緻密さは変わらない。「大人が読んでも面白い」というのはよくある表現だが、ポコニャンの愛らしさ、楽しさは、むしろ疲れたビジネスパーソンにこそ最適なのだ。

今年も色々なことが起きて、みんながあれやこれやの理屈をこねている。答えは出ない。でも私の本棚には、いつだってポコニャンがある。私はそれを手に取る。いつかポコニャンのように、問題を一言で解決することを夢見ながら。

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この記事は「2017 Advent Calendar 2017」の3日目の記事として書かれた。昨日はshikakunさん、明日はailispawさんである。

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