かねてから興味のあったスキーを使っての山歩きを試してきた。この分野のスキーはバックカントリーという言い方で分類されているようだが、古くからあるテレマークスキー、浮力を高めたファットスキー、スノーシューと組み合わせたスノーボードなど楽しみ方はいろいろあるようだ。これらのジャンルは滑ることに主眼を置いたもので、僕の場合は山歩きがメインとなるので板選びがポイントとなる。そこでブレーンの登場だ。山ランの仲間で等高線の狭間からのDJFさんにアドバイスを頂いたが、その内容は幅広く、滑り方、雪質、技量などそれぞれの状況に応じた丁寧なものであたかもガイドブックを読んでいるかのようであった。その結果辿りついたのが、スキーベンチャーというSTCというメーカーのものだ。この板はフリートレック、フリーベンチャーという製品名でロシニョールが制作していたが、今はSTC社が製造・販売を引き継いでおり、まったく同じもののようだ。これに近い板でもう一つ気になるものでKarhu Metaというのがあり、仕様的にはほぼ同じようだけど一つだけ大きな違いがあった。それはKarhu Metaは滑走面にシールが内蔵されているというもので、どちらかというと滑りよりも歩きを優先したものだった。ただ残念なことにこの板は既に廃盤となっていて購入の対象にはならなかったのだ。スキーベンチャーを一言で表現すると、「滑れるスノーシュー」と言った感じかもしれない。長さ99cmと短い上に2.8kgと軽量で、取り回し、持ち運びは楽で登山のアプローチ用として使えそうだ。それに何といっても下りに滑れるところが最大の魅力なのだ。写真左はスキーベンチャーにAKU製スパイダーGTXをセットしたところ、右はザックに固定したところ
ということで、スキーベンチャーの使い初めに行ってきた。場所は4日前に行って雪の状況が分かっている八方ヶ原とし、学校平から小間々を経由し大入道へのルートとした。前夜は飲み会が鬼怒川温泉であり遅くまで飲んでいたので、ホテルからの運転は眠さと軽い頭痛との戦いだった。学校平に着きスキー板とストックをザックに背負い登山道に入った。4日前の自分たちのトレースにスノーシューの踏み跡が加わっていたが、気温は低くアイスバーンに近く踏み抜くことはほとんどない。それでもこの日はスキーベンチャーのテストを兼ねているので試すことにした。セットはアイゼン用のフックの付いた靴なのでワンタッチで済み簡単だ。緩斜面は板を揃えてクロカンのように歩き、傾斜のきついところは逆八の字で登るが板が短いのでとても楽だ。ただこの日は雪面が硬く、靴で踏み抜くこともないのでスキーベンチャーでの歩きは非効率で、普段使わない筋肉を使うためか疲れることになってしまった。結局、小間々でスキーを外し、大入道への分岐を分けた。トレースはなく所々にある標識と雑木の幹に描かれた赤丸マークを頼りに先に進んだ。積雪は深いところでは30cm近くあったが、ほとんど踏み抜くことは無く山頂に立った。ここの山頂部は雑木に囲まれ視界は良くない。それでも木立の間から見えた日留賀岳~鹿又山~男鹿岳~大佐飛山~黒滝山と奥塩原の山並は素晴らしい。写真左は大入道の緩斜面、中央は山頂の山名板、右は木立の間から見えた奥塩原の山並
さぁー、下りはスキーの出番だとばかりに勇んで板を装着したが、その目論見が無残にも崩れ去るには時間は要らなかった。緩斜面だがとにかく良く滑るが、制動が思うように利かない。林間コースなので小まめのターンが要求されるが、思うように曲がれないしスピードのコントロールもできない。何度も木にぶつかりそうになって、やっとのことで尻制御で難を逃れる。そんなことの繰り返しで、怪我する前にスキーを外すことにした。板が短いので前後のバランスが悪いし、アイスバーン状態だったのでほとんどエッジングが出来なくいのが原因なのだが、もう一つとしては自分のスキーのレベルが不足していることもあるのは確かだ。ゲレンデではウェーデルンもそれなりにはこなせると自負していたが全く歯が立たないのだ。もしかすると新雪などの方が扱いやすいのかもしれないと思った。それでも小間々まで戻りると、ルートに隣接して林道があるのでもう一度スキーを試すことにした。いや――快適快適(o´・∀・`o)ニコッ♪ 道の真ん中は登山者やスノーモービルのトレースで硬くて凸凹しているので不安定だけど、路肩近くの積もりっぱなしの雪のところではすこぶる快適だ。あっという間に登山口に戻ってしまった。写真はスキーベンチャーをそれぞれの角度から見たところ
スキーベンチャーは面白いアイテムだ。滑りを求めるなら選択肢からは外れるのかもしれないが、山へのアプローチとして使うならば十分に使えそうだ。登りに使うときはかかとが上がり、下りの時にはしっかり固定も出来る。その切り替えもワンタッチでできるのでアップダウンを繰り返すような緩斜面の連続などでは楽しそうだ。