八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

下流の裁判

現状レポート

下流の裁判


(更新日:2015年12月22日)

八ッ場ダムに関係する利根川流域一都五県(東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県)は、国とともに高額な八ッ場ダムの事業費を負担しています。

これを不服とする関係都県の住民は、2004年11月、八ッ場ダム負担金の支出差し止めを求める住民訴訟を提起しました(原告総数191名)。

裁判は各都県の地方裁判所から始まって11年間続きました。この裁判闘争を通じて、八ッ場ダムの不要性、ダムによって引き起こされる災厄の可能性などが科学的なデータと多くの専門家の証言によって明らかにされてきましたが、司法は具体的なダム問題に踏み込むことなく、2015年9月、最高裁が上告を退ける決定を下し、敗訴が確定しました。

折しも、9月に関東地方を襲った台風18号は、利根川水系の鬼怒川流域に甚大な被害をもたらし、訴訟で指摘されたダム偏重の河川行政の危うさを浮き彫りにすることとなりました。

住民訴訟を担ってきた八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会は、同年12月、最高裁決定抗議集会を開催し、今後も八ッ場ダムに反対する運動を継続するとの声明を発表しました。

集会では、11年にわたる裁判を闘ってきた弁護士らに原告から感謝状が贈られました。

集会では、11年にわたる裁判を闘ってきた弁護士らに原告から感謝状が贈られました。

訴訟を核とした八ッ場ダム反対運動の集大成ともいえる集会当日の配布資料を主催者より提供していただきましたので、以下に掲載します。

「八ッ場ダム住民訴訟 最高裁決定抗議集会」 2015年12月13日 於:全水道会館

◆ 第一部 八ッ場ダム住民訴訟・最高裁決定を受けて
高橋利明弁護士

高橋利明弁護士

●「八ッ場ダム・東京住民訴訟の現時点での総括」» PDF
・・・弁護士 高橋利明(八ッ場ダム住民訴訟弁護団団長 )
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「八ッ場ダム住民訴訟11年間の闘い」について報告する東京の会代表の深澤洋子さん

「八ッ場ダム住民訴訟11年間の闘い」について報告する
東京の会代表の深澤洋子さん

●「八ッ場ダム住民訴訟11年間の闘い」» PDF
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 1.八ッ場ダム住民訴訟の経過
 2.本訴訟で明らかにした八ッ場ダムの不要性と不当性
 3.判決― 裁判官が行政に迎合
 4.八ッ場ダム住民訴訟による反対運動の広がり
 5.八ッ場ダム予定地の現状と今後
 6.八ッ場ダムについて今後予想される問題

千葉の会代表として報告する中村春子さん

千葉の会代表として報告する
中村春子さん

各都県からの報告
 ・八ッ場ダムをストップさせる群馬の会 » PDFファイル
 ・八ッ場ダムをストップさせる栃木の会 » PDFファイル
 ・八ッ場ダムをストップさせる茨城の会 » PDFファイル
 ・八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会 » PDFファイル
 ・八ッ場ダムをストップさせる千葉の会 » PDFファイル
 ・八ッ場ダムをストップさせる東京の会 » PDFファイル
◆ 第二部 命を守る河川行政とは?
堤防強化の方法について対談する宮本博司さん(左)と嶋津暉之さん(右)

堤防強化の方法について対談する宮本博司さん(左)と嶋津暉之さん(右)

● 講演「想定外と治水」» PDF
・・・宮本博司(国土交通省河川局OB、元淀川水系流域委員会委員長)

クリックすると全89スライドが表示されます

クリックすると全89スライドが表示されます

● 報告「鬼怒川堤防決壊が求める河川行政の転換」» PDF
・・・嶋津暉之(八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会代表)
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●「滋賀県流域治水の推進に関する条例」の要点(滋賀県公式ホームページのQ&Aより)» PDF
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●比較的低コストの耐越水堤防の例» PDF
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●集会アピール» PDF
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アピールを読み上げる
茨城の会の神原禮二さん

情報公開訴訟―基本高水の根拠をめぐって

(更新日:2015年12月23日)

国土交通省は2010年秋から、八ッ場ダム建設の是非を決定するため、八ッ場ダム事業の再検証を始めました。
八ッ場ダム建設の主要目的は、利根川流域の「治水」と「利水」ですが、いずれにおいても科学的な根拠が乏しいとの指摘が多くの識者からなされています。八ッ場ダムの再検証を行うためには、これまでダム建設を必要性としてきた根拠資料の公開が前提となりますが、国土交通省関東地方整備局は公開を拒否しました。

八ッ場ダムの建設根拠の重要な数値である利根川の「基本高水流量」は、1980年(昭和55年)、それまでの毎秒17,000㎡から22,000㎡へと大幅に引き上げられました。これは治水上、八ッ場ダムをはじめとする数多くのダム建設を進める根拠を作り出すためだったのではないかと言われてきました。
2004年から始まった八ッ場ダムの住民訴訟では、22,000㎡という数値の過大さが大きな争点となり、その計算方法が科学的ではないことが東京新聞などでクローズアップされました。国会でも河野太郎議員(自民党)がこの問題を取り上げたことから、馬淵澄夫大臣が2010年10月、基本高水の再検証を指示するに至りました。これを受けて国交省は2011年1月、日本学術会議に基本高水の再検証を依頼しました。

2010年9月、八ッ場ダム住民訴訟(2004年~)の弁護団長をつとめる高橋利明弁護士は、利根川流域の洪水に関する重要資料を関東地方整備局が黒塗りとしたのは不当だとして、全面開示を求めて東京地裁に提訴しました。
訴状によると、カスリーン台風(1947年)規模の降雨量があった場合に利根川上流域で見込まれる洪水量(基本高水流量)を検証するため、原告が2010年7月、国交省関東地方整備局に情報公開を請求しましたが、同整備局は8月、重要部分(流域分割図・流出モデル図)を非開示(黒塗り)にした資料を交付しました。

重要な情報を非開示とした理由として関東地方整備局が示した内容は以下の通りです。

「構想段階の洪水調節施設に係る情報を含む部分については、国の機関内部における検討結果に関する情報であって、公にすることにより国民の誤解や憶測を招き,国民の間に混乱を生じさせるおそれがあるため,法5条第5号に該当するものであることから、当該情報が記載されている部分を不開示とした」

上記の文中の「洪水調節施設」とは、主にダムを指します。
原告側は、利根川水系においては今後、八ッ場ダム以外のダム建設が想定されておらず、国民の誤解、憶測、混乱を招く可能性がないことや、行政が透明性を求められていることなどから、非開示は違法と訴えました。

これに対して、被告の国交省関東地方整備局は、2011年1月25日に準備書面を提出し、全面的に争う姿勢を示しました。

2011年8月2日、東京地方裁判所は「利根川流域の分割図と流域モデル図を全面開示せよ」と、原告勝訴の判決を出しました。国交大臣が控訴取りやめを表明したことにより、この情報公開訴訟は原告の全面勝訴となりました。

情報公開訴訟

※以下の画像をクリックすると、PDFファイルが開きます。

第一回(2010年11月16日) 第二回(2011年1月25日)
原告の訴状

(平成22年9月10日)
原告の証拠説明書
被告の準備書面

(平成23年1月25日)
被告の証拠説明書

住民訴訟

首都圏全体に広がった八ッ場ダムNo!の声。脱ダム運動の集大成ともいえる八ッ場ダム住民訴訟が2004年にスタートしました。一都五県の住民訴訟に取り組むのは、2004年夏に発足した「八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会」。代表の嶋津暉之さんは、わが国脱ダム運動の理論的支柱ともいえる存在です。1960年代、地元の”八ッ場ダム反対闘争”に衝撃を受けた嶋津さんは、それから今日まで、”水”を巡る「都市」と「水源地」のあり方を問い続けてきました。

詳細はこちらをご覧ください
八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会
八ッ場ダム事業をストップさせる千葉の会

国土交通省は、カスリーン台風が再来した場合、利根川の洪水基準点「八斗島」を毎秒2万2000m3の洪水(基本高水)が襲うから、八ッ場ダムなど上流のダム建設が必要としてきました。
ところが、裁判の過程で、同台風が再来しても、現況では国交省の計算であっても毎秒1万6750m3しか流れないことがわかりました。八ッ場ダムの主目的の一つである「治水」の根拠が覆されたのです。
このことを多くの人に知っていただくために、八ッ場ダムの治水上の不要性にテーマを絞り、小冊子が弁護団により発行されました。
最近、馬淵国交大臣は「基本高水の計算データが確認できなかった」として、その再計算を指示しました。
2万2000m3がなぜ虚構の数字であるのか、この小冊子に簡潔に、スリリングにまとめられています。是非、ダウンロードしてご一読ください。(A4で12頁です)

<印刷用>(約27MB)
「八ッ場ダム住民訴訟6年目の決算書-
カスリーン台風が再来しても、八斗島地点毎秒一万6750万m3だから八ッ場ダムは要らない」