2023年6月7日、集英社は、AI(人工知能)生成画像を使ったグラビア写真集『生まれたて。』の販売を終了すると発表した。生成AIをとりまく様々な論点・問題点についての検討が十分ではなく、AI生成物の商品化については、より慎重に考えるべきであったと判断したとのことである。今回は、このようなAI生成画像を用いた「AIグラビア」の法的な問題点について弁護士の二木康晴氏に聞いた。

AI生成画像を使った実在しないモデル「さつきあい」のグラビアと、さつきあいのグラビア写真集『生まれたて。』の販売終了を知らせる集英社「週刊プレイボーイ」編集部のWebサイトの画像(出所/集英社)
AI生成画像を使った実在しないモデル「さつきあい」のグラビアと、さつきあいのグラビア写真集『生まれたて。』の販売終了を知らせる集英社「週刊プレイボーイ」編集部のWebサイトの画像(出所/集英社)

Q1 今回の「AIグラビア」では何が問題になったのか。

A1 集英社から公表されたプレスリリースを確認する限りでは、「AIグラビア」の販売が終了した直接の原因は明らかではない。

 一般的には、生成AIは、著作権などの権利を侵害しないかが問題とされることが多い。ただし、今回は、出版社が販売した写真集であり、著作権処理がなされたデータを自社で大量に保有していることが考えられるため、著作権とは別の権利侵害が問題になった可能性がある。

 今回のAI生成画像を使った「AIグラビア」という取り組みについては、ネット上で「画期的」という称賛の声もあった一方で、AIグラビアアイドルが「実在の人物に似ている」という指摘もなされていたようである。そのため、むしろ肖像権やパブリシティー権の侵害が懸念され、販売を中止したのではないか。

Q2 肖像権やパブリシティー権とは何か。

A2 「肖像権」や「パブリシティー権」は、法律に明文で規定されているわけではないが、判例によって認められている権利である。

 例えば、法廷写真撮影事件(最判平成17年11月10日民集59巻9号2428頁)によれば、「人はみだりに自己の容ぼう、姿態を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有」するとされている。

 また、ピンク・レディー事件(最判平成24年2月2日民集66巻2号89頁)によれば、「肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利」を「パブリシティー権」としている。

27
この記事をいいね!する
この記事を無料で回覧・プレゼントする