※日経エンタテインメント! 2024年9月号の記事を再構成
大ヒットテレビシリーズの総集編映画2部作の後編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』が8月に公開した。改めて『ぼっち・ざ・ろっく!』現象や作品の魅力を振り返る。
ギターを愛する陰キャな少女・後藤ひとり(ぼっちちゃん)が、ギタリストを探していた伊地知虹夏に誘われて「結束バンド」のメンバーに。山田リョウ、喜多郁代ら仲間と一緒に音楽と青春にまい進する姿を描く『ぼっち・ざ・ろっく!』。
はまじあきが『まんがタイムきららMAX』(芳文社)で連載中の4コママンガを、アニメ制作スタジオCloverWorks(『SPY×FAMILY』『逃げ上手の若君』など)が2022年10月期にテレビアニメ化。等身大の少女たちによる共感性の高い物語と、かわいく魅力的なキャラクターが若者の支持を受け、海外ファンによるAnime Trending Awardsなど数々のアニメ賞を受賞した。そのテレビシリーズを再編集した『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!』が2部作で公開。6月公開の前編『Re:』は初週の週末興行収入ランキングで1位に輝き、累計6.2億円を突破(7月19日現在)。8月9日には後編『Re: Re:』が公開された。
総集編はファン拡大の一手
製作幹事で配給を担うアニプレックスの石川達也プロデューサーは、アニメ化の経緯を「CloverWorksのプロデューサーから面白いマンガがあると。これをスタジオでやりたいという話が本作のスタートラインでした」と明かす。「僕は芳文社さんのカルチャーのなかでは『けいおん!』がアニメ業界を志す一助になっていることもあり、今ここに新しい音楽もののタイトルが出てきたのはすごくいいなと思いました」(石川氏、以下同)。
監督には『葬送のフリーレン』の斎藤圭一郎、脚本にはNHK連続テレビ小説『虎に翼』の吉田恵里香と今話題のクリエーターがそろうことでも話題に。
「ビジュアルや演出的な部分は斎藤監督の力が大きいと思います。ファンタジックさとリアル感のメリハリは“ならでは”ですし、吉田さんは原作の行間を埋めるアイデアが豊富で、さらにその行間を監督が煮詰めていく。そういう相乗効果が生まれていた気はします。そこに下北カルチャーに詳しいスタッフを中心に『結束バンド』の音楽を丁寧に音楽を作っていったことが多くの方に好きになっていただけた理由かなと感じます」
劇場総集編がヒットしていることについては、「これほどの反響は予想できなかった」としながらも、「我々も盛り上げるために劇中キャラクターの承認欲求モンスターの巨大広告を掲出したり、様々なプロモーションを行いました。ファミリー層や女子中高生などあまり深夜アニメに触れることのない層の方々も見てくれているのがうれしいですね」と話す。
テレビアニメの総集編映画自体は『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』の時代からあるが、近年はその数を増やしている。
「ファン層の拡大を狙ったときに、今は配信で見られるとはいっても1クール10本以上あるシリーズを見るのは大変だと思います。約2時間、今回は前後編の2本ですが、それさえ見れば作品の基本は押えられるという意味で、すごくメリットがあると考えています。実際に前編で初めて作品を見た方もかなりいらして、新しい何かが始まった感じがしています」
今年の夏は結束バンドがROCK IN JAPAN FES.2024などのロックフェスに参加し、9月からは全国5カ所をまわる単独ツアーを開催中。昨年上演され大好評だった舞台版の再演・続編も上演されるなど(9月に終了)、勢いは加速するばかりだ。