※日経エンタテインメント! 2021年12月号の記事を再構成

すでに生活の中でなくてはならない存在になりつつあるSNS。2021年はどんな動きがあったのか。2人の識者に話を聞いた。最初に話を聞くのはSNS全般のユーザー分析を手掛けるユーザーローカルの伊藤将雄氏。YouTube、Instagram、Twitter、TikTokの動きをどう見ているのか。

分析1 SNS全般 「動画化」がさらに進んだ2021年 YouTubeチャンネルは芸能人の財産に

――2021年のSNSで、1番大きかったトレンドは何だと思われますか?

 1番の大きなトレンドは「動画化」ではないでしょうか。20年からその流れは活発ではありましたが、より本格化した印象です。芸能人とYouTuberのコラボは少し前だと考えられなかった部分がありますが、そういった事例は当たり前に起こっています。宮迫博之さんがYouTubeを主戦場として活動するようになったのも、それを象徴するような1つの流れだといえるでしょう。芸能人にとっても、自身のYouTubeチャンネルを持つということは財産になるというのが明らかになってきたと思います。

 テレビに出ても肖像権の問題など、契約上自らのアセットにするのは難しいですが、YouTubeで発信した動画はすべてチャンネルの資産になります。テレビの場合は基本的にフロー型ビジネスになりますが、YouTubeは人気の動画ができればチャンネルのファンが増え、継続的に視聴者に対してアピールすることができます。

 例えばYouTubeは「デビュー動画」が注目を集めます。現在は人気がなかったとしても、もし3年後にブレイクしたときに過去に遡ってデビュー動画がものすごく見られる傾向がある。そういう意味でも動画をストックする魅力はあるでしょう。

――テキストベースのTwitter、写真ベースのInstagramは動画サービスの勢いに押されているということでしょうか?

 数字を見ても投稿の勢いが減っているわけではありません。特にInstagramではインスタライブやIGTV、リールといった形で、動画サービスをローンチしています。21年の頭には音声SNS「Clubhouse」が話題になりましたが、そこからFacebook、TwitterでもClubhouse的な機能を実装させました。各社盛り上がりを維持するために様々な機能を追加して、ユーザーをつなぎとめる工夫を凝らしている印象です。Twitterでも投げ銭システムが導入されて、ここから流行するか未知数な部分ではありますが、各サービスがユーザーの滞在時間を延ばすよう、戦略を立てているのでしょう。

 YouTubeでは特定のチャンネルに月額料金を支払い、メンバーシップに加入することで、限定コンテンツが閲覧できるようになる機能を導入しています。サブスク的な使い方で、プラスアルファのサービスを楽しむことができます。一方、YouTubeではチケット代を取るようなオンラインライブの仕組みを提供していませんが、この機能が追加されれば、ありとあらゆる芸能活動がYouTube上で可能になると思います。YouTubeほどの動画インフラを所有しているSNS企業はほかに思いつきませんし、マネタイズという観点では、やはり一強だといえるでしょう。

 人気のSNSという意味ではTikTokが台頭しています。「東京2020オリンピック」に出場した選手がTikTokをスタートさせて数十万単位のファンがつくという事例もありましたが、特に目立ったのはスケートボード男子ストリートで金メダルに輝いた堀米雄斗選手でしょう。開始2カ月程度の期間で70万人以上のファンを獲得しています。五輪でTikTokの勢いはより加速したのではないでしょうか。

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