災害にあわれた方のための税金の減免制度〜「雑損控除」と「災害免除法」〜
地震、洪水、竜巻など自然災害により住宅や家財が被害を受けてしまった際は、国や自治体から特別支援を受けることができます。このような支援はその時々や地域によって異なるので、まずは共通である国税の減免をしっかり押さえておきましょう。
このページでは、災害被害時に適用できる「雑損控除」と「災害減免法」について解説します。
目次
災害被害時は「雑損控除」か「災害減免法」で税金が減免できる
災害に遭った際に適用できる税金の制度には「雑損控除」と「災害減免法」の2つがあり、どちらも所得税を軽減させることができます。
それぞれどのような制度なのか見てみましょう。
「雑損控除」は控除を3年間繰り越せる制度
雑損控除とは、災害・盗難・横領によって、生活に通常必要な資産に損害を受けた場合に受けることができる所得控除のひとつです。
所得控除とは所得税を計算するときに、一定の金額について所得金額から控除することで税金の負担を和らげる仕組みのことです。
適用を受けるには、確定申告にて手続きが必要となり、また、雑損控除の対象になる資産にはいくつかの諸条件があります。
手続きの方法や対象となる資産、控除される金額の計算方法など、「雑損控除」については以下の記事でより詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。
また、雑損控除以外の「所得控除」については以下の記事で確認いただけます。
「災害減免法」は所得税が最大で全額免除になる制度
災害減免法とは、簡単に言えば雑損控除と同様に、災害等によって被害を受けた場合に税金の負担を和らげるための制度です。
控除または免除される額が雑損控除よりも大きいため、適用条件はより厳しいですが、手続き方法は簡単です。
手続き方法は雑損控除と同様に確定申告の際に必要事項を記入します。確定申告書の第1表の「(42)災害免除額」に軽減額を書くだけで、所得税が最大全額免除になる場合があります。
災害減免法の対象となる人
災害減免法が受けられるのは、年間所得が1000万円以下の人に限られます。以下の区分によって所得の免除、軽減が行われます。
その年の所得金額 | 所得税の軽減額 |
---|---|
500万円以下 | 100%免除 |
500万円を超え750万円以下 | 50%軽減 |
750万円を超え1000万円以下 | 25%軽減 |
その年の所得が500万円以下の場合には所得税が100%免除されます。
災害減免法の対象となるもの
対象となる人が所有する住宅や家財が対象になります。
ただし損害額(保険金等の補てん金額を除く)が住宅や家財の時価の50%以上でなければなりません。図に表すと以下のとおりです。
確定申告書の災害免除額欄に記載する
適用を受ける場合は、確定申告で手続きをします。
以下の図の赤線で囲った確定申告書の第1表の「(42)災害免除額」に所得税の軽減額を記載します。
雑損控除か災害減免法か、選ぶ基準は収入と被害に遭ったもの
年間所得が1000万円超の方は「雑損控除」しか選択できません。1000万円以下の方は「雑損控除」と「災害減免法」から選択することができます。ただしその場合でも、損害額が住宅等の時価の49%以下の場合は「雑損控除」しか選択できません。
年収が1000万円以下かつ損害額が50%以上の場合は、「災害減免法」で軽減される免除額と「雑損控除」による控除額を比べて、どちらが有利か計算してみましょう。
新築の家が倒壊して保険金もあまり支払われなかった場合など、損害額が大きい場合は所得控除が3年間繰り越せる「雑損控除」の方が有利な場合が多いようです。
地方税では固定資産税や不動産税が減免の対象になる
国税である所得税の控除・減免以外にも、地震などの災害時には地方税である個人資産税などが減免される場合があります。
なお、税金が減免・軽減される要件等は各自治体によって異なります。ここでは例として、東京都の税金の減免・軽減制度についてご紹介します。
減免される制度と条件
東京都では以下のような制度があり、条件に当てはまれば、被災の程度に応じて税金が軽減されます。都税は申請した日以降の納税期限から税金が減免されるので、被災したらなるべく早く申請する必要があります。
固定資産税/都市計画税
土地:崖崩れや地滑りによって所有する土地が10%以上利用できなくなった場合
家屋:延べ床面積の10%以上が損壊・焼失・流失した場合、または床面以上に浸水した場合
不動産取得税
取得した不動産が、不動産取得税の納税期限までに災害によって損害した場合
災害によって損壊した不動産の代わりとなる不動産を3年以内に取得した場合
(いずれも、被災部分の面積の割合が10%以上の場合、また、土地については崖崩れ、地滑り等により現に地積が減じたことが認められる場合に限る)
都民税
特別区民税または市町村民税が減免された場合、都民税も同じ割合で減免される
その他にも、個人事業税や軽油引取税などが減免される場合もあります。
都税の減免を受けるには
都税の減免条件に当てはまったら申請手続きを行いましょう。市区役所・町村役場で交付される「罹災証明書」と都税事務所や都税支所の窓口、またはホームページから入手できる「減免申請書」を提出することで減免が受けられます。
各都道府県によって対象となる税制度や条件は変わってきますので、詳しくはお住まいの都道府県の主税局ホームページをご覧ください。
おわりに
確定申告書に金額を記載して書類を添付するだけで、被災した際の所得税の控除・減免を受けることができます。いざという時のために「被災したら確定申告で所得税の控除・減免を受けられる」ということだけでも覚えておきましょう。
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