個人事業税は経費にできる!対象者や計算方法をわかりやすく解説
個人事業税とは、個人事業主が納めるべき税金のひとつです。ただしすべての人が課税対象となるわけではありません。また、個人事業税が発生した際には経費として計上することができます。
そこで、このページでは、個人事業税の基礎知識や仕訳方法を詳しくご紹介します。
目次
個人事業税とは?
「個人事業税」とは、個人事業主が納める税金のひとつです。ただし、個人事業を営む方の全員が納めるものではありません(詳しい条件は後述)。
税金の種類としては、住民税や固定資産税と同じ「地方税」に区分され、事務所や事業所がある都道府県に対して納税します。
個人事業をはじめるときに、都道府県税事務所へ「事業開始等申告書」を提出しますが、このとき提出した場所が納税地になります。
徴収された事業税は、各都道府県が行政サービスを提供するための財源として使われます。
個人事業税を納める必要がある人
個人事業税を納める必要があるのは、以下3つの条件すべてに当てはまる場合です。
- 個人で事業を行っている
- 法定業種に該当している
- 所得合計額が290万円を超えている
1 個人で事業を行っている
前述したとおり、個人事業税の対象者は個人で事業を行っているフリーランスなどの個人事業主です。
2 法定業種に該当している
個人事業税が課される事業は「法定業種」として、70種類の業種が該当します。
この法定業種に該当しなければ個人事業税は課されませんが、ほとんどの事業は70種のいずれかに当てはまるでしょう。
なお、法定業種に該当しているかは事業の実態から判断されます(法定業種の詳細については後述します)。
3 所得合計額が290万円を超えている
個人事業税は対象者の年間合計所得額に対して課税されます。ただし個人事業税には年間290万円の事業主控除が設けられています。
つまり、合計所得額が290万円を下回る場合は、個人事業税を払わなくてよいということです。
個人事業税は経費にできる
個人事業税は事業に関連して発生する税金のため、経費として計上することができます。
勘定科目と仕訳例
個人事業税は「租税公課」という勘定科目で仕訳を行います。
租税公課とは、税金や公のために支払うお金のことで、国税や地方税などの「租税」と、国や地方公共団体への会費や組合費、賦課金などの「公課」を合わせた勘定科目です。
では、具体例を元に、仕訳方法を確認していきましょう。
CASE1 : 個人事業税10万円を事業用の銀行口座から引き出して支払った場合
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
租税公課 | 10万円 | 普通預金 | 10万円 | 個人事業税 |
CASE2 : 個人事業税10万円をクレジットカード(決済手数料1,000円)で支払った場合
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
租税公課 | 10万円 | 未払金 | 10万1,000円 | 個人事業税 |
決済手数料 | 1,000円 |
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
未払金 | 10万1,000円 | 普通預金 | 10万1,000円 | 個人事業税 |
経費にできる税金とできない税金
事業で発生する税金といえば「消費税」もありますが、こちらも個人事業税と同様に経費として計上できます。
さらに事業に関連したものであれば、下記の税金も経費として計上できます。
- 固定資産税、自動車税、不動産取得税、登録免許税、印紙代
いずれも個人事業税と同様に「租税公課」として仕訳しましょう。プライベートと共用している場合は按分し、事業分にかかる税金のみが経費の対象となります。
一方で、下記の税金は経費にならないため「事業主貸」として仕訳をします。
- 所得税、住民税、相続税、贈与税、延滞税
個人事業税の計算方法
個人事業税の金額は以下の計算式で算出できます。
個人事業税 =(収入 - 必要経費 - 各種控除額)× 税率
前年1月1日~12月31日の1年間に発生した収入から必要経費を差し引いた「所得」から、各種控除を差し引いた課税価額に、法定業種に応じた税率をかけて計算します。
各種控除額:繰越控除+最大290万円の事業主控除額
個人事業税の控除項目は「繰越控除」と「事業主控除」の2種類です。所得税における「基礎控除」や「青色申告特別控除」は適用されません。
繰越控除
条件により、以下のいずれかを適用できます。
- 損失の繰越控除
青色申告者で、事業所得が赤字の場合、翌年以降3年間、繰越控除ができる - 被災事業用資産の損失の繰越控除
白色申告者で、地震・風水害などの自然災害で事業性資産に損失が出た場合、翌年以降3年間、繰越控除ができる - 譲渡損失の控除と繰越控除
直接事業に使う資産を譲渡して出た損失額を控除できる(青色申告者なら翌年3年間可能)
事業主控除
最大で年間290万円まで控除できます。
事業年数が1年未満の場合は、事業月数に応じた月割りで計算した控除額が適用されます。
たとえば、9月1日が事業開始日だった場合、9〜12月の4か月分=96万7千円が控除される金額となります。
専従者がおり、各要件を満たす場合には、事業専従者給与(または控除)の額も差し引きます。
事業専従者給与(または控除)の額
- 青色申告の場合
その給与支払額(所得税の事業専従者給与額) - 白色申告の場合
専従者が配偶者のとき・・・控除額最大86万円
上記以外・・・1人につき最大50万円
税率:法定業種に応じて3〜5%
法定業種には3つの区分が設けられており、税率は業種に応じてそれぞれ3〜5%となっています。
区分 | 税率 | 事業の種類 |
---|---|---|
第1種 | 5% | 物品販売業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、電気供給業、土石採取業、電気通信事業、運送業、運送取扱業、船舶定係場業、倉庫業、駐車場業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業、飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、両替業、公衆浴場業(むし風呂等)、演劇興行業、遊技場業、遊覧所業、商品取引業、不動産売買業、広告業、興信所業、案内業、冠婚葬祭業 |
第2種 | 4% | 畜産業、水産業、薪炭製造業 |
第3種 | 5% | 医業、歯科医業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、司法書士業、行政書士業、公証人業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業、社会保険労務士業、コンサルタント業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、諸芸師匠業、理容業、美容業、クリーニング業、公衆浴場業(銭湯)、歯科衛生士業、歯科技工士業、測量士業、土地家屋調査士業、海事代理士業、印刷製版業 |
3% | あん摩・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業 |
個人事業税の納税義務がない業種
前述の第1種から第3種に該当しない業種であれば、個人事業税は発生しません。
具体的には、作家、漫画家、文筆業、システムエンジニア、プログラマーなどです。ただし、「業務委託契約」ではなく「請負契約」の場合、第1種の請負業に該当するとみなされ、課税の対象となるケースが多いとされています。
一方で、個人事業主として建設業を営む一人親方の場合、基本的には第1種の「請負業」に該当するケースが多いようですが、契約内容によっては請負業に該当しないと判断され、個人事業税の対象外となることもあります。
このように、同じ業種でも課税の扱いが異なるケースもあるので、判断に迷った際には都道府県に問い合わせたり、税理士などの専門家に相談するなどして確認しましょう。
- これさえ読めばOK!職人、一人親方のための確定申告ガイド
- 一人親方の税理士費用はいくら?料金実例や顧問をつけるタイミングについて
- 漫画家や作家、イラストレーターの税理士費用はいくら?顧問料実例を紹介
- 整骨院など治療院の税理士費用はいくら?料金例や顧問契約のメリットを紹介
個人事業税の計算例
実際に個人事業税がどれだけかかるか、下記の条件で計算してみましょう。
【CASE】
事業:レストラン経営(2年目)
合計所得額500万円、青色控除額65万円、各種控除:事業主控除のみ
- 課税価額の計算
500万円+65万円-290万円=課税価額:275万円 - 税額の計算
このケースでは第1種に区分されるため、税率は5%です。
275万円 × 5%=個人事業税:13万7500円
個人事業税の申告方法
個人事業主として、所得税の確定申告や住民税の申告を行っている人は、個人事業税の申告は原則不要となっています。その際には、確定申告書第二表の事業税の欄において、該当する項目を書き加えます。
ただし、年の途中で事業の廃止手続きをした場合には、所得税の確定申告や住民税の申告とは別に、個人事業税の申告手続きをする必要があります。その場合は廃止日から1か月以内に行いましょう。
いつまでに支払う?納付期限と納付方法
8月になると、都道府県から個人事業税の納税通知書が送付されてきます。納付は原則8月と11月の年2期に分かれ、納付期限はそれぞれ8月31日、11月30日となります(休日の場合はその翌日)。
なお、年の途中で事業を廃止した場合には、納税通知書に記載されている納期限までに納税を行いましょう。
納付方法
都税事務所や県税事務所の窓口で支払う以外にも、口座振替や金融機関の窓口やATMでの支払い、コンビニ払い、クレジットカード払いのほか、スマートフォン決済アプリにも対応している場合があります。
各自治体のホームページ等で納税方法を確認した上で、都合のよい方法で納めるようにしましょう。
おわりに
個人事業主は、所得税や住民税を納める義務があることはわかっていても、個人事業税の納税については、あまり意識していないという方もいるでしょう。
また、売上が1000万円を超えてくると消費税の課税事業者となる可能性もあります。
個人とはいえ事業を営むと多くの税金を考慮しなくてはならず、納税金額の計算のほか、節税対策についても考える必要がでてきます。
そのため、売上がある程度の規模になってきたら顧問税理士をつけることも検討してみるとよいでしょう。
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