少額減価償却資産は一括計上できる!特例の要件や仕訳について解説

税理士の無料紹介サービス24時間受付

05075866768

  1. 税理士ドットコム
  2. 経理・決算
  3. 減価償却
  4. 減価償却のハウツー
  5. 少額減価償却資産は一括計上できる!特例の要件や仕訳について解説

少額減価償却資産は一括計上できる!特例の要件や仕訳について解説

監修: 山本 邦人 税理士

業務のために取得した「資産」は、所定の条件を満たすことで「少額減価償却資産」として一括計上(即時償却)することができます。

では、少額減価償却資産とはどのような資産が該当するのでしょうか?

条件や仕訳例をはじめ、30万円まで一括償却できる「少額減価償却資産の特例」についてもわかりやすく解説します。

目次

そもそも減価償却資産って?

事業用に取得した建物・設備や自動車、機械など、長期にわたって使用するものは費用(経費)ではなく「資産」として計上します。

一般的にこれらは、時間の経過と共に価値が減少すると考えられるので、法定耐用年数に応じて金額を分割し費用計上(減価償却)することになり、このような資産を「減価償却資産(または償却資産)」といいます。

一方で、土地や骨とう品など時間を経過しても価値が下がることはないものは減価償却資産に該当しません。

減価償却資産のうち少額減価償却資産」にあてはまる場合は、減価償却せずに一括計上(即時償却)することができます。

これは、償却資産の管理や申告手続きといった事務負担の軽減のほか、少額資産を取得促進することによる事業効率の向上を図るためとされています。

「少額減価償却資産」の条件

少額減価償却資産とは、以下のいずれかに当てはまる資産をいいます。

この条件に当てはまると、必要経費(損金)として、その年に全額を「即時償却」することが可能です。

これは、資産の取得金額が少額だったり使用可能期間が短いものは、減価償却を省いても損益に与える影響は重要でないと考えられる「重要性の原則」の観点より、通常の償却方法でなくてもよいと判断されているからです。

使用可能期間が1年未満である資産

「使用可能期間が1年未満の資産」というのは、その業種において一般的に消耗品であると認識されていて、その事業主の平均的な使用状況や補充状況などを考慮して判断されることになっています。

たとえば、テレビ放送用のコマーシャルフィルムは法定耐用年数が2年と決められていますが、一般的な放映期間は1年未満であるため、使用可能期間が1年未満のものとして認められることになっています(参考:国税庁 タックスアンサー)。

ケースによって判断されるものなので、特殊な工具を購入したときなど、その業種ではどのように扱われているのか、税理士によく確認して判断するようにしましょう。

取得価額が10万円未満である資産

「取得金額が10万円未満の資産」は、1単位(1個・1組・1セットなど)ごとに判断される決まりになっています。

たとえばパソコンの場合は、ハードウェア、ディスプレイ、キーボードで1単位、応接セットであればテーブルと椅子で1単位として数え、その合計金額が10万円未満であれば少額減価償却資産とみなされます。

ただし、セットではなくそれぞれを別に購入した場合は、それぞれの金額で判断することになります。

金額は税込?税抜?

取得価額の判断は、事業者が適用している消費税の会計処理に応じて決められます

たとえば税抜9万8000円のパソコンを購入した場合、税抜経理で会計処理をしている場合では、消費税抜きの価額が取得価格となるため全額償却することができます。

税込経理で会計処理をしている場合は、消費税込みの価格10万7800円が取得価額となるので、通常の減価償却で処理します。なお消費税の免税事業者(消費税の申告納税の必要がない事業者)の場合は、税込価格で判断します。

【令和4年税制改正】貸付用の資産は除外に

令和4年(2022年)度税制改正で、少額減価償却資産から「貸付用」に供したものが除外されることになりました。

ただし、リースやレンタルの貸付業を本業としている場合は例外です。少額減価償却資産の本来の目的である「事務手続きの負担軽減」からは逸れないと判断されるためです。

この改正が適用されるのは、後述する特例や一括償却資産でも同様です。

30万円未満は「少額減価償却資産の特例」で節税

少額減価償却資産には特例が設けられています。

条件を満たすと取得金額が30万円未満の減価償却資産であれば即時償却することが可能です(上限年間300万円)

利益額を圧縮できるので効果的に節税することができますが、利益があまり出ない年には少額減価償却資産の特例を使わずに、通常の耐用年数で減価償却を行うほうが有利になる場合もあります。

適用要件

少額減価償却資産の特例の対象となる事業者の要件は以下のとおりです。

  • 法人:青色申告書を提出している中小企業者または農業協同組合等
  • 個人事業主:青色申告書を提出している中小事業者

まずポイントとなるのは「青色申告書を提出している」ことです。本制度は青色申告者だけが対象のため、白色申告をしている方は利用できません。

また、法人の場合、「常時雇用人数が500人以下の法人(特定法人は300人以下)」に当てはまる「中小企業者」が対象となります。

適用期間

適用期間は2026年3月31日までとなっています。

「償却資産税」の取り扱いに注意!

通常、償却資産にかかる固定資産税(いわゆる「償却資産税」)は、取得価格が少額の資産であれば申告不要となります。具体的には以下のものが当てはまります。

  • 取得価格10万円未満のもののうち、一括で費用計上(損金算入)した資産
  • 取得価格が20万円未満のリース資産
  • 取得価格が20万円未満のもののうち「一括償却資産」に該当する資産

しかし、少額減価償却資産の特例を適用した資産については、償却資産税の対象となりますので注意しましょう。

少額減価償却資産の特例の手続き

特例を利用するにあたっては、確定申告の際に以下の書類を記入し、添付・提出する必要があります。

  • 法人:少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書(別表十六(七))
  • 個人事業主:少額減価償却資産の取得価額に関する明細書

法人の場合は「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書」という書類が用意されているため、こちらの書類に必要事項を記入し、添付・提出します。

個人事業主の場合は明細書を添付するか、青色申告決算書の「減価償却費の計算」の項目欄に、取得価額の合計額と特例を利用する旨を記載する必要があります。

【少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書の記入例】少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書

10万円以上20万円未満は「一括償却資産」

先述の特例は30万円未満でしたが、取得価額が10万円以上20万円未満である減価償却資産は「一括償却資産」として、「3年均等償却」することができます。

簡単にいうと、取得金額の3分の1ずつを、3年間にわたって費用計上していくというものです。

このように償却できる理由も、「重要性の原則」の観点から、通常の償却方法を利用する必要がないと判断されているからです。

一括償却資産の3年均等償却を利用するメリットは、「通常の法定耐用年数よりも早く費用化することができる」点です。

耐用年数の例を挙げると、パソコン(サーバー用のものを除く)は4年、応接セット(接客業用のもの)は5年といった具合に、3年を超えるものが多くなっています。それを3年で償却できる分、早期に費用として計上することができるのです。

一方デメリットとして、「仮に破棄した場合でも、3年間で償却しなければならない」という点があります。

原則として減価償却資産を途中で破棄した場合は、その時に償却していない部分を全額費用として処理することができます。3年均等償却を利用している場合は、破棄などに関係なく、必ず3年かけて費用を計上する決まりになっています。

3年均等償却のための手続き

この一括償却資産の3年均等償却を利用するには、確定申告書等に以下の書類を添付し、提出する必要があります。

  • 法人:一括償却資産の損金算入に関する明細書(別表十六(八))
  • 個人事業主:一括償却対象額を記載した書類

法人が利用する場合には、「一括償却資産の損金算入に関する明細書」という書類が用意されているので、こちらに記入し、添付・提出します。一方、個人事業主が利用する際には、収支内訳書や青色申告決算書に「減価償却費の計算」という項目欄があるので、ここに必要事項を記入することで適用されます。

少額減価償却資産の仕訳例

少額減価償却資産、一括償却資産を取得したとき、少額減価償却資産の特例を利用したときの仕訳方法を解説します。

少額減価償却資産を取得したとき、特例を適用した場合は、取得時に「消耗品費」勘定で処理します。

借方貸方
消耗品費98,000円現金98,000円

一括償却資産の3年均等償却の場合は、取得時に「一括償却資産」という科目を使い一度資産計上してから、減価償却をします。

借方貸方
一括償却資産150,000円現金150,000円

決算時には15万円×1/3=5万円の減価償却を、3年間行います。

借方貸方
減価償却費50,000円一括償却資産50,000円

おわりに

償却資産の金額別計上方法

利益が多く出た年に少額減価償却資産の特例を使って必要な備品を買ったり、反対に赤字の年は特例を使わずに法定耐用年数で計上したり、状況によって変えることで節税効果を大きくすることができます。

業務に必要な高額な備品を購入するときには、購入のタイミングや会計処理の方法を税理士に相談してみるとよいでしょう。

もっと記事を読みたい方はこちら

無料会員登録でメルマガをお届け!

減価償却に関する他のハウツー記事を見る

もっと見る
他の税務相談を探す
分野

協力税理士募集中!

税理士ドットコムはコンテンツの執筆・編集・監修・寄稿などにご協力いただける方を募集しています。

募集概要を見る

ライター募集中!

税理士ドットコムはライターを募集しています。

募集概要を見る