新型コロナウイルスによる感染拡大で、社会的なパニック状態が巻き起こっている。だが2月5日、WHO(世界保健機関)が「新型ウイルスはパンデミック(世界的流行)を引き起こしていない」と会見で語った。
「WHOは何をのんきなことを言っているんだ」と受け止めた人もいたかもしれない。だが、かつてWHOのインフルエンザ・呼吸器ウイルス協力センター長としてウイルス感染症の拡大防止に豪腕をふるった根路銘(ねろめ)国昭さん(現・生物資源研所所長、沖縄県)も、「WHOの見解は正しい。パンデミックな状態ではなく、コロナウイルスの特性から2月末から3月には終息するはず。危機をあおりたてる傾向が強いことを憂慮している」と語っており、今、その緊急インタビュー記事をまとめているところだ。
メディアも含め多くの人たちは、今回の新型コロナウイルス(2019n-CoV)による感染を、2009年の新型インフルエンザ(H1N1)によるパンデミック(世界的流行)と重ね合わせているのではないか。
11年前の新型インフルエンザウイルスには、1918年に5000万人が亡くなったインフルエンザ=スペイン風邪のウイルスの遺伝子の一部が組み込まれていたため世界は慄然とした。世界で約1万4000人、日本では203人が亡くなったからだ(根路銘さんによれば、この09年もパンデミックではなかった)。
だが、感染力が強いインフルエンザウイルスとコロナウイルスは違う。毎年、当たり前のように鼻かぜなどを起こしているのがコロナウイルスで、私たちはコロナウイルスとともに生きてきたのだ。