「先日、妻がケガをした鳩を拾ってきました。かわいそうだから家で飼うと言いだしたのですが、たまたま家に遊びに来ていた父親が鳩をひと目見るなり『これはレース鳩だな。貸してごらん』と言って、鳩の脚のあたりを見て何やらメモすると、ネットで検索してから電話。終わると、『これで本当の飼い主のところに帰れるよ』と言うのです。
数日後、静岡から飼い主の方が来られて、無事に返すことができました。父親は『子供の頃、マンガでこういう話を読んだ』というのです。タイトルは覚えていないようだし、本当なんでしょうか?」(30歳・イラストレーター)
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レース鳩は伝書鳩とも呼び、鳩の帰巣本能を利用して遠隔地から文書や小さな荷物を送ることなどに昔から利用されていた。1960年前後までは新聞社も鳩を記事や写真の輸送に使っていて、屋上には鳩舎もあった。
一方、ある地点から放った鳩が鳩舎に戻る速さを競う鳩レースが盛んになったのは60年代半ば。ピークの69年には全国で400万羽以上の伝書鳩が飼育されていたとか。
ただ、依頼人の年齢から見て、お父上が読んだマンガはこれよりも10年ほど後の78年から80年にかけ『週刊少年チャンピオン』に連載された飯森広一の『レース鳩0777(アラシ)』のことだろう。