筆者の立場として、エネルギー問題は主義主張ではなく、技術的に使えるものは何でも使えというものだ。特に、トータルの1次エネルギーの採掘から車両走行までのエネルギー効率を向上するためには、原発も選択肢の一つである。ただし、原発事故により保険的な意味で原発の管理・維持コストが高いことが分かったので、コストから見ると、原発は長期的にはフェードアウトの方向性であり、過度に依存できない。
その上で「グリーン成長戦略」を考えると、中期的には再生可能エネルギーの導入拡大や一定程度の原発がないと、いくら自動車の電動化を進めたとしても、1次エネルギーの採掘から車両走行までからみれば意味がないものとなってしまう。
こうしたエネルギー政策の変化とともに、自動車産業も激動の時代だ。温暖化対応と自動運転の両面から新しい時代になろうとしている。それらの時代に日本の自動車産業の生き残りは、環境変化の中で、最適な行動がとれるかどうかにかかっている。
EV一本やりではなく、EVとHVの組み合わせという日本の自動車産業は、それなりに柔軟性があるとともに、日本の優位性を生かせるので生き残るだろう。自動車産業は裾野の広い産業なので、そうならないと日本経済としてもまずい。(元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)