去年2011年は震災がありました。戦後の高度成長の延長線上にあった世の中の仕組みが崩壊しつつあります。今年は新しい仕組みで世の中が動き始める年になるでしょう。
目指す姿を明確にして、自分の武器を理解して、徹底的に努力して、自分で自分を律していく必要があります。周りから与えられたことを、なんとなく一生懸命にやるだけでは、買い叩かれる人材になってしまいます。
本書は我々に勇気を与えてくれます。我々にいま必要な具体的な「武器」を教えてくれます。本書の内容から、特に必要だと感じた7つの武器をピックアップしてご紹介します。
1. 英語・IT・会計知識は奴隷のスキルであることを知る
これまでの「人材マーケット」では、資格やTOEICの点数といった、客観的に数値で測れる指標が重視されてきた。
だが、そうした数値は、極端に言えば工業製品のスペックと何も変わりがない。同じ数値であれば、企業側は安いほうを採用するに決まっている。
via: P31
資格を取得する順番が間違えています。経験を積む前に知識だけ詰め込んで資格を取得しても、全く意味がありません。資格とは、仕事の中で身につけたスキルを、目に見える形にするために取得するものです。資格や点数を取ったからって、仕事がデキるようになれるわけではありません。
仕事ができずに英語だけ話せても、何も意味がありません。(だったらアメリカ人は全員優秀ということになります) 語学や資格よりも、まずは自分の強みを磨くことが最優先です。
2. 投資のタイミングを知る
「ブームとなってから投資すると、死ぬ」というのが投資の鉄則だ。
誰も投資など考えられない、焼け野原のようになっているときに投資をして、誰よりも早く実った果実を回収し、「まだ儲かる」と普通の人が思い始めるタイミングでさっと身を引く。
これが成功する投資家に共通する思考法だ。(中略)
「地面に死体が転がっているような不景気なときに投資をし、まだ早すぎるタイミングで売り抜けろ」というのがルールなのである。
via: P86
IT技術が高度に発達し、多くの情報が瞬時に伝わる現在では、情報を知ってから投資しても高値を掴まされるだけで、儲けることはできません。「人の行く裏に道あり花の山」といわれるように、積極的にリスクを取っていかないと、なにも得られないのです。
これからの時代で成功するには、失敗しないことを目指すよりも、リスクを取って、トータルで大きなリターンを得る方向を目指していく必要があるのです。
3. すべての行動は、「スペシャリティ」になるために
たとえば、あながが調理師学校を出たコックだとして、誰かが経営するレストランの一従業員として働き、先輩やチーフから命ぜられるままに料理を作って毎日過ごしているのだとしたら、コモディティである公算が高い。
そうではなくて、あなたの毎日つくる料理を目当てにしていたり、あなたが接客するからこそ来客するお客さんがたくさんいて、レストランの経営に多大な貢献をもたらしているのであれば、スペシャリティなコックであるといえる。
via: P39
他の人と替えが効かない「スペシャリティ」を目指しましょう。スペシャリティとは、要するに「知っている人」になることです。「知っているモノ」を売りにするだけでは、必ず価格競争に巻き込まれます。
美味しい情報は、必ず人を介してやってきます。自ら動き、技術を磨き、人の役に立って信用を得ることで、人脈は広がり、良い情報が入ってきます。
ITの発達により、ネットを通じて誰でも多くの情報を得ることができます。ある分野だけのエキスパートではなく、複数のスキルをクロスした人材、商品を右から左へ流すだけの営業マンではなく、トータルソリューションを提供できる人材が生き残っていくでしょう。ただ仕事をこなすだけでなく、意識的に自分の強みを作っていく、つまり、セルフブランディングをしていく必要があります。
4. 「ストーリー」を乗せて売る
全産業の「コモディティ化」が進む世の中で、唯一富を生み出す時代のキーワードは、「差異」である。「差異」とは、デザインやブランドや会社や商品が持つ「ストーリー」といいかえてもいい。
わずかな「差異」がとてつもない違いを生む時代となったのだ。
マーケターとは「差異」=「ストーリー」を生み出し、あるいは発見して、もっとも適切な市場を選んで商品を売る戦略を考えられる人間だといえる。
via: P129
徹底的な品質管理で有名な亀山工場で作られた「亀山ブランド」の液晶テレビ、最近では東日本大震災で被害を受けた岩手県で生産されているトヨタの「AQUA」など、ただ商品を売るのではなくて、商品に「ストーリー」を乗せて売るマーケティングが広まっています。レッツラーである私も、本書の例にあったように、レッツノートに「デキル自分」をイメージしています^^
テレビや車はコモディティ商品に成り下がりつつありますが、べつの文脈(コンテクスト)に乗せて売ることで、価格競争を避けることが可能です。
人材も同じです。これからは、自分自身をストーリー化して売り込んでいける人が大きな信頼を得ることができるでしょう。未来の自分は過去の自分の歴史の蓄積で作られます。プロフィールを作って、一度過去の自分をたな卸ししてみることがお勧めです。
5. 自分の居た会社を叩き潰す会社を作る
潰れそうな会社に入ることにも大きな意味がある。
たとえば、今はなんとかもっていても、将来の先行きはないだろうと思われる会社に入り、その会社を徹底的に研究する。
そして、その会社が潰れる前に退職し、その会社を叩き潰す会社を作るのである。
via: P178
会社に入れば、その会社の良いところ、悪いところを理解することができます。良いところを伸ばし、悪いところを修正した新しいビジネスモデルを作り出して独立するという本書の考え方は、ちょっとえげつない感じがしますが、合理的な方法だと思いました。
私はメーカー勤務からネットビジネスに転進しました。その後もと居た会社のメイン商品はネット化の波に揉まれて、市場が縮小してしまいました。これもある意味「もと居た会社」をぶっ潰す行為だったのかもしれません。
6. マネジメントとは、凡人を気持ちよく働かせるスキル
私が個人的に知っている、携帯電話ショップの事業を大成功させて会社を上場に持っていったある経営者は、
「携帯の電波は無尽蔵にあるだろう。それと同じくらい、中途半端な、社会の歯車になるしかないような奴も無尽蔵にいる。だったらそういう人間に、携帯電話を売らせれば、いくらでも儲かるはずだ」
と述べていた。
via: P192
優秀な社員は、放っておいても成果を出してくれますし、より良いポジションや起業を目指して辞めてしまいます。
凡人であれば、人件費も低く抑えられます。誰がやってもそれなりに成果が得られるビジネスモデルを構築することが重要です。人を雇うことで確実に利益が伸びる商売でないと、人を雇う必要はありません。
7. 優れたリーダーとは狂人である
学校では「みんなの上に立つ人はすばらしい人」と習うが、現実の歴史では、そういう「すばらしい人」が、人の上に立って何か大きなことをなしたことはほとんどない。
via: P197
日本で理想のリーダー像は、完全無欠な人物をイメージします。実際は、欠陥だらけの超個性的な人物が成功するケースが多いのです。日本の歴史上だと、織田信長などはイメージしやすいでしょう。かのアップル元代表のスティーブジョブスも、かなり強烈な性格の持ち主だったそうです。
「何でもある」ということは、「何も無い」ことと同じです。欠陥は人の個性につながります。強力な個性が魅力となり、人々を惹き付けるのです。
成功するには「あいつには負けない、たくさん金を儲けたい」といった、コンプレックスを解消するための負のモチベーションは、特にビジネスの立ち上げ時など、短期的には大きな原動力になります。
ブログ・ソーシャルメディアで成功する武器とは?
本書の内容は、そのままブログ・ソーシャルメディア上で取るべき行動を教えてくれます。自分自身をコモディティ化させないように、エッジを効かせて「スペシャリティ」になる意識が大切です。
自分自身をストーリー化して、時には仮想敵を想定して、相手をぶっ潰すくらいのやり方が必要でしょう。「消費税の増税は必要だ!」のような当たり前のことを主張しても、誰も振り向いてくれません。自分の弱点は個性の源泉として認めて、自分の得意な部分を伸ばしていくことが、熱狂的なフォロアーを増やしていくことに繋がります。
しかし、ファンが付くということは、アンチファンも現れます。あの福山雅治ですら、アンチファンが居るのです。これはどうしようもないことです。アンチファンは自分の悪い部分を教えてくれます。意見として謙虚に認めて、必要があれば改善していけば良いのです。「アンチもファンのうち」です。ファンは勇気をくれて、リトマス紙になってくれます。自分を成長させてくれる大切な存在なのです。
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