財政事情
今後5年間で584億円の財源不足が見込まれる――。市議会行政改革等特別委員会で、市がそう報告したのが2018年11月のことだった。
19年度から23年度の中期財政計画に基づくもので、社会保障関連の扶助費や更新期を迎えた公共施設の再整備費などが膨らんだことが主な要因だった。市関係者は「大変厳しいという認識」とする一方、こう強調する。
「中期財政の見通しは想定する全ての事業を実施した場合の数字。財政状況がひっ迫しているということではない」
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その言葉通り、市の台所事情は現状、「健全状態」を維持。2014年度以降、国から普通交付税を受けない「不交付団体」を堅持し、必要な歳出に対する収入の割合を示す「財政力指数」は17年度決算で政令市を除く県内16市の中で上位3番目だった。また市の借金にあたる市債も市民一人あたりに換算すると約18万円で最も少ない。
ただ、歳入の6割近くを占める市税は10年来ほぼ横ばい。少子高齢化に伴う人口構造の変化で歳出増が見込まれる一方、今後大幅な税収増は期待できず、将来的な見通しについては不透明だ。
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中学3年生までの小児医療費助成や中学校給食。子育て施策の手厚さに加え、自然環境や交通アクセスの良さなども相まって子育て層の流入が続く藤沢。18年4月には人口が43万人を突破した。
その一方、扶助費は年々増加傾向にある。過去10年間では約195億円増え、特に児童福祉費の伸びが顕著だった。市の推計では30年が人口増のピーク。その後は緩やかに減少傾向となり、高齢者の割合が増えていくという。
これらに加えて財政に重くのしかかるのが、公共施設の再整備費だ。市は老朽化に伴い、15〜17の3カ年度で約180億円かけて市役所本庁舎を整備。今年1月に供用が始まった分庁舎の整備には約33億円を投じた。
大型事業は一区切りしたとは言え、今後も小中学校や公民館などの再整備が立て続けに待ち受ける。さらに将来的には約120億円とされる整備費を要する市民会館の建て替えも控える。
あるベテラン市議は市の財政運営について一定の評価をしつつ、こう釘を刺した。
「収入が一定で支出が増えるのであれば、当然、内容を精査し、優先順位をつけることが不可欠になる。重要なのは税金の使い道。特に大型開発については既定路線で進めるのではなく、丁寧な説明や住民合意など慎重な判断が必要だ」
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藤沢市長選は2月9日に告示され、同16日に投開票される。これまで現職と新人の計3人が出馬を表明し、立候補予定者の構図がほぼ固まった。市民が選ぶのは2期8年続いた現市政の継続か、または刷新か。市の現状から課題を探った。
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