【どうなる東京五輪パラリンピック(103)】正しい選択だったのか――。新型コロナウイルス禍の中、パラスポーツ界の先陣を切って日本パラ陸上競技選手権(埼玉・熊谷)が5、6日に行われた。来夏に延期された東京パラリンピックに向け明るい兆しが見えた一方で、1枚の紙に書かれた“あるひと言”が波紋を呼んでいる。

 一般的に障がい者がコロナに感染した場合は、重症化のリスクが高いと言われている。そこで日本パラ陸上競技連盟は、徹底した感染症対策を実施した。普段と異なる状況下だったものの、選手らは次々と好記録をマーク。増田明美会長(56)は「結果に表れていますよね。選手の大会を開いてくれたことに対する感謝の気持ちが表れた」と笑みを浮かべた。

 ただ、プラスの面ばかりではない。パラ陸連側が選手とスタッフに提出を求めた同意書を巡り、各方面から疑問の声が上がっているのだ。同意書には「参加者のコロナウイルス感染について一切責任を負わないことについて同意した上で、大会に参加します」(一部省略)と記載されていたことから、ある選手は「もし何かあったときに責任を負えないっていうのはねえ」と苦笑い。別のパラ競技団体の幹部も「会場で感染させないのはもちろん、他の部分でも感染させないようにするというのがうちの考え。選手には寄り添っていないですよね。同意書を書くことで感染が広まらないということはないと思う」と苦言を呈した。

 この件について、三井利仁理事長(56)は「そのくらい真剣に僕らがやっていますよってこと。みなさんをおとしめるってことではない。そこは大会を主催する側として、決して逃げているわけではないし、参加する人に君たちの責任だよって言っているわけではない」と説明。今大会で出た反省点は、今後に生かしていく方針を示した。

 実際、複数のパラ関係者が「リスクヘッジは仕方がない面もある。各競技団体の統一したルールがないので、いろいろ模索しているところだと思う」と口を揃えるように、各連盟が新型コロナウイルス禍の大会計画に頭を悩ませている。果たしてどんなルールを作成するべきなのか。乗り越えなければならない課題はまだまだ多そうだ。