東京弁護士会人権賞
東京弁護士会は、1986年(昭和61年度)から、東京弁護士会人権賞(略称「東弁人権賞」)を制定し、人権擁護活動に尽力されてきた方々を毎年表彰してまいりましたが、この賞を制定した趣旨は次のようなところにあります。 戦後、日本国憲法のもとに基本的人権は育ってきました。しかし、人権が侵される事例はまだまだあとを絶ちません。社会の変化とともに人権の中味も変わっていきますし、新しい人権をも育てていかなければなりません。日本国憲法が謳っているように、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたもの」(第97条)です。このような「自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」(第12条)ものです。
人権は、多くの人々のたゆみない努力によって、擁護され発展し、定着していくものです。弁護士法第1条は、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と定め、人権の擁護を弁護士の責務としています。 東京弁護士会はこうした責務を自覚し、いまなお人権に対する侵害が存在し、人権の内容の空洞化などが指摘されているなかで、人権擁護活動に地道な努力をつみ重ねてこられた方々を表彰し、人権の発展、定着に寄与することが極めて意義のあることと考えております。
「東京弁護士会人権賞」の表彰対象
本賞の対象者は、次のような人権擁護活動をされた方々です。
- 基本的人権の侵害に対する救済活動-例えば、再審、冤罪事件の弁護活動等-
- 国際的な人権擁護活動
- 人権にかかわる立法への貢献又は阻止活動
- 人権思想の確立のための研究・啓発活動
- 公害、社会福祉等の各分野における人権に関する諸活動
- その他広く人権に関する活動-例えば、新しい人権の確立のための活動等-
「第39回 東京弁護士会人権賞」受賞者は以下の方に決定しました
東京弁護士会では、1986年(昭和61年度)から、東京弁護士会人権賞を制定し、人権擁護活動に尽力されてきた方々を毎年表彰しています。
候補者の方々はいずれも各分野において、人権擁護活動にご尽力されているところ、今年度も多数の推薦・応募があり、会外委員が多数となる選考委員会の選考結果に従って、下記の方が受賞者に決定しました。
袴田 ひで子 さん
袴田ひで子さんは、1966年に発生した袴田事件で強盗殺人放火事件の犯人として逮捕・起訴され、死刑判決が確定した袴田巖さんの実姉です。ひで子さんは、弟の無実を信じて半世紀以上にわたり救済活動を継続し、事件から58年後の2024年に再審での無罪判決を勝ち取りました。
ひで子さんの粘り強く力強い活動は、弁護団、支援者さらにはマスコミをも動かし、冤罪に苦しむ人達にとって大きな支えとなってきました。
ひで子さんは、2014年に巖さんが釈放された後は、活動の幅をさらに広げてきました。たとえば、他の冤罪被害者と交流し、冤罪撲滅に向けた活動や死刑廃止を訴える活動をしたり、各種団体が主催する市民フォーラム、学生を対象とした勉強会、市民交流会、研修会において講演したり、テレビ番組へ出演し、書籍を出版するなど、その活動は多岐にわたります。
また、近年は日本弁護士連合会主催のイベントや超党派の国会議員連盟等で、再審法改正に向けた活動も積極的に行うなど、活動の場を広げています。
以上の諸活動は、東京弁護士会人権賞の受賞に相応しいものです。
問合せ
TEL 03-3581-2204 東京弁護士会 総務課 人権賞係