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追悼・片山広明~「まったく、酔うとなにをするかわからないヤツだ」と言いながらも、忌野清志郎が信頼していたバンドマン

2024.11.12

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「本日テナーの片山広明が亡くなりました。ご冥福をお祈りいたします。」という情報が、地底レコードのホームページに掲載されたのは、2018年11月13日のことだ。

本日の朝だったそうです。最後は地底レコードでCDをリリースしていました、RCサクセション・渋さ知らズでも活躍した、SAXの片山広明が亡くなったとの情報を夕方に知りブッタマゲました。

長年の酒の飲み過ぎでの肝不全ですね。キヨシローさんが亡くなる前に死んでいても不思議はなかった片山さんですが、肝硬変が悪化して遂にというかそりゃそうだろと思うぐらい悪くなっていたようですね。

病院を変えて検査を充実させたり、手術をしたり良くしようとは努力していた様子はみてとれましたが、昨夜に具合が悪くなり今朝、息を引き取ったそうです。ご冥福をお祈りさせていただきます。


片山は自らが率いるHAPPY HOURのアルバム『Last Order』を、7月に4年ぶりでリリースしたばかりだった。メンバーは片山のほか、石渡明廣(ギター)、早川岳晴(ベース)、湊 雅史(ドラムス)の4人。

訃報を聞いてからあらためてアルバムを聴き直してみると、これが遺作になることをわかって録音したような選曲だということに気づかされた。

全部で6曲が収録されていたのだが、特に後半の3曲はエディット・ピアフの「愛の讃歌」、レナード・コーエンの「ハレルヤ」、美空ひばりの「リンゴ追分」と、いわゆる”歌もの”の名曲が並んでいる。

1. Lady’s Blues
2. Drunkenstein
3. A-zone
4. Hymne a l’amour
5. Hallelujar
6. りんご追分

動物が咆哮するかのような片山のテナーはクリアで力強く、そこに石渡の美しい音色のギターが加わると、もうそれだけで独自の世界が構築される。さらには早川のベースと湊のドラムが一体になって、時間はHAPPY HOURからLAST ORDERまで、またたくまにすぎていく。

とりわけ最後の「リンゴ追分」は、わかりやすいメロディやリフの奥に秘められた情動、音楽というものの本質を探り当てて、ひたすら共鳴していくような名演だった。

片山は1970年代の後期に、生活向上委員会オーケストラ、DUB(ドクトル梅津バンド) 、RCサクセションのサポートで、ジャンルやカテゴリーにとらわれず、いつも自由奔放にバンドマンとして表現活動を行ってきた。

その人となりについては忌野清志郎が、著書「忌野旅日記」の中でこのように述べていた。

片山は朝から朝まで酒を飲んでいる。RCの打ち上げ後、ジャズ関係の飲み屋へ行ってベロベロになった帰り道、スキップをしながら(酔うとスキップするのが片山のくせだが、あの巨体と体のわりに細い足のスキップはサイコーに笑える)ニコニコ走り回っていたら、そのまま道の植え込みに突っ込んだ。周囲約3メートルにわたって植え込みをメチャメチャにし、さらに倒れたまま、まだ足はスキップしていたらしい。

そのうえ立ち上がったらネンザをしてしまって、一緒にいたG2はホテルまで引きずって帰った後、迷惑そうに俺に語っていたぜ。それに昔、某三多摩地区の音大付近で、夜中電柱にのぼってサックスを吹いている二人を、通りかかったG2が目撃したら、なんとそのひとりは片山だったと、近所の迷惑を代表してオレに訴えたこともあった。まったく、酔うとなにをするかわからないヤツだ。


そんな片山は、RCサクセション時代から清志郎のステージで、梅津和時とのブルーデイ・ホーンズとしてサックスを吹くようになった。そして自らもさまざまな活動を行いながら、ソロ転向後の清志郎とも活動を共にしたのだった。

酔うと何をするかわからないヤツだといいながらも、バンドマン気質の清志郎もまた、片山と梅津のブルーデイ・ホーンズを信頼していた。

音楽的実力もスゴいこと忘れちゃいけない。実験的ライヴや、ビンボー・ヨーロッパ・ツアーを実現したり、彼らのエネルギッシュな活動にはスゴいものがある。本当に人間味溢れる魅力的なバンドだ。


2003年8月17日の日比谷野外音楽堂ライブで結成した「忌野清志郎 & NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNS」は、生涯をバンドマンとして生きた清志郎にとって最後のバンドとなった。

ところで、片山のソロアルバムなどを以前から発売してきた地底レコードが扱っているアーティストは、片山もメンバーの一人でもある「渋さ知らズ」を筆頭に、「フェダイン」「佐々木彩子」「SOHBAND」「酒井俊」「高瀬アキ・井野信義」「スクリーントーンズ」といった、個性的な面々が揃っている。

TAP the POPで連載した「カルメンマキ&OZ」のギタリスト、春日博文こと「hachi」のアルバム『独りの唄』も地底レコードが発売元であった。

このレーベルを主宰する吉田光利氏は自社のラインナップについて、「いずれも個性と音楽への愛情たっぷりに、聴くもの一人ひとりの感性と感情を激しく揺さぶる驚愕の最上級音楽が揃っている筈です。地下深くへと探求を続け、 一生日の目を見ないと言われるレーベルですが、気軽に手にして聴いてみてくださいね!!」と述べている。



(注)文中に引用した忌野清志郎氏の文章はすべて、彼の著書「忌野旅日記」(新潮文庫)からの引用です。



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