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もう本を処分したくない。「書庫のある家」を建てて床抜けの恐怖から開放された【趣味と家】

平屋戸建てに書庫を作った

音楽やマンガなど、圧倒的な熱量を注ぐ「好きなもの」をおもちの方に、こだわりの住まいをご紹介いただく本企画「趣味と家」。第10回目は「本」をこよなく愛するライター・小林白珠さんに寄稿いただきました。「もう本を処分したくない」という気持ちから、床抜けの心配がある賃貸暮らしにピリオドを打ち、書庫付きの平屋戸建てを建てた小林さん。ただただ「本」をたくさん収納するためだけの空間をつくり上げるまでの経緯と、愛猫のためにこだわった点などを紹介します。

詳しいことは長くなるので割愛しますが、いくつかの出会いや別れやあれやこれやがあった結果、突如私は家を建てようと決めました。一戸建てです。たぶん一生に一度の買い物です。せっかくだから書庫をつくりました。

「縁側のある家」の間取図 小林さん邸の間取図

都心から電車で1時間半ほどの関東地方の田舎に建てた、人間1人と愛猫1匹のための平屋。3LDKのうち、LDKを除けば一番広い部屋は「書庫」(9.5畳)です。

平屋戸建てに書庫を作った

温度・湿度の管理に気を配った以外はただただ四角いだけのシンプルな空間に、これでもかと本棚を詰め込みました。

正直なところ、この書庫に何冊の本が収まるのか、また現在何冊の本を所持しているのか自分でもよくわかっていないのですが、おそらく現時点で1万冊以上は収蔵されていることでしょう。それでもまだまだ2〜3倍以上の余裕があります。

平屋戸建てに書庫を作った

この書庫を手に入れたことで、賃貸暮らし時代は常に気にしていた「本の収納スペース」への悩みが消え、気兼ねなく本が買えるようになりました。蔵書を眺めたり、本を並べ替えたりするだけでも楽しい。

今回は私がなぜ「書庫のある家」を建てようと思ったのかと、理想の「書庫」と「家」を手に入れるまでの経緯をつづりたいと思います。

【目次】

「書庫付きの家」を建てようと決意するまで

平屋戸建てに書庫を作った

子どものころから本ばかり読んで過ごしていました。

主に剣呑(けんのん)なミステリばかりを読んでいますがエッセイも漫画も、文字が書いてあるものならどんな本も大好きです。読書ペースは月に10〜20冊ほどでしょうか(一時期に比べたらだいぶ減りました)。

そのため当時住んでいた賃貸住宅には、そろそろ床が抜けるんじゃないかとおびえるほど本が溢(あふ)れていました。

フラフラ生きているからか何度かの引越しは経験しており、そのたびに本の処分を考えないこともなかったのですが、ある時何を血迷ったのか『ガラスの仮面』(確か当時は42巻まで出ていた)をまるっと処分してしまい、引越し先で荷物をほどく前に再度全巻買い直すという不毛なことをして以来、本の処分はもうしないと肝に銘じました。

なので、たまっていく一方です。

人生は時に思い切りが必要です。私にとってはその時でした。いち本好きとして漠然と憧れていた「書庫のある家」を現実のものとすることにしたのです。

床抜けの恐怖のほかにも、部屋の換気機能が壊れて本にカビが生えだしたとか、飼い猫が寝ている私の顔に本を落とす遊びを覚えてしまったとかの小さな理由も重なりました。

建築会社は「書庫」への思いを肯定してくれたところに決定

書庫のある家を建てようと決め、まずしたことがインターネットを使った情報収集です。

最初はマンションや建売住宅も一応検討しましたが、残念ながら私が思うような書庫がつくれそうな家は見当たらず。早い段階で注文住宅に的を絞り、各建築会社のサイトや土地情報、家を建てるまでの過程をつづった個人ブログなどを念入りにチェックしました。

平屋戸建てに書庫を作った 竣工時のリビングの様子

この時期、家に関する書籍や漫画も多く読みましたね、また本が増えました。

しばらくそんなことをして気持ちが高まったところで、満を持して自分の好みに合いそうな建築会社をいくつか訪ねてみることにしました。とりあえずその時点で確実に決まっていたことは一つだけ。

「1万冊くらい収納できる書庫が欲しい!」

建築会社での反応はさまざまでした。一番多かったのが「……書庫?」と戸惑った反応を見せるところです。

落ち着いて振り返ってみると、第一声が「とにかく大きな書庫のある家が欲しい」というオーダーなのだからさもありなんという気もします。

何件か回り、最終的に内容と金額のバランスが一番合っていると思った建築会社を選びました。そしてそこは唯一「書庫ですね、できます!」と即答してくれたところでもあります。設計は、年齢が若く発想も柔軟そうな男性Oさんが担当してくれることに。

実際に注文住宅を建ててみて、一番大切なのは建築会社選びと担当さんとの相性だと感じました。

萎縮することなくこちらの意見や疑問を伝えられること、希望を気持ちよく受け止めてくれその上でプロとしての提案をしてくれること、そんな当たり前のことができる建築会社と出合えたのは、とてもラッキーだったのかもしれません。

ついの住処(すみか)になるのなら平屋にしよう

家を建てるに当たり、下調べや建築会社探しと並行して土地選びも進めました。たまたま希望していた駅から徒歩10分以内に70坪ほどの出物があり、こちらは早い段階ですんなりと決定。

平屋戸建てに書庫を作った キッチンは真っ白でシンプルなものに

土地も建築会社も決まったら、今度は「どんな家を建てるか」を考えます。

といっても、私の希望はごくシンプル。独立した書庫(リビングや廊下の一部に組み込まれているのではなく一室としてカウントできるもの)があること。あとはLDKと寝室、余裕があれば書斎としてもう一室あればいいな、くらいのざっくりした構想しかありませんでした。

土地に対する建ぺい率は40%(用途地域によって異なる)。もともと約70坪の土地なので、そこに建てられる家は約28坪。

もともと、書庫は本の重さや動線を考え1階につくろうと決めていたのですが、その他の居住空間をどうするべきか。

2階建てにしてリビングや寝室を2階にすることも検討しましたが、老後体力が衰えたときに階段を上れなくなる未来が見えるようであまり気乗りしません。

うーん……と悩みOさんに相談したところ、私の希望する間取りなら28坪あれば2階建てにせずとも収まるだろうとのことで、平屋建てに決定しました。

なんとなくのイメージで「家は2階建て」と考えていましたが、平屋建てに実際に住んでみると、掃除が楽なのと、行き来がおっくうではないため無駄なくどの部屋も使える。私の家は幸い日当たりも問題ないので、この選択は正解だったと感じています。

担当との攻防戦〜図面に“ただ四角いだけの書庫”ができるまで〜

次は「設計」。施主である私の要望をOさんに伝え、彼が図面に起こし、私がそれを見て「ここはこうしたい、ああしたい」と好き勝手言う、それを何度か繰り返し図面が完成する……のですが、これが予想に反してなかなか苦労しました。

前述のとおり私の希望はそれほど複雑ではありませんでした。

10畳程の書庫(もろもろの調整で最終的には9.5畳となりました)をつくり、残りの面積をLDK、寝室、書斎、浴室などに適当に振り分ける、というものが基本的な構想です。

そしてその書庫ですが、私が希望するのは本が日焼けしないよう窓も何もなく、ただただ本棚だけが整然と並ぶだけの四角い部屋です。あくまで本を最大限収納するための部屋なので、それで必要かつ十分だと考えていました。

ところがそう伝えたにもかかわらず、なぜかOさんのつくってくる図面は違うのです。

「本棚の邪魔にならないよう、縦長の窓を各所に配置しました」

「窓はいりません」

「天井に近い位置に高窓をつけるのはどうでしょう?」

「窓はいりません」

「……足元に横長の窓をつけましょうか」

「窓はいりません」

平屋戸建てに書庫を作った 何度もやりとりを重ねた書庫の図面(一部)

この会話を何度繰り返したことか。いや、おっしゃりたいことはとてもよくわかるのです。書庫は私の家の中でかなりのスペースを占めることになります。寝室より書斎より広いのです。

LDKこそ20畳程ですが、リビング・ダイニング・キッチンの三つで割れば7畳、書庫より狭い計算です。

将来的に何か状況が変わって書庫を居室として使いたいとなった場合、窓のない部屋など使い勝手がいいはずがありません(そもそも建築基準法上、窓がない部屋は「納戸」であって「居室」ではないらしい。人の住む部屋ではないってことですね)。

私が第三者であるならば「そんなもったいない部屋をつくるなんてどうかしてる!」と思うでしょう。Oさんの提案もごもっともです。しかし私はそんなもったいない部屋をつくりたいのです。どうかしてる。

やがて、どうかしてる施主の相手をするのも疲れたのか、図面からついに窓は消えました。よし!! と思ったのもつかの間、よく見ると図面に謎の空間が足されています。

「ん? ここは?」

「造り付けのカウンターです。ここにオシャレな椅子を置いて書庫内で読書ができるようにしましょう!」

「なるほどー! オシャレですね! いりませんけど!!」

平屋戸建てに書庫を作った Oさんの苦労がにじみ出た図面

そんな攻防の末、窓もカウンターも何もないただの四角い書庫の図面を私は手に入れました。

ちなみに新井素子さんの『銀婚式物語』という本にも同じような(いえ、もっと壮絶な)エピソードが出てくるので「ああ、設計士が窓にこだわるのは世の常なんだなあ」と妙に納得したものです。

造作のつもりが予算オーバー。本棚は「既製のセミオーダー品」に

図面は完成したものの、ここは書庫です。そう、本棚を置かなければ意味がありません。

当初の予定では、地震対策も考えて本棚は全て造作するつもりでした。

予算は100万円。出入口以外の壁面をぐるりと本棚で囲み、さらに背中合わせの棚を部屋の内側に三列配置、これが予定していたプランです。

ところがいざ造り付け本棚の見積もりを出してもらったところ、私のプランだと全部で200万円以上、ひょっとしたら300万円はかかることが判明しました。またしても、うーん……と悩みましたが、予算の倍以上となると懐的にもなかなか厳しいものがあります。

最終的に本棚は全て施主支給とし、建築会社には本棚をみっちり置いても床が抜けない補強工事だけをお願いすることにしました。

通常の倍の床下補強をしてくれたそうで、Oさんいわく「グランドピアノを部屋全体に置いてもらっても全く問題ありません!」とのこと。グランドピアノと本、どちらが重たいのかわかりませんが、なんだかすごく頼もしかったのを覚えています。

本棚は方々を探した結果、某通販サイトのセミオーダー品(部屋のサイズに合わせ高さ幅共に1cm刻みでオーダーが可能)がよかろうとなり、まとめてインターネットで注文しました。

平屋戸建てに書庫を作った 本棚搬入時の様子

棚板の厚みが3cmあり本の重さで撓(たわ)むことがないであろうという点と、天井までの突っ張りがしっかりしていて耐震に問題がなさそうな点が決め手となりました。

まとめて購入したからかいくらかの割引もつき、無事予算内に収まりました。また組み立てから設置まで全て運送業者が作業してくれたので(手配も通販会社任せ)とても楽でした。この家に住み始めて5年ほどたちますが、実際使用してみて困ったこともありません。良い買い物でした。

こうして、いろいろなことがありながら私の「書庫のある家」は完成したのです。

猫も人も暮らしやすい空間を目指して

平屋戸建てに書庫を作った リビングでくつろぐ猫

ところで家にはもう1匹、長年一緒に暮らしている家族(猫)がいます。ここは私の家であると同時に、猫である彼女の家でもあります。私も猫も、家では同等な存在なのです。

そのため「書庫が欲しい」という気持ちのほかにも、お互い不快な気持ちにならない家にしたい、という思いがありました。

「私」の場合は書庫をつくって本を完全に隔離したことで、随分快適になりました。なにぶん、賃貸時代は猫が私の気を引きたくて棚の本を一冊ずつ抜き出す、本のスピン(ひも)にじゃれつくなどは日常茶飯事だったので。

平屋戸建てに書庫を作った 背表紙に無数の爪痕が残っている本や、スピンがバラバラにほどけている本も多数

まあ猫は何をしてもかわいいのでもちろん怒るようなことはありませんが、できるなら本はボロボロにならないほうがいいですからね。書庫に猫が入り込まないよう、通常は閉め切っています。

そのぶん、LDKと寝室は主に猫の生活空間とし、安全に走り回ったり寝転がったりできる空間をしっかりと確保しました。

当初、建築会社からいただいた設計プランではトレンドを意識して玄関ホールが広々と取ってあったのですが、猫の暮らす空間が少しでも広がるよう、ホールの面積を削ってLDKに回してもらったりもしました。

平屋戸建てに書庫を作った

また、メインの壁紙は傷や汚れに強いペット仕様のものを選んだほか、リビングに設置している猫トイレの近くには、脱臭作用があるとされているLIXILのエコカラットを採用しました。

平屋戸建てに書庫を作った 画像の左側、レンガ調になっている部分がエコカラット

もう一つ重要視したのが「脱走対策」。万が一でも家の外に出てしまわないよう、玄関とLDKの間にドアを一枚設けました。単純なことですし、猫がいなくても扉を設ける方は多いとは思うのですが、猫と暮らす以上は忘れてはいけない非常に大切なことだと思っています。

猫のことを考えた空間で、思いっ切り走り回って遊んだり、リラックスして寝ている愛猫の姿を見るのは至福の時間です。

平屋戸建てに書庫を作った

LDKの真ん中に置いてあるソファは家が完成した際、最初に搬入した思い入れのある家具ですが、今ではすっかり巨大爪研ぎと化しています。でもそれすらも猫が家を気に入ってくれた証拠のようでいとおしいのです。

平屋戸建てに書庫を作った どうぞ満足いくまで研いでください

家づくりは私にとって「人生最高の無駄遣い」だった

もともと「書庫が欲しい」と思い建てた家なので、ほかの部分にはそれほど確固たるこだわりがあったわけではありません。でも、実際に建ててみると全てを自分で選び全てを自分で決められるという体験はとても楽しかったです。

例えば前述のようにメインの壁紙はペット用の質実剛健で汎用性の高い白をメインに決めたのですが、華やかな柄クロスもどこかに使いたい……と考えた末、家に3カ所あるクロゼットと物入れの中の壁紙を花柄にしました。

平屋戸建てに書庫を作った 全て違う柄にしました

開けない限りは見えないので完全に自己満足なのですが、扉を開けるたび自分の気に入った柄が目に入るだけで少し幸福度が上がります。大胆な柄物でも「普段は見えないから」と躊躇(ちゅうちょ)なく選べたのも良かったですね。

また、キッチンのゴミ箱の置き場所など、家具や雑貨がきっちり無駄なく収まるようにつくれたのも注文住宅ならではかと思います。

平屋戸建てに書庫を作った

そして、ぎちぎちの書庫をつくっておいてあまり説得力はありませんが、本来は掃除がしやすく物の少ない空間が好きな性分なので、書庫以外の部分はすっきり見えることを心掛けました。

書庫の扉さえ閉めてしまえば、私の趣味を知らない客人にはまさかこの家に1万冊以上の本があると知られることはないのです。実は本棚を他人に見られるのは自分の頭の中を見られているようでなんだか少し恥ずかしいんですよね。

§ § §

この家に住んで5年ほどがたちました。不満といえば「浴室のシャワーヘッド、格好つけてシルバーのものを選んだら水あかが目立つなあ」くらいなものです。

好き勝手に書きましたが、私の酔狂な思いを具体化してくれたOさんはじめ、建築会社の皆さんには感謝してもしきれません。

ほかの人にとっては無用の長物のような間取りの家であっても、私にはとても意味のある家が完成しました。「人生最大の無駄遣いだね」と笑われたこともありましたが、これを無駄遣いと言うならば、私にとっては人生最高の無駄遣いでした。

まだまだ本棚の空きには余裕があります。ということはまだまだ本が増やせるということです。猫も元気だし、幸せですね。


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著者:小林白珠

小林白珠

本と猫とおいしいものが大好きです。一日の大半を家で過ごすような生活スタイルですが、この家に住むようになり、ますます外に出なくなりました。文章を書きます。

Twitter:@_shiratama_k

編集:はてな編集部