令和7年の年明けにあたりまして日刊水産経済新聞を日頃ご愛読いただいている読者の皆さまのご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。 昨年の干支(えと)「甲辰(きのえたつ)」は、言葉の意味になぞらえると「成功の芽が成長していく年や、富や財産、幸運が訪れる年」とあり、よい一年になることが期待されていました。しかし、人々の願いは早々に裏切られました。元日から北陸で能登半島地震が発生。石川・能登半島を中心に痛ましい犠牲者や家や仕事を失った多数の被災者を出し、現地の水産業界も甚大な打撃を被りました。ロシアのウクライナ侵攻の長期化やイスラエルのパレスチナ侵攻に端を発した中東情勢の不安定化、米国大統領選でのドナルド・トランプ氏の再選、超大国・中国の景気後退など国際情勢は日を追うごとに混迷を極め、そうした世界の動きに連動した記録的円安やエネルギーコスト・資材費の止まらない上昇が日本経済へ物価高として影を落としました。 国内では、元日の能登半島地震で終わらず、多くの自然災害や異常気象に近年になく悩まされました。地震の最大被災地を襲った奥能登豪雨をはじめとして、全国各地で繰り返される豪雨に加え台風、一昨年夏に並ぶ6~8月の記録的高温と終わらない夏、それに伴う海水温上昇と降温の遅れなどがありました。天然の資源に多くを依存する水産業界は、従来の常識が通じない不漁・好漁や獲れる時期のズレに振り回され、厳しい一年となりました。本来なら国産水産物の不足をカバーする役割を果たすはずの輸入水産物の調達も、円安や堅調な海外需要で一筋縄ではいかず、国内マーケットへの供給も支障を来す事態になりました。 新型コロナウイルス禍は過去のものとなり、その後の社会は正常化に向かいました。ただ、3年以上もの間に停滞していた課題が一気に顕在化することにもつながって、水産業界を取り巻く情勢はかつて経験したことのない速度で変化し、複雑化していきました。物事の本質を見定めて小手先に惑わされることにならないよう常に注意を払わなければなりませんが、亀のように目を閉じ耳をふさぐことで目の前の嵐が過ぎ去るのを待ってやり過ごすだけでは生き残れない時代となっています。 今年の干支「乙巳(きのとみ)」は「変化を恐れず新しいことを始めて困難な状況でも成長し努力を重ねて物事を安定させていく」という意味合いがあるということです。 今、多方面で進んでいる変化がいったん落ち着きをみせて安寧を覚える時が訪れると望むのは無理筋でしょう。21世紀となり四半世紀の今年は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標年の2030年まであと5年の節目となり、ゴールの現実的な達成を見据えてさまざまな動きが間違いなく強化をされることになります。年々社会に浸透をしつつある持続可能性への意識は常識として定着し、それを前提に事業を組み立てていかねばなりません。 2040年、2050年を見据えた新たな概念も立ち上がってくるのではないかと思われます。時代を先取りした動きも敏感に察知したうえで、変化を恐れずさまざまな取り組みに果敢に挑戦していかなければならないと思います。4月13日~10月13日に開催される大阪・関西万博で、展示会場における各国の展示などを通じて新たな世界標準が注目されれば、日本国内で進む変化を加速させていくことは間違いありません。 そのような背景を考えると、今年は昨年以上にさまざまな変化に見舞われ、適宜・適切に対応することが求められる年になると思われます。変化が事前予測可能なものならどれほど楽かと思いますが、現時点で思い当たりもしない変化も襲ってくると最初から覚悟をした方がよさそうです。 大事なのは、いかなることも受け止められる「対応力」だと思います。本命の策が駄目でも次善の策、さらには3番目以降の策まで用意するなど、どんな変化にも対応できる懐の深さやフットワークの軽さをいかに保つかが重要です。また、予測がつかないことが起きた時でも柔軟に対応できるよう、“遊び”となる部分を残した経営戦略をこれまで以上に検討しておく必要があるのではないでしょうか。 日刊水産経済新聞新年号では本号と6日号を中心に「対応力」を全体のテーマに取り上げました。昨年までの厳しい環境下でも「対応する」ことで難局を打開した、もしくはまさに打開しようとしている注目の動きを、それぞれの分野から取り上げてご紹介しております。本号の2ページ目以降では、「先端技術」から始まり「養殖生産」「代用」「新しい働き方」の大きく4つの視点から「対応する」トピックスを取り上げました。また、5日後の6日号では「魚惣菜」「業界横断」に注目し、それぞれ「対応する」という観点から取り上げる予定です。たくさんの変化に直面するであろう今年を乗り切るうえで、皆さまの道しるべとしてご参考にしていただく意味でご一読ください。 さて、日刊水産経済新聞では昨年8月から、14年以来10年ぶりに電子版サービスを更改しました。紙面同様の形式で閲覧するタイプの旧・電子版サービス「スイケイデジタル」を一新し、パソコンやスマートフォンで閲覧しやすいタイプの新電子版サービス「SUIKEI電子版」に移行する大改革を行ったところです。新サービス開始からきょうで5か月が経過した今もサービスは日々進化を続けており、皆さまから寄せられる声に耳を傾けてより使いやすく、見やすく、サービス内容をさらに充実させることに努めています。今後も皆さんに愛される「SUIKEI電子版」を実現してまいりたいと思いますので忌憚(きたん)のないご意見をお願い申し上げます。 「乙巳」の今年、困難に直面する水産業界が成長していく足掛かりの一年となることを願いますとともに、水産総合専門紙として価値ある情報を広く伝えることに注力してまいります。加えて従来メディアの枠を超えた部分でも皆さまのお役に立ち、頼りにされる取り組みを日々模索をしてまいりますので、今年もどうぞよろしくお願いします。(水産経済新聞社 編集局長 八田大輔)
2025年1月1日 05:00 投稿
2025年1月1日 05:00 投稿
能登地震、切れ目なく支援 明けましておめでとうございます。 令和七年の新春を迎え、皆様の御健勝をお祈りいたしますとともに、我が国農林水産業及び農山漁村の一層の発展に向けて所感の一端を申し述べ、年頭の御挨拶とさせていただきます。 能登地域においては、昨年の元日に発生した令和六年能登半島地震、九月の豪雨により、多くの被害が発生いたしました。 地震と豪雨からの復旧・復興を一体的に推進するため、農地・農業用施設の復旧などの総合的な支援対策を講じ、農林水産業の再開を切れ目なく支援してまいります。 我が国の農林水産業は、農地を守り、山を守り、漁業を通じて国境を守る、といった役割を担っている、まさに「国の基」であり、国民の皆様にとってかけがえのないものです。 今まさに、日本の農政は大転換が求められています。このため、初動五年間で農業の構造転換を集中的に推し進められるよう、農地の大区画化、共同利用施設の再編・集約化、スマート農業技術の導入加速化など、計画的、かつ集中して必要な施策を講じることにより、強い生産基盤を確立し、人材の確保を図ってまいります。生産基盤を次世代に 国家の最重要課題 本年における農林水産行政の主な課題と取組の方針について申し述べます。 ■食料安全保障 食料安全保障政策については、世界の食をめぐる情勢が極めて不安定な要因を抱えている中、我が国の農地を最大限活用し、国内の農業生産の増大を図り、食料自給率を向上させることが重要です。その上で、安定的な輸入と備蓄の確保を図るため、輸入に係る調達網の強靱化等に取り組んでまいります。 ■合理的な価格の形成 資材費等の恒常的なコスト増を生産者だけで賄うことが困難となる中、国民の皆様に持続的な食料供給を可能とするためにも、合理的な価格の形成が必要です。 このため、生産、加工、流通、小売、消費に至る食料システム全体で、関係者の合意により合理的な価格の形成を推進する新たな仕組みを検討してまいります。 ■農林水産物・食品の輸出促進 国内市場の縮小が見込まれる中、食料の供給能力を維持するためには、輸出を促進することで、農業・食品産業の生産基盤を確保していくことが必要です。 このため、中国に対しても、日本産水産物の輸入解禁の早期実現、日本産牛肉の輸入再開、精米の輸入拡大を求めてまいります。また、輸出先国の規制・ニーズに対応した輸出産地の育成、非日系も含めた新市場の開拓、サプライチェーンの強化、優良品種の戦略的な保護・活用などを推進してまいります。 ■環境と調和のとれた食料システム 環境と調和のとれた食料システムの確立が、基本法の基本理念として新たに位置付けられました。 環境負荷低減の取組の「見える化」、J―クレジット制度の活用の推進、補助事業において最低限の環境負荷低減の取組実践を義務化するクロスコンプライアンス等を実施してまいります。 ■食品産業 食品産業については、食料システムの持続性の確保に向けた、食品事業者の取組を促進するための新たな仕組みを検討してまいります。 また、産地・食品産業が連携した国産原材料の安定調達、フードテックなどの新技術の活用等による新たな需要の開拓等を推進してまいります。 ■水産業 水産政策については、複合的な漁業を推進するため、複数の魚種等を対象とできる漁業共済制度の検討を進めてまいります。 また、世界第六位の排他的経済水域を誇り、大きなポテンシャルを持つ日本の水産業の維持・発展を支えるため、担い手の育成・確保や高性能漁船の導入、スマート化に向けた取組を進めてまいります。さらに、漁村の活性化に向けて、インバウンドの需要開拓や、地域資源等を活用する海業の全国展開を推進してまいります。 あわせて、海洋環境の変化に対応するため、水産資源管理を着実に実施するとともに、漁業経営安定対策を講じつつ、新たな操業形態への転換、輸出拡大等、水産業の成長産業化を実現してまいります。 また、ALPS処理水放出を受けた、一部の国・地域による科学的根拠なき輸入規制の撤廃を求め、水産事業者の取組への支援に引き続き万全を尽くしてまいります。 ■東日本大震災からの復興 東日本大震災から、まもなく14年が経過します。 原子力災害被災地域において、依然として営農再開や水産業・林業の再生、風評払拭等、取り組むべき課題があります。引き続き、万全の支援を行ってまいります。 以上、年頭に当たり、農林水産行政の今後の展開方向について、私の基本的な考え方を申し述べました。我が国の農林水産業を生産者の皆様が「やりがいと、希望・夢」を持って働ける産業としていくとともに、その生産基盤を次の世代に確実に継承していくことは、国家の最重要課題であります。ときにはこれまでの殻を破る大胆な政策転換にも挑み、これらの課題に取り組んでまいります。(抜粋)
2025年1月1日 05:00 投稿
2025年1月1日 05:00 投稿
地球温暖化の影響から漁業を取り巻く環境が大きく変化し、これまでの経験と知恵だけで対応できない時代になりつつある。そんな中で頼りになるのが技術。膨大なデータのもと先の予測や情報収集に威力を発揮し、間違いを修正しながら成長していく生成AI(人工知能)も水産業において頼れる相棒になる時代がくるかもしれない。研究途上ながらも、確実に進化している水産情報技術の今を紹介する。 「喉元過ぎれば熱さを忘れる」――それでも昨年夏の暑さは忘れ難い。最高気温が25度C以上の夏日は、東京都心で10月24日にも発生、ついこの間まで夏だったのだ。ただ海の水温上昇は、陸以上に激しい。われわれは今後も海の恩恵を受け続けられるのだろうか。 島国日本は、2本の暖流と1本の寒流に囲まれており、この海流が日本の気候を支配している。また暖流の黒潮と寒流の親潮の存在が、日本の漁業に深く影響していることもよく知られている。 だが、2010年代半ばから親潮が北へ後退した。17年夏に発生した黒潮の大蛇行は、7年以上たった現在も継続している。さらに22年秋以降は、黒潮から東へと続く流れ(黒潮続流)が異常に北偏し始めた。 気象庁によると、100年当たりの海面水温の上昇は、世界が0・61度Cに対し、日本は1・28度Cと約2倍のペースで上昇している。地球温暖化という「変化」によるものだが、ここに黒潮北偏という「変動」も発生。23年7月に三陸沖で行った海洋内部の調査で、平年より約10度Cも高い水温が観測された。いかに日本近海で水温が激変しているかが分かる。 冷たい親潮に乗って三陸沖へ南下したい魚はサンマやサケ、マサバ、マイワシなど数多い。しかし、これら魚種が日本沿岸に近寄りにくい海況が続く。また、水温上昇で大気への熱や水蒸気の供給量が増加し、台風や豪雨などの気象災害も長期的に増加、多くの漁業でシケ休漁が増えている。「変化」か「変動」か 日本周辺の大気・海洋環境の持続可能性を研究する、文部科学省の学術変革領域研究「ハビタブル日本」で代表を務める東京大学大気海洋研究所の岡英太郎教授は、黒潮の北偏を「変動ととらえる方が妥当だ」と解説した。黒潮大蛇行は過去にも発生した記録があり、観測史上2番目に長かった1975~80年の時には続流の北偏が生じたが、やがて元に戻っている。 ただ、当時の北偏は岩手県沖あたりまでで、八戸沖まで到達した今回の大蛇行の方が顕著であり期間も長い。 そもそも黒潮大蛇行は、90年までは頻繁に発生していた。だが90年12月以降は2004年7月から翌年8月に一度現れただけで、長らく途絶えていた。ところが7年前に突如復活し、長期化している。「分からないことだらけ。『なぜそうなったのか』という仕組みをも理解できていない」と漏らす。現象の時間規模の長さに対して、観測の蓄積が少ないことが大きい。 ただこの間に、海洋観測は大きく進化している。人工衛星で海面水温や流速、海面高度などが分かるようになった。海洋内部の変動を監視する小型観測機器(アルゴフロート)は、24年1月時点で3879台が世界の海に分布している。そのうえで気象観測船などの調査により、海洋の長期的な変動がとらえられ、気候変動との関係を明らかにしている。 では黒潮の大蛇行や北偏はいつ終わるのか。親潮が再び東北沖まで南下することはあるのか。こうした点を予測することはできるのだろうか。海面高度に着目すると ハビタブル日本で海洋極端現象と生物資源との関係を探る、A03―7班代表で気象庁気象研究所の碓氷典久主任研究官は、北太平洋に吹く風と海面高度に着目する。 海流は海面高度の高さ(等値線、山の等高線をイメージすると分かりやすい)に沿って流れる傾向がある。海面の「谷」の周りを反時計回りに流れるのが亜寒帯循環で、海面の「山」の周りを時計回りに流れる循環が亜熱帯循環だ。さらに、等値線の間隔が狭いところでは流れが強くなる性質がある。また、このような流れの構造は、地球の自転の影響によって時間とともに西へと伝わる。 つまり日本の東、北太平洋の海面高度をみると、数年後の日本近海が予測できる。 ところが現在の北太平洋中部海域の海面には高さがなく、等値線の間隔は広い。亜寒帯循環も亜熱帯循環も弱い。さらにこの2つの循環は、北へシフトしている。これは、北半球の中緯度帯を西から東へ向かって吹く偏西風が北側へとズレているためである。 こうした環境で現在は黒潮の流量が少なく、親潮は北に後退し大蛇行および北偏が発生。「今のところ黒潮の勢いを強める予兆がない」という。 実際に1975年からの大蛇行が解消する時、北太平洋中部の海面高度は高かった。「同じシナリオを想定するなら、今はまだ解消の時期ではない」と分析。ただ、黒潮大蛇行が発生するメカニズムとは紐(ひも)付けできても、黒潮続流が北へ張り出す因果関係はまだ解明の途上にある。海の天気図で機械学習 このように黒潮や親潮といった海流の変動は北太平洋全体の変化、ひいてはその上を吹く風と関係している。これらは熱帯や北極の変動ともつながっており、だからこそ「黒潮の長期変動を考えるには全球の変動を知る必要がある」(岡代表)というのだ。また予測ターゲットは、これ以外にも多岐にわたる。 日本周辺の海洋の変動・変化と、それが気象や水産資源に与える影響を解明するため、2024年度からハビタブル日本が始まった。5か年をかけて「日本周辺域の温和な気候、豊かな水・水産資源は、今後も持続し得るか」の問いに答える。計9班で構成する研究チームは、大気や海洋の物理的アプローチだけでなく、化学や海洋生態、水産など分野が連携しながら、統合的な大気海洋学の創出に取り組んでいる。 幸いにもコンピューターモデルの高解像度化が進み、過去の海洋の状態を細かく再現できるようになった。モデルに観測データを組み込んだ「再解析データ」は過去60年をさかのぼることができ、その間の「海の天気図」が精度を増している。例えば、再解析で得られた1979年1月の図(2)と、2024年1月の海面高度の図(3)を比較すると、黒潮大蛇行や北上する続流の形が酷似していることが分かる。このような再解析データは、物理法則に基づく将来予測の土台となる。 加えて近年、気象の分野では高い精度で天気予報が出せるAIが登場してきた。岡代表は海洋についても再解析データをAIに機械学習させることで、「新たな予測ができる可能性はある」とし、予測精度の向上に期待を込める。 繰り返すが黒潮の変動は、未知なる部分が多い。過去の研究の積み重ねの上に、さらなる課題もみえてきた。それでも岡代表は過去に大蛇行が発生した時の海洋環境や生物分布を把握し、将来予想に用いるモデルと比較する過程で「必ずや発見がある」と展望する。
2025年1月1日 05:00 投稿
2025年1月1日 05:00 投稿
漁業情報サービスセンター(JAFIC)は人工知能(AI)を使ったサンマの漁場予測サービスを展開している。2021年の本格運用開始から進化を続け、すでに漁業の現場で効率的な操業をサポートしている。 現在は業界団体などからの要望に応えて、4魚種の漁場予測サービスを配信している。アカイカ、カツオ、ビンナガでは、「一般化加法モデル(GAM)」と呼ばれる統計モデルを活用しており、水温や流速といった複数の情報と計算式を使って可能性のある漁場を導き出している。 一方、サンマでは機械学習の一つ「ディープラーニング(深層学習)」を初めて採用した。資源量や実際の漁場位置、その周辺水温のパターンなどを材料にAIが有望な漁場を提示する。 このAI漁場予測では新たな取り組みが始まっている。23年からはJF福島漁連が採択された「がんばる漁業復興支援事業」にJAFICが協力。 漁業者が協力しやすいよう専用アプリを開発し、福島県のサンマ船5隻から空振りや想定外の場所での漁獲といった情報を提供してもらう環境を整えた。このデータをAIに学習させることによって、今では翌日から最新の漁獲情報を踏まえた予測も行えるようになっている。 サンマのAI漁場予測を開発したシステム企画部の矢吹崇システムグループリーダーは、現状の精度について「統計的に言い表すのは難しいが、比較的良好といえる」と分析する。漁業者の反応としては、まだ前日の水揚げ結果や外国船の操業実態などを考慮して自身の経験を重視する傾向にあるが、経験の浅い若手漁師らには「よい参考になる存在だ」と語る。 AI予測は精度を向上させただけでなく予報期間を2日先まで伸ばしたほか、直近では近年の水揚げ主体である小型サイズの割合を提示する機能の検討も進めている。現在は「範囲を公海上まで拡大できないか」との要望が寄せられており、信頼性の高い水温図をどう作成するのかといったハードルはあるが「何か対応できないか検討したい」と話す。 漁場予測におけるAIについて矢吹グループリーダーは「計算手法の一種であってすべてを解決する万能なツールではないが、理論上はすべての魚種に応用できるなど、さまざまな展開が考えられる」と期待を寄せる。 今後の展望については「サンマのような水揚げが著しく減少した魚種では、漁場予測の重要性が増している。現場にもっと頼りにされる存在になるためにも、一段と精度を上げていきたい」と伝えた。
2025年1月1日 05:00 投稿
2025年1月1日 05:00 投稿
増え続ける水産物需要に応えるためにも、養殖への期待はますます高まっている。中でもサーモンは、生産効率を向上させるために各社が大規模な計画を発表。単純計算で2027年には3万トンのサーモンの供給増が見込まれる。世界的な人口の増加とタンパク質需要の増加の現実がありつつも、消費マーケットのサイズと供給のバランスが崩れれば価格は急落しかねない。増え続ける日本産サーモンの勝機を探りたい。 発表されているサケ・マス養殖の大規模な生産拠点の中でも最多を計画しているのは、伊藤忠商事と極洋が販売契約を結んでいるソウルオブジャパン。当初、25年の初出荷を発表していたが、27年の出荷を予定。年間1万トンの生産量を発表している。 次いで大きいのが、丸紅が10年間の販売契約を結んでいるプロキシマー。27年にセミドレスで5300トンで、原魚換算すると6400トンとなる。 三井物産が50・4%を出資しているFRDジャパンは27年に3500トン、ニチモウ、九州電力、西日本プラント、井戸内サーモンファームが取り組むフィッシュファームみらいは24年の300トンの実績から3000トンまで増やす計画。マルハニチロと三菱商事が出資するアトランドは27年に2500トンとしている。 各社の生産計画の数量を単純に積み上げると、2027年ごろには陸上養殖だけで2万5400トンの供給がプラスになる。 加えて、青森を主な拠点として海面でトラウトサーモンを養殖するオカムラ食品工業では、26年に5000トンを見込む。アトラン市場拡大なるか 魚種はアトランティックサーモンが多い。ノルウェーではすでに140万トン超、次ぐチリでも70万トン超を生産。日本は切身や寿司種などで消費され、23年度の輸入量は2万6000トン程度。陸上でアトランを養殖するソウルオブジャパン、プロキシマー、アトランドの生産量を合わせると1万8900トンで、23年度の輸入量を消費量ととらえれば、マーケットをほぼ倍増させる必要がある。各社ともに輸入アトランティックマーケットを国産へ置き換え、さらに国内マーケットの拡大、近隣諸国への輸出を目指しているが簡単ではない。 現状では生鮮向けに空輸されるアトランだが、国内生産が実現すれば二酸化炭素(CO2)削減によるサステイナビリティへの貢献、周辺諸国へは日本産ブランドなどをアピールポイントとする戦略だ。 一方、日本国内での消費が主力のトラウトは陸上養殖6500トンとオカムラの海面養殖を合わせると1万1500トン。国内のサケ・マスマーケットの総供給量は23年は38万トン程度と試算され、陸上、海面合わせて3万トンの供給が増えると、マーケット全体への影響は計り知れない。 消費拡大の課題とともに、輸入原料が主力の魚粉が欠かせない餌と、やはり輸入に頼っている種苗の確保、加えて電気代などのランニングコストをどれだけ下げられるかも、大規模養殖事業の成功のカギとなっている。
2025年1月1日 05:00 投稿
2025年1月1日 05:00 投稿
長く日本人の食卓を支えてきたメジャーな魚種の多くが消滅の危機に直面している中で、世界各国から輸入される水産物はますますその重要性が増している。にもかかわらず昨今は世界中で水産資源が怪しくなって、価格にかかわらず買い付け対象そのものがなくなるケースが増えてきた。世界を舞台にした水産物の争奪戦はどんどん苛烈になっている。主な輸入商材の昨年を振り返り、今年を展望してみた。 丸3年もの間、世界の経済を大混乱におとしめた新型コロナウイルス禍が明けた途端、世界中から訪れるインバウンド(訪日観光客)の賑わいもあって、日本の経済活動もようやく正常化に向かいつつあるが、一方ではおよそ30年ぶりのインフレを招き、次第にモノ不足が表面化してきた。 それは日本人なら日常的に食しているであろうサケや塩サバの切身や、スリ身を原料とするカニカマや特別食としての本物のカニ、あるいは輸出の花形ともいえるホタテ製品など、多くのなじみある魚の供給環境が激しく変化していることに、消費者がもっと注意を向けるべき時代が訪れているといえるだろう。 例えばサケ・マス製品は昨年、天然物の代名詞でもあるアラスカのベニが大きく減産し、自国の需要が賄えなくなって価格が高騰。それ以上にかつてない小型化が進んで、サイズと値段が極端に乖(かい)離したことで日本側は買い付けを断念、輸入量は3分の1に激減した。 北米ベニの小型化は筋子の減産にも直結し、伝統ある塩蔵ベニ子も低グレード化したうえに味付け筋子の原料となる冷凍筋子も減産高値に。それどころかマスやシロザケの不漁でイクラの原卵も世界的に不足し、秋サケの不漁が火に油を注いで国内外でとんでもない価格に行きついている。 ランチメニューの定番で庶民の味方だったサバも、韓国を含めて日本近海の不漁や大西洋の減産で世界的に需給が逼(ひっ)迫。日本は輸出の柱を失って円安を生かせなかったほか、輸入物も過去最高値でも中東・韓国に買い負ける始末。 大西洋では冷凍カズノコの親となる抱卵ニシンにシシャモも不安定で急減し、バレンツ海のシシャモは今季の禁漁が決まった。アフリカに目を向ければ、タコの価格決定権はスペイン勢に牛耳られたままだ。 エビやマグロ、ウナギなど持ち直したものもあるが、長引く円安環境と流通コストの高止まりで調達価格は高く、いったん落ち着いたかにみえた価格は再び底上げされつつある。 そして米国の禁輸で日本が優位に立っていた極東のカニの買い付けについても、トランプ大統領の再就任以後のウクライナ情勢次第では、大きく方向転換を迫られる可能性が高い。 したがって今年の貿易事業は、はなから(1)資源枯渇のリスクと(2)買い負けのリスクに加え、(3)トランプ2・0という未知数の3つの避けがたいリスクにさらされているといえるだろう。先が読めないトランプ2.0 日本の水産物輸入は昨年、辛うじて前年並みを維持できたと推定される。カズノコや鮭卵など高単価の商材が減る一方でサケ・マスやエビ、マグロなど大型商材が増えたためだが、ただ予想される年間217万トン前後のうち魚粉・ミールが20万5000トンほどを占める見通しで、これらを除くと2年連続で200万トンに届かなかった可能性もある。一方、輸入金額は海外市況の高止まりや円安で、3年連続で2兆円は超える見通しだ。 これに対して輸入大国の米国と中国は、昨年10月末の実績で米国が前年並みまで金額を伴い回復してきたほか、日本産の減少で中国は数量で6%減り、金額も1割ダウンしているが、中国は前年まで2年続きで高い伸びをみせていたことで、多少減ったからといって大きく落ち込んでいるわけではなく、年間400万トン超の高水準は維持したとみられる。 米国にしてもロシアの完全な禁輸、対中高関税でブレーキがかかったままだし、これが中・ロとも従前のように全く制裁が効いていなかったとするならば、昨年はおそらく過去最多の380万トン、およそ300億ドルというボリュームに達していた可能性さえある。 ただ今年の水産物貿易は、別掲の通り流動的要素が多い。中でも今月就任するトランプ米大統領の考え次第では、モノやカネの動きが劇的に変わる可能性がある。特に対中関税が水産物にも及べば、ただでさえ高騰している底魚類が中国国内に停滞したり、欧州へと加速する可能性もある。 また、公言している通りウクライナ情勢に終止符が打たれれば、対ロ禁輸が解けてカニや底魚類が再び米国に向かい、特にカニは日本の優位性が崩れて買い負ける可能性大だ。ちなみに禁輸前に米国がロシアから輸入していたカニ類は、タラバとズワイを合わせておよそ3万トン、10億ドルに達していた。 日米間では輸出向けホタテ製品の影響が心配されるが、例えば米国産牛肉の輸出拡大の駆け引きに使われる可能性も考えられる一方、中国向けに日本の禁輸が解ければ貝付き冷凍が再び中国を目指すようになるかもしれないし、輸出が止まれば国内市況に影響を及ぼす可能性もある。 目下のところ日本産水産物に高関税をかける話はなさそうだが、「トランプ2・0」は為替の動向を含めて全く予測がつかめず、直接・間接問わず、極めて流動的で複雑な流通の変化をもたらす可能性があることを想定しておく必要があるだろう。
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