国際機関、NPO、産業界、教育界、政界など、国内外のさまざまな場所でリーダーシップを発揮する上智大学の卒業生。その資質を形づくる、上智ならではの教育環境について、曄道学長が語ります。
語学力や地位は、リーダーの条件ではない
上智大学で学ぶ人には、国際社会でリーダーシップを発揮できる人材、グローバルリーダーをめざしてほしいと考えています。
日本では、語学に堪能で地位の高い、いわゆる「エリート」がグローバルリーダーだと考えられがちですが、世界が考えるグローバルリーダーは違います。所属や役職を問わず、国際社会においてコミュニティの活性化を先導する人、あるいは、国際社会における課題解決を率先して行う人が、国際基準のグローバルリーダーであり、私たちもそう考えています。
真のグローバルリーダーが備えるべきものを考えたとき、語学力やコミュニケーション力はもちろん大切で、その進化は定量的に測ることもできます。一方で、定量化できない姿勢や考え方がなければ、深いコミュニケーションや人との信頼性を高めることはできず、先導者にはなり得ない。上智の教育が重視しているのは、まさにこの資質の部分です。 例えば学科や専攻選び。多様な人々との交流を前提に考えると、大学で学科や専攻を選ぶという行為は、自身のバックグラウンドを定める意味合いを持ちます。価値観が異なる人と話すときに、バックグラウンドとしての専門性が伝われば、相手の信頼感が増し、相互の考え方を理解する拠り所になります。こうした「国際社会を生きるにあたっての、大学で専門分野を学ぶ意義」を理解していることが、グローバルリーダーとしての資質の一つです。
開かれた環境、タフな経験が、資質を育てる
資質を育てるために大切なのは、環境です。教養を学び、学位の分野に応じた専門を学ぶ。極論すればその構造自体は、どの大学も大きく変わりません。異なるのは、学ぶ環境。上智は環境の重要性を強く認識し、力点を置いて整備してきました。
ベースとなるのは、世界99か国・地域から留学生が集い、文理問わず全学部・研究科が集まるワンキャンパス。国際性と学問分野という両面で多様性を誇ってきたこのキャンパスに、いま、世代や職業という多様性が加わり始めています。
高校生が研究者と共に探究活動を行う「せかい探究部」、ビジネスパーソンの学びの場「プロフェッショナル・スタディーズ」、すべての人に開かれた生涯教育「上智地球市民講座」。2023年7月設置のSophia Future Design Platform推進室が手がけるこれらの施策を通して、高校生、大学生、社会人、あらゆる人々が、それぞれの志をもってキャンパスに集い、学んでいます。視点や価値観が異なる多様な人との交わりは、グローバルリーダーの資質の基盤となります。
リーダーの資質を養うための、卓越した経験も提供してきました。アフリカや東南アジアなど困難を抱える地での研修や、その解決をめざすニューヨーク国連本部での研修は、上智の特色です。2019年には、ジュネーブ国際・開発研究大学院との間で、上智大学の学部と先方の大学院を計5年間で卒業・修了するプログラムを開始。2024年度には、南米・カリブ地域の発展を目的とする国際機関、IDB(米州開発銀行)ワシントン本部でのインターンシップも始まります。 多様性に満ちたキャンパスでもまれている学生にとっても、これらはタフな挑戦です。いずれも必修ではなく、挑戦するか否かはあえて学生に任せています。自らの意思で背伸びをしないと届かないハードな経験が、先導者たる志、信念を培うはずです。
資質を社会実装する経験を、学部時代に
資質を社会で生かす、実行力を育てる取り組みにも力を入れ始めました。社会実装の体験の場として、2023年に短期集中型のアントレプレナーシップ養成講座を開講したのに続き、2024年は「Sophia Entrepreneurship Network(仮称)」を立ち上げます。
ご存じのとおりアントレプレナーシップとは、起業だけを見据えたものではなく、創造的に新たな価値を生み出す姿勢のことであり、これからの時代にどんな環境においても必要とされる資質です。グローバルリーダーが備えるべき、国際通用性を持つアントレプレナーシップとはいかなるものなのかを考えながら、国内外のネットワークを形づくっていきます。 上智が提供する大学での学びは、「○○学を修める」にとどまらず、国際社会に通用する資質を身につけることを目的としています。社会変化がこれだけ激しい時代、果たすべき役割、かけられる期待は、そのときの環境、立場に応じて変化するでしょう。それらがどうあろうと、自分らしく応えられる柔軟な資質を育てたいと考えています。