早稲田大スポーツ科学学術院 スポーツ科学部・広瀬統一教授
■子どもたちのミライをつくる
今年も気付けば12月。冬休みやクリスマス、お正月など年末年始はイベントが盛りだくさん。子どもたちにとっては、普段なかなかできないことに積極的に取り組めるチャンスでもあり、テレビや動画で目にする一流選手たちのプレーに刺激を受けてサッカーの練習に熱中する子どもたちもいると思います。
そんな時、練習の内容や質はもちろん、毎日の食事で何を食べるのかも大事だということをご存知でしょうか? 本来の力を十分に発揮するためには「5大栄養素」をバランスよく摂ることが重要で、運動で消費した栄養素を補給してリカバリーを行うことで、身体の成長につなげることもできます。また運動の前後では、消化吸収の負荷が少なく、バランスの良い栄養を摂取することが大事です。
では、どんな食事が望ましいのでしょうか——。おにぎりやパンといった主食だけを食べ続けると、お腹は満たされても身体に必要な栄養バランスが整いません。栄養素はチームワークで働いてこそ力を発揮するため、主食・主菜・副菜がそろっており、栄養バランスに優れた献立を準備することが理想的です。
しかし、「忙しくてバランスの良い献立の準備なんてできない!」、「屋外や遠方で食事の準備は難しい」といった声は多いと思います。そんな時は5大栄養素をバランスよく摂れるカロリーメイトを頼ってみるのも良いのかもしれません。カロリーメイトはブロックタイプ・ゼリータイプ・リキッドタイプの3種類があり、美味しく手軽に5大栄養素を摂ることが可能。ビタミン(※1)も1日に必要な量の約半分(※2)が含まれており、子どもたちにもピッタリです。
そんなカロリーメイトが今回、ジュニア期の子どもたちを対象としたトレーニングイベント『カロリーメイトpresentsジュニアスポーツ応援企画』を12月27日と同28日に実施予定。身体を動かしながら学べるトレーニング体験や、栄養セミナーなど、充実の内容となっています。そのイベントに先駆け、今回は早稲田大スポーツ科学部の広瀬統一(ひろせ・のりかず)教授に「ジュニア期の適切な運動と栄養補給・休養」について詳しい話を伺いました。
■ジュニア期の運動・トレーニングについて
——ジュニア期の運動・トレーニングが子どもの発育発達に与える影響は、どのようなものがあるでしょうか?
広瀬教授 まず大きく4つあると思っています。1つは「身体」への影響、もう1つは「認知」への影響。認知への影響とは、体をつくるための食事や睡眠、生活スタイルを改善するための知識を高めることです。そして「心理面」の影響、これは楽しいとか、自己肯定感や自己効力感を育んでいくこと。あとは「社会性」への影響、社会とのつながり、チームスポーツならメンバーとの関わりなどになります。
ジュニア期は、単純にスポーツの技能を高めるだけではなく、こういった4つのこと(身体・認知・心理・社会)が、総体的に高まっていく、高められるような取り組みをしていく必要があると思います。
——ジュニア期は競技力向上以前に、身体の発達が大事になると思いますが、トレーニングのほかに気をつけるべき要素はありますか?
広瀬教授 あります。身体を作るのは「運動」と「栄養」と「休養」ですので、運動だけでなく、いかに休養し、いかに栄養をとるのか。この3つのバランスがすごく大事です。
あとは、心理的なサポートも大事です。過度なプレッシャーをかけないようにするとか、スポーツを通じて自分が成長できる、成長していることを実感させる機会を作ること。自分が成長するためのサイクルを身につけられるように大人が関わっていく。ライフスタイルを整えることもそうですし、そういった取り組みを総合的に行うことがすごく大事なのではないかと思います。
■ジュニア期のトレーニング方法について
——各競技に特化したスキルトレーニング以外に、重要視されるトレーニングはありますか?
広瀬教授 まず大きな考え方として、子どもたちがどう発達していくかを考えたときには、できるだけ大きな家を作っていくイメージを持ってもらいたいです。大きな家を作るには当然、広い土地が必要です。ジュニア期には、この広い土地をいかに作るかを考える。
ただ、広い土地を作れても、地盤が緩ければ地震があった時に土が崩れて家も倒れてしまう。人に例えると、何か対応できないような動きを強いられたときに、ケガをしてしまう。そうなると、広いだけでなく安定した土地が必要になる。ただし、広く安定していても、整地されていなければ家は建てられない。
もちろん、子どもたちが将来、どの程度の家を建てたいと思うのかはわからないです。小さい家かもしれないし、ビルを建てたいという子もいるでしょう。その子どもたちが将来、何かを建てたいと思った時に、何でも建てられるような土地をつくるというのがジュニア期の考え方です。
広い土地とは、「多様な動き」ができるということ。安定とは、「バランス」のことで、これらは基礎運動やコーディネーションに含まれます。そして整地とは、「調整力」になるので、コーディネーションです。ジュニア期に基礎運動とコーディネーションをしっかりと高めた上で、家の土台=基礎にあたる持久力・筋力・瞬発力・スピードなどの基礎体力や、建物の屋根となる専門体力・専門技術を高めていく。このような全体の構造をイメージして、その子や、その年代で何が必要なのかを考えて取り組んだり、何が足りていないのかを見極めて経験できるように工夫していく、そういう考え方を持っておくことがいいのではないかと思います。
——運動神経はどの時期に発達し、効果的に発達を促す方法はあるのでしょうか?
広瀬教授 正確な運動神経とは、感覚神経と運動神経といわれる神経の筋みたいなものを指しますが、おそらく一般的に言われている運動神経は、目的に合わせて適切に運動を作り変えるという、いわゆるコーディネーションの考え方だと思われます。このような能力の高まり度合いとしては、未就学の頃から小学生の間が一番高いでしょう。
しかし、20歳や30歳でも高まらないことはない。なので、限界期、すなわちある年齢からは高まらないということではありません。一方で、敏感期といった高まりやすい時期はあります。それは、小学校の低学年から中学年、あるいは高学年ぐらいまでなので、その時期にしっかり取り組むことは大事です。
——広瀬教授は長く日本サッカーの最前線で活躍されてきたと思います。特にサッカーをする子どもたちにとって、重要なトレーニングは何かありますか?
広瀬教授 まずは、多様な経験を積むことが重要です。様々な課題や環境での経験を重ねることで、柔軟な対応力を養うことができます。さらに、常に自分を取り巻く環境、特に相手や仲間との関係性を意識することも大切です。球技は、単にボールと自分の関係だけで成り立つものではなく、相手との関係、そして仲間との関係を含めた全体的な相互作用の中で展開されるものです。これらの関係性を理解し意識することが、競技において必要不可欠な要素となります。
仲間たちとどう関わり、または仲間を通じて自分の力を最大限に発揮できるかを考えることが重要です。同時に、相手に対してどのように働きかけることで、相手の力を最小化し、自分たちの力を最大化できるか、さらには相手を上回ることができるかを考える必要があります。単に技術が優れているだけでは、競技全体を理解し、成功することはできません。例えば、リフティングが上手だからといってサッカーができるわけではありません。技術だけに頼るのではなく、人との関係性を意識し、チーム全体でどう機能するかを考えることが重要です。こうした視点を持つことで、よりバランスの取れた選手が育ち、競技全体の質を高めていくことができるでしょう。
■ジュニア期の栄養について
——最近は補食という言葉もありますが、ジュニア期も大人と同様で、トレーニング前後の栄養補給は大切でしょうか?
広瀬教授 大事ですね。一般的には、学校が終わって夕方に練習することが多いです。給食を12時から13時くらいに食べて、17時から練習となったら、昼食後4〜5時間経って消化されているので、少しエネルギーを補うのも良いでしょう。
主に糖質やタンパク質。そういったものを少し食べる。少量というのが大事。消化にまた1〜2時間かかるので。練習が17時からで、直前にしっかりと食事をとってしまうと、消化されないまま運動することになる。すると運動パフォーマンスも下がるし、栄養の吸収効率も悪くなる。練習の1〜2時間くらい前をある程度想定して、適量の補食を摂ることが大事です。
あとは終わってからですね。エネルギーをかなり使っているわけです。そうすると、その後リカバリーのためのエネルギー補給というのも必要。だいたい30分から1時間の間、そこがゴールデンタイムと言われています。そこで糖質とタンパク質を同時摂取したほうが吸収率は高まる。牛乳のような水溶性のタンパク質を摂るのも大事だと思います。
ただ、そこで食べすぎると夕食がちゃんと食べられない。基本的な考え方としては、やはり食事は朝食、昼食、夕食。ここでしっかりと栄養を摂る。それ以外のものはあくまで補食なので、その主となる3食に影響を及ぼさないように配慮することがすごく大事です。
——トレーニングを行う子どもたちに、特に大切にしてほしい栄養素はありますか?
広瀬教授 全部ですね。バランスが大事で、その中でもタンパク質とかビタミンが足りていない子も多いと聞きます。最近はアプリで自分の摂った栄養素がどれくらいかわかるものがたくさん出ています。無料のアプリとかで自分の状態を可視化してみてもいいのではないかと思います。
■手軽に適切な栄養補給
そして、人間の身体に必要な「5大栄養素(タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル)」をバランス良く、いつでもどこでも手軽に補給できるのが、バランス栄養食『カロリーメイト』。お馴染みのブロックタイプ以外にも、手軽にスッキリと栄養補給できる、ゼリータイプやリキッド(液体)タイプも展開されている。
広瀬教授も「食べるタイミングがないときは、こうしたコンパクトで栄養バランスのよいものをうまく活用するのも選択肢の1つ」と語り、手軽にバランス良く栄養補給できる点を歓迎した。
■トレーニングセッションと栄養セミナー
12月7日にはプレイベントを実施。最前線で指導を行なっている早稲田大学スポーツ科学部研究科の鎌田晃太郎ストレングス&コンディショニングコーチによるトレーニングセッショと、管理栄養士・公認スポーツ栄養士でもある國學院大學人間開発学部健康体育学科の小林唯准教授による栄養セミナーの2部構成で行われ、小学3〜6年生の18名が参加した。
トレーニングセッションは「体力測定」から始まり、トップアスリートも使用する機器を用いて、多くの球技との関連がある「スプリント」「プロアジリティ」「(スクワット/カウンタームーブメント)ジャンプ」の数値を計測。その後、ジュニア期に最も伸びるとされている“運動神経”を鍛える狙いのもと、これまでに経験したことのない「新しい動きを取り入れたウォーミングアップや、ボールを使ったストレッチ・ゲーム」などで身体を動かし、最後は「陣取りゲーム」で視野や判断力、コミュニケーション力を養うトレーニングを実施した。
普段とは異なるトレーニング内容に加え、レク要素も多く、ボールを使ったメニューなどは、参加した子どもたちからも「面白かった」と好評。小学4年生の男子と参加した親御さんは「体の使い方を教えてくれるところは中々ない」「一人ひとりのデータをとって、一人ひとりに目を向けて見てくれるので参加して良かった」と振り返った。
栄養セミナーでは、「栄養とは何なのか」「なぜ必要なのか」「どんな栄養素があって、どんな効果・影響があるのか」「いつ何をとればいいのか」など、知っているようで知らなかった栄養補給の基礎知識を、小学生にも理解できるように、わかりやすく説明・解説していた。
小学6年生の男子と参加した親御さんは「栄養に関しては意識していたつもりでしたが、実際にきちんと話を聞くことで足りていないところがあったなとか、多くの気づきがあったので参加して良かった」と話し、小6の男の子も「最近そんなに乳製品を摂ってなかったから、牛乳とか摂りなおそうと思っています」と、セミナーの内容に触発された様子だった。
セミナー後には、保護者たちが子どもと共に、専門家のもとに話を聞き行く姿も見られ、「また参加したい」といった声が聞かれるなど、盛況のうちにイベントは終了した。
■ジュニアスポーツ応援企画参加者募集!
そして12月27、28日には、早稲田大学スポーツ科学研究科に在籍するストレングス&コンディショニングコーチの鎌田晃太郎さんが、年齢や成長に応じたトレーニングを指導し、来場した子どもたちにトレーニングを体験してもらうイベントを実施します。
様々なスポーツに共通して必要な、基礎運動とコーディネーショントレーニングを実際に体験しながら学べる絶好の機会です
また、管理栄養士・公認スポーツ栄養士でもある國學院大學人間開発学部健康体育学科の小林唯准教授による、食事と栄養に関するセミナーも開催します。年齢や成長に応じた栄養の摂り方や、おすすめの食事等を親子で学ぶことができます。
By サッカーキング編集部
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