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OBERHEIM OB-XAを踏襲したBEHRINGERの新鋭アナログ・シンセサイザー、UB-XA レビュー

BEHRINGER UB-XA レビュー:往年の名機を踏襲しつつ現代的な仕様を施した16ボイス・アナログ・シンセ

 OBERHEIMのOB-XAといえば、1980年代のポリフォニック・シンセサイザーを代表する名機中の名機で、ヴァン・ヘイレン「ジャンプ」で使用されたことでも有名です。このたびBEHRINGERから、そのOB-XAを踏襲するUB-XAが発売されました。2022年にオリジナルのOBERHEIMが、OB-X、OB-XA、OB-8という往年の3機種を統合したモデルとしてOB-X8を発売しています。UB-XAは、多少のレイアウト、機能の違いがあるものの、かなりOB-X8に近い形状や設計になっている印象です。

真骨頂ともいえる重厚なシンセ・ブラス アナログならではのオート・チューニング機能

 UB-XAは、16ボイス、2VCO、ローパス・フィルター(2ポール/4ポールを切り替え可能)×1、エンベロープ・ジェネレーター×2、2LFOといった構成です。オシレーターはノコギリ波、パルス波、三角波の選択式。オシレーター2にはオシレーター・シンクやフィルター・エンベロープをピッチに反映させるボタンも用意されています。

 キーボードは61鍵のセミウェイテッド鍵盤で、ベロシティやポリフォニック・アフタータッチにも対応した非常に弾きやすいものです。ボディもしっかりとした金属製で高級感、重厚感があります。あまりに安っぽい製品もイヤだけど、オリジナルほど大きくて重いと持ち運びも一苦労ですから、重厚感がありながらも持ち運び可能というちょうどいいサイズ感です。

リア・パネル。左から電源スイッチ、AC入力、USB-B端子、MIDI IN/OUT/THRU、フット・ペダル入力のビブラートおよびフィルター(以上TRSフォーン)、フット・スイッチ入力のサステイン、スイッチを押すとA5→A6というようにプログラムを進行させるプログラム・アドバンス、ホールド(以上フォーン)、出力のL、モノラル、R、ヘッドホン端子(以上TRSフォーン)

リア・パネル。左から電源スイッチ、AC入力、USB-B端子、MIDI IN/OUT/THRU、フット・ペダル入力のビブラートおよびフィルター(以上TRSフォーン)、フット・スイッチ入力のサステイン、スイッチを押すとA5→A6というようにプログラムを進行させるプログラム・アドバンス、ホールド(以上フォーン)、出力のL、モノラル、R、ヘッドホン端子(以上TRSフォーン)

 プリセット・メモリーは512種類用意されています。また、2つの音を重ねるダブル・モード、キーボードを分割して2つのパッチを同時に演奏できるスプリット・モードでも、それぞれ35種類のセッティングをメモリーできる仕様です。早速演奏してみると、最初のプリセットであるA1の“Brass Ensemble”からいきなり重厚感のあるシンセ・ブラスで、これぞまさにOBERHEIMの真骨頂ともいえるサウンドです。A3の“Low Strings”も美しく、もうこの2つの音色だけでも心が躍ります。

 本機はアナログ回路なので、オート・チューニング・ボタンを装備。機材本体の温度とオート・チューニングの経過がLCDに画面表示されるのが、“ホンモノのアナログ”という点で楽しめます。また“VINTAGE”という設定がシフト・ボタンを利用したメニューに隠れており、“Ob-Xa”“Ob-8”“Aged”“Modern”など、微妙に異なる8種のサウンド・モードを選択可能。Agedはオシレーターごとにチューニング、パンが若干ずれていて面白い広がりを加えてくれます。

パネル右下のPROGRAMMER部分。LCDはプリセットや各種つまみ、ボタンを操作した際のパラメーターなどを表示。パネル中央下のシフト・ボタンを押して、写真の左から2つ目のボタンを押すと“VINTAGE”モードに。“Ob-Xa”“Ob-8”“Creamy”“Aged”“Gnarly”“Bright”“Modern”“Wider”の8種類から、出力するサウンドの特性を選択できる

パネル右下のPROGRAMMER部分。LCDはプリセットや各種つまみ、ボタンを操作した際のパラメーターなどを表示。パネル中央下のシフト・ボタンを押して、写真の左から2つ目のボタンを押すと“VINTAGE”モードに。“Ob-Xa”“Ob-8”“Creamy”“Aged”“Gnarly”“Bright”“Modern”“Wider”の8種類から、出力するサウンドの特性を選択できる

 コード・メモリー、アルペジエイターのほかにステップ入力のシーケンサーが搭載されていて、鍵盤を押せばプレイ中に移調も可能。短いシーケンス・フレーズを演奏するという感覚は、ハードウェアならではのものと言えるでしょう。

 基本的にはボタンやつまみだけで操作できますが、シフト・ボタンを押しながらのつまみ操作とLCD表示の併用で、さらに細かくセッティングできるようになっています。16ボイスを個別にパン設定できたり、8つのモジュレーション・マトリクス設定があったりと、多機能ぶりを感じさせられました。

スプリット時にはLOWER/UPPERを限定してモジュレーション・ホイールとピッチ・ベンドを使用可能

 OBERHEIMのシンセが一般的なアナログ・シンセと少し違う点として、ピッチ・ベンドとモジュレーション・ホイールの形状が挙げられます。バネ付きのレバーになっており、一般的なシンセと方向が逆、つまり手前に引けばピッチが上がる、またはモジュレーションがかかる、奥に押し込むとピッチが下がるようになっています。これは“慣れ”の問題なので気にすることはないでしょう。そして、オリジナルは右がピッチ・ベンド、左がモジュレーション・ホイールでしたが、現在多くのMIDIキーボードが逆位置になっているため、UB-XAはそれに準拠する形になっています。

鍵盤の左側にあるモジュレーション・パネル。中央のレバーは2つに分かれていて、左がピッチ・ベンド、右がモジュレーションとなっている。そのほかPERFORMANCE LFOの調整や各オシレーターへの制御のオン/オフ、トランスポーズなどを備えている

鍵盤の左側にあるモジュレーション・パネル。中央のレバーは2つに分かれていて、左がピッチ・ベンド、右がモジュレーションとなっている。そのほかPERFORMANCE LFOの調整や各オシレーターへの制御のオン/オフ、トランスポーズなどを備えている

 もう一点、2つのオシレーターのフィルターへの送りも一般的なミキサーの形ではなく、オシレーター1はオン/オフのみ、オシレーター2はハーフとフルで2段階のみ設定する仕様です。ハーフはフル・レベルより約5dB低くフィルターへ送られるようです。LFOは2つありますが、LFO 1はパネル中央左部に。LFO 2は“PERFORMANCE LFO”という名で鍵盤の左にあり、こちらはオシレーターのピッチ、つまりビブラート専用です。LFO 1には一般的な波形に加え、ノイズをサンプル&ホールドしたランダムのほかに、サンプル(SMP)という波形があり、こちらはPERFORMANCE LFOをサンプル&ホールドするというものとなっています。

 ベンド幅は2半音(全音)と1オクターブの切り替えが可能。スプリット演奏しているときにLOWERとUPPERのいずれかに限定して、ベンドやホイールを使用できるのはよく考えられた設計です。

 さて、既にソフトウェア音源で何種類かのOBシリーズ再現製品が発売されていますが、ハードウェアならではの良さを考えると、あまり比較しても意味がないでしょう。そしてOBERHEIMからOB-X8、さらにSEQUENTIALからトム・オーバーハイム、デイヴ・スミス設計のOB-6というハードウェアも発売されています。ここは悩みどころですが、オリジナルに比べてUB-XAは半額以下。厳密な測定は行っていませんが、音色は筆者の経験、感覚からすると全く問題なく素晴らしいものだし、オリジナルにはない機能も多数搭載されていることを考えると、ブランド名を採るか、価格、性能を採るか?ということになるのかもしれません。

 

松前公高
【Profile】 EXPOやスペースポンチ、S.S.T.BANDで活動し、これまでにアニメ『キルミーベイベー』、NHK『おしりかじり虫』『大科学実験』の作曲も担当。1台のKORG MS-20を使ったソロ・ライブも行う。

 

 

 

BEHRINGER UB-XA

198,000円

BEHRINGER UB-XA

SPECIFICATIONS
▪音源方式:アナログ ▪ボイス数:16(バイティンバー) ▪鍵盤:61(セミウェイテッド) ▪VCF:ローパス、2ポール(12dB/oct)と4ポール(24dB/oct)を切り替え可能 ▪エンベロープ:VCA、VCF ▪LFO:2基 ▪外形寸法:1,045(W)×109(H)×350(D)mm ▪重量:11.7kg

製品情報

BEHRINGER UB-XA

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