令和8年度入学の大学入試で、年内に合格発表が行われる「年内入試」が佳境を迎えている。年内入試による入学者数は過去四半世紀で1・6倍に増加。面接や書類審査を中心に人物重視で評価する総合型選抜(旧AO入試)の伸びが特に大きく、足元(6年度)では学校推薦型選抜(旧推薦入試)と合わせて過半数が「年内合格」した。大学によっては年内入試で募集定員が全て埋まってしまう事態まで起きており、学力を評価する年明けの一般選抜の形骸化が進んでいる。
私立では6割占める
6年度入学者(61万3千人)に占める総合型(9万9千人)の割合は35%、学校推薦型(21万4千人)は16%で、計51%になった。うち私立大のみの入学率は計59%と特に多い。
これに比べ24年前の平成12年度は、入学者(59万2千人)に対し旧AO入試(8千人)の割合は1%、旧推薦入試(18万8千人)は32%で、計33%にとどまっていた。
過去四半世紀を振り返ると、年内入試が年々増加する一方で、一般選抜は志願者が減少している。令和3年度には年内入試(飛び入学や再入学など『その他選抜』を含む)の入学率が5割を超え、一般選抜と多数派が入れ替わっている。
河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員は「学校推薦型はもうかなり前に定着したが、総合型はこの10年ほどで私立大を中心に増えた。大学は(少子化を背景に)早い時期に合格者を確保したい。受験者もなるべく早く合格を決めたい。両者の思惑が合致した結果だ」と指摘する。この傾向は7年度入学者でも続き「年内入試の入学率が6年度より増えたのはほぼ間違いない」という。
学力試験が今年解禁
今年、年内入試で話題を集めたのが学力試験の「解禁」だ。学力不足による入学後の成績不振が問題になったことで、文科省は小論文や面接、実技検査といった評価方法と組み合わせる場合は年内入試でも学力試験の実施を認める方針を6月に打ち出した。それまで総合型や学校推薦型は受験生を多面的に評価するため面接や書類審査が中心で、表向き学力試験を課してはならないルールになっていた。
契機になったのは、東洋大が昨年実施した「学校推薦入試基礎学力テスト型」だ。校長の推薦書と2教科の試験を評価する形式で、従来の学校推薦型に加え勉強を頑張ってきた生徒にもチャンスを提供することで約2万人の受験者を集めたが、「一般選抜の前倒し」だとして高校側からは批判の声が上がった。
ただ実際には、関西の大学では学力試験を伴う年内入試が既に定着していた。今回の問題提起で高校側と大学側が改めて協議した結果、ルールの変更が正式に決まった。今年は東日本を中心に、年内入試で学力試験を実施する大学が徐々に増えそうだ。
一般選抜の中止も
年内入試の入学者が増えるにつれて、一般選抜の存在感は逆に希薄化している。長野市の清泉女学院大学(今年4月の共学化で清泉大学に変更)では、1月に予定していた一般選抜の入試を取りやめ、昨年末で募集終了を発表した。総合型・学校推薦型選抜で募集定員に達したのが理由だが、一度発表した入試を中止するという異例の事態になった。
一般選抜を実施しないのは特異なケースとはいえ、年内入試が入学者の大半を占める大学は増えている。「地方を中心に小規模な私立大で多い。受験生からみれば『学力試験を受けてまで行きたくない大学』のため、年内入試で入学者の枠を埋めざるを得ない事情もある」(近藤氏)。ただ、首都圏や近畿圏の難関私大は一般選抜を重視しており、現状の入学率6割が今後一気に増える状況ではないという。
一方、国立大では年内入試の入学率は依然2割(6年度入学者)にとどまる。東北大が2050年までにすべての入試を総合型に切り替えると発表して話題を呼んだものの、旧帝国大学はまだまだ一般選抜が中心だ。近藤氏は「大学入学共通テストをやめてしまうような大きな方針転換があれば別だが、いまの状況では2割が4割まで増えるかどうかだ」と分析する。今後は国立大で年内入試の動きがどこまで広がるのか注目されそうだ。
















